ニコンというメーカーは、たとえローコストモデルであっても光学設計に手を抜かない。時には、部分的に上位モデルよりも優れた性能を持つ下剋上モデルが誕生してしまうこともある。だから私はニコンが好きなのだ。
高価な蛍石・スーパーED・AR・PFレンズおよび、ナノクリ、アルネオ、ましてやメソアモルファスコーテイングや、大径リング型SWMモーターの採用は、それだけでもコストが高騰しまうのでこの価格帯のレンズには使えない。
だからこそ、限られたコストの中で最大限の効果が得られるように設計された、コストパフォーマンスに非常に優れた超望遠域を含むズームレンズというが、この製品の特長だろう。
具体的にはズーム比を2.5倍に抑え、12群19枚のレンズのうちEDレンズは3枚のみだが、各レンズのパワーを欲張らず、無理に軽量コンパクト化しなかったため、実売価格が133,700円(*2023年2月8日の価格ドットコム最安情報。)と、単レンズのAF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR(*419,999円)の3分の1以下、AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR(*27万1800円)と比べても2分の1以下と、メーカー純正品としては非常にお買い得なレンズだ。
【操作性】
他のレビュアーもご指摘の通り、ズームリングが太め(直径約10cm)かつ、200?〜500?までのズーミングで半周弱回さねばならないので、ズーミングの操作性があまりよくない。
また、レンズ台座込みで2,300gという重量が、手持ちで撮影するのを躊躇させるほど効いてくる。しっかりした三脚か、少なくとも太めで強度の高い一脚は必需品だろう。よって、気軽に持ち歩けるレンズではない事はお分かりいただけると思う。
【表現力】
唯々、感心するばかり。なんでこの価格帯のレンズが、ここまで高解像度で高コントラストの描写をするのか、よい意味で予想を裏切られた。掛け値なしに、AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VRを凌駕する。全域にわたって画質も良好で、中心付近ではPCモニターで400%に拡大しても抜群の解像度。周辺部で僅かなパープルフリンジが認められる程度だった。気を付けるべきは超望遠撮影特有の、炎天下での大気の揺らぎによる解像度やコントラストの低下の方だろう。
単レンズに比べれば、四隅での解像度やコントラスト低下はあるが、80-400も含め他社製超望遠ズームも同様の傾向がみられる。超望遠レンズで正対する平面を撮影することは多くないし、極端に浅い被写界深度により、通常はアウトフォーカス部分となるので、問題となることは少ないだろう。。
せっかくならと、手持ちの純正テレコン TC-14E IIを装着してテストしてみたところ、前述の四角での解像度・コントラストの低下が若干拡大する傾向は有るものの十分実用になる。
ただ、個体差かもしれないが、ワイド側でAFの僅かなズレが発生。D780やD6等、ズームレンズのワイド端・テレ端それぞれ独立してAFの微調整ができるカメラなら、事前に確認・調整しておいた方が良い。(D850は残念ながら、独立しての調整はできないので、一番よく使う焦点距離で合わせることになる。)
TC-14Eシリーズを使用すると合成F値がF8となるので、F8対応のオートフォーカスカメラボディが必要になるが、D6やD850は15点、D780は11点(うち、クロスセンサーは各モデルとも中央1点のみ)が対応しており、フルサイズで700?の世界が実用的に味わえるのは、ちょっと感動的。
なお、TC-14Eシリーズは絞り解放f/2.8の明るい望遠系レンズにまで対応(メーカー適合表参照)しており、画質は?>?>無印の順になるはずだが、f/5.6の、やや暗めのこのレンズではテレコンの画質の良い中心部しか使わないのか、少なくとも?と?の新旧の差がそれほどでないようだ。
【携帯性】
前後レンズキャップを含めると、全長約30cmで、重量約2.3kgもあるのだから、良いわけがない。AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR(1.46?)以外の、400?以上の超望遠レンズ(約3.1kg〜約4.6kg)よりは、ましといったところだ。
【機能性】
IF方式とは言え大きく重いレンズなので、フォーカスに関与するレンズ群の重量もそこそこあると思われるが、小型SWMモーターを使用し、不足する駆動トルクを回転数でおぎなっていると思われ、最短撮影距離2.2m〜∞まで約1秒程度を要する。近接以外の動体撮影時には、フォーカスリミッター(6m〜∞)を積極的に使いたい。
特に優れていつのは、Fマウントでは最高クラスの4.5段相当のVR機能を持ち、かつSPORTモードがあることだ。SPORTモードが有ると無いとでは、動体撮影時のファインダーの見やすさに雲泥の差がある。AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR(SPORTモードなし)ユーザーが、AF-P NIKKOR 70-300mm f/4.5-5.6E ED VRと、このレンズとの2本体制に乗り換える人も多いというのもうなずける。
【総評】
現行ズームニッコールレンズ中、最も長焦点の500?を含む製品でありながら、アマチュアでも手が届く価格帯を実現し、なおかつ高画質で、TC-14Eシリーズ・テレコンを使用することによりフルサイズ700?までもが体感できる素晴らしいレンズ。
しかし、付属のレンズポーチはおまけ程度で、撮影に持参するにはレンズ保護のため、別途キャリングケース等(AF-S・AF-I ED300mmF2.8用のニコン・セミソフトケースCL-L1がジャストフィット。)が必要。
フィルターサイズは95?なので、低反射プロテクター1枚でも1万円以上。(PLなら数万円)さらに、軽量かつ耐荷重の高いカーボン製トラベル三脚(耐荷重は、カメラ+レンズ重量の3倍以上が目安と言われている。)も新たに購入する羽目となり予想以上の出費となった。
超望遠を身近に体感できるのは嬉しいが、明確に撮りたい被写体(野生動物、モータースポーツ、飛行機、鉄道、超圧縮効果を生かした人物、風景等々)が無いと防湿ケースの肥やしになってしまう可能性を秘めている。勢いで買ってしまわないよう、熟慮してからの購入をお勧めする。