以前、中華イヤホンブランドKZの「ZSシリーズを俯瞰する」という記事を書いたが、今回は同社のASシリーズを扱ってみたい。
ZSシリーズは膨大なバリエーションがありドライバの組合せも様々だが、基本ダイナミックドライバとBAドライバとのハイブリッドだった。(一部2DDや1DDの機種もあったが…)1DD+1BA(ZST型)が基本で、BAの数が増えていき1DD+4BA(ZS10型)や1DD+5BA(ZSX型)へ進化した。
一方のASシリーズだが、こちらはマルチドライバ(多ドラ)だが、ハイブリッドではなく使用するドライバはBAのみである。BAを複数台搭載し、3wayや4wayのように鳴らす仕組みである。
ZSシリーズなどのハイブリッド型は自然な低音域が期待できる(口径の大きな)ダイレクトドライバが中低音域を、高精細で高音再生が得意なBAが高音域を担当してより高音質を狙うものである。(「餅は餅屋」方式)
一方のBA型マルチは性能が高く小型のBAを複数搭載することにより、どの音域も高精細な再生を狙うものである。(「大は小を兼ねる」方式)
モニタイヤホンのベストセラーSHUREのSEシリーズは最廉価のSE215(ダイレクトドライバ1基)以外はこの方式である。(ただ、SE315はマイクロドライバ=BA1基のみ、SE425以上がマルチドライバ)
否応なく期待が高まるが、価格が10倍近く違うので同等というわけにはいかないだろう。
バリエーションについてはBAの数の違いということになる。
2018年発売のAS10はBAを片側5基搭載(両耳で「10」である)
AS06(2019) 片側3基(名機と呼ばれている)
AS12(2019) 片側6基
AS16(2019) 片側8基
ここまでが第一世代
この後名付けルールが変わり
ASF(2020)片側5基(「F」はFiveか?)
ASX(2020)片側10基(「X」はテンか?)
AST(2021)片側12基(「T」はTwelveのTか?)
その後しばらく空いてリブートされる
気合の一本でKZの本気を見せたと言われている。
その後、AS16ProX(2024)がリリースされた。同時にASFとASTの後継として
AS10Pro(2024)AS24Pro(2024)が発売された。
実はASシリーズはここまでである。
2025年以降AMシリーズに移行した。
KZといえどもBAをマルチで搭載するとZSシリーズのような価格では売れないらしい。5,000円オーバーの価格帯、AS24Proになると10,000円を超える。(ASTは15,000円を超えていた)価格帯やドライバ数ではZAシリーズと競合する。一般的には同じ価格ならハイブリッドの方が良いのではと思うが、ASシリーズは連綿としてリリースされていた。
自分が持っているのはASF(2020)とAS16Pro(2022)の二機種だが、この2機種の間には大きな差がある。
単純にBAの数以上の違いがある。
2020年と2022年との間にはKZの置かれた立場に違いがある。中華イヤホンのイメージ(ドンシャリ)をつくり、トップに君臨していたKZだったが、2020年頃からバランスの取れた良音中華イヤホンが出始め、2022年時点では他ブランドの猛追を受けて揺らいでいた。ZST-XとZSN ProXの成功で慢心していた(かどうかはわからないが)KZの凋落は絶頂を極めたあたりから始まっていたのである。
ASFは2020年、KZがZSシリーズの完成形というべきZSN ProXとZST Xをリリースした年である。ある意味KZの絶頂期であったわけだが、他社の台頭によりその後ヒットに恵まれなくなる。
その「終わりの始まり」の年にリリースされたモデルであった。AS10の後継モデルとして勢いで作った感が無くはない。高精細のはずが、音が籠った感じで聞こえる。得意なはずの高域も今一つである。
一方2022年のAS16Proは他社の良音イヤホンを意識して、ドンシャリだけではないバランスの取れた音を目指した感がある。ただ、ASFよりは良いがZASより良いかと聞かれれば少々疑問である。
左がHBB-PR2 右がAS16Prpあまりメリットは感じられないがBAならではの音を好む人が一定数いるのは間違いのないところ。
また、名前が変わったAMシリーズがどうなったのかも興味があるところである。


