ビジネスの現場において「問題がなければない方がいい」というのは、極めて一般的な価値観でしょう。これは否定するものではありません。しかし、わたしは長年のエンジニアリング経験から、むしろ問題をキャッチして明るみに出せたことこそを大いに尊重すべきだと考えています。
こう考えるようになった背景
この考えの背景には、いくつかの重要な経験があります。まず、SIerや開発会社でのプロジェクト型の仕事を通じて、問題の発見が遅れるほどコストが増大することを身をもって学びました。また、ソフトウェアエンジニアとして、問題をオープンに議論し、失敗から学ぶことを重視する文化の中で育ってきました。
さらに大きな影響を受けたのが、Scrumとの出会いです。経験主義に基づく透明性・検査・適応のサイクルを重視し、早期フィードバックの価値を認識するようになりました。これらの経験が、現在の問題に対する姿勢を形作っています。
健全性と問題認識
わたしは決して問題だらけの状況を望んでいるわけではありませんが、問題が無いから健全かというと何か大事なものを見落としていると考えます。
健全性として、問題の早期発見を通じた、石橋を叩いて渡るような慎重なアプローチと考えています。どの程度の問題レベルとして設定するかはさておき、その俎上に上がる材料を発見・検知できること自体が、組織の健全性を示すバロメーターだと考えています。
一般的には問題提起には勇気がいる
ただし、このような考え方はまだまだ一般的ではないことも認識しています。問題を提起することで波風が立つ、対立構造ができる、物事に反対していると捉えられるなど、様々なおそれが想定されて、多大に勇気を振り絞る必要のあるシーンも多いのでしょう。
そこで、わたしが目指しているのは「問題対わたしたち」というスタンスです。問題を提起してくれたことへの感謝を示し、それをチーム全体で共有し、解決に向けて協力する。そのような文化を、日々の小さな工夫を積み重ねることで築いていきたいと考えています。
問題の早期発見は、リスク回避のためだけでなく、組織の成長機会を見出すためにも重要です。勇気を出して問題を提起できる環境づくりに、これからも取り組んでいきたいと思います。
プレモーテムの利用
そして、具体的な場としてプレモーテムの用意することもひとつ考えているところです。
- "問題がないことを重視する文化"の慣れが強い場合でも、予防的アプローチとして受け入れられやすそう
- まだ起きていない問題について議論するため、現状への批判と受け取られにくそう
- 「将来起こりうること」として議論できるため、現在の関係者の責任問題に発展しにくそう