PHILIPS SHE9710(ジャンク品)を買った
中華イヤホンが低価格帯を席巻する前、低価格、高音質で名をはせたモデルである。
元々はこの前の機種SHE9700(2009)がベストセラーモデルだった。実売価格2000円程度で良音だったため話題になった。「マツコの知らない世界」で取り上がられ一般的にも広く知られた機種だった。
このSHE9710(2013)はその後継モデルで付属品等に違いがあるかもしれないがやや価格が上がり(実売2980円程度)コスパは下がった。
PHILIPSはオランダのグローバル家電メーカ―だが日本でのオーディオ分野の展開はしていなかった。(髭剃りや電動歯ブラシは売っていた)Marantzとの関係のゆえか、オーディオ機器はその後も入ってこなかったが、このSHE9700の前あたりから、イヤホン、ヘッドホンの販売は強化される。一時期自分も使っていたSHP8900という開放型のヘッドホンが、適当なコスパで音は良かった。(“ゴールデンイヤー”がチューニングしている)ただ、どういう具合か途中から高級路線に転換して高価なモデル(X1とか)しか売らなくなり、そのうち見なくなった…
そもそも人々の関心がイヤホン、ヘッドホンに向き始めたのはいつことだろう
70年代後半以降80年代、90年代はポータブルオーディオの走り=ウォークマン(カセット)が発売され、音を持ち出して聞くスタイルが定着した時代である。この時代のイヤホンは本体付属のものを使うのが当たり前でつけ替えるという発想は無かったように思う。ヘッドホンは存在したがプラグの太さが違いポータブル機に挿すことはできなかった。イヤホンを買い替えるのはよほどの酔狂か壊れた時に限られた。ヘッドホンの用途は家庭内で深夜等に大音量で聞くためだった。(スピーカーの代替品)
2000年代に入り本格的なポータブル機iPodの出現(数千曲を持ち出せるようになった)とその後のスマートホンの普及が音楽の聴き方のスタイルを根本的に変えていく。
ストレージがHDDのiPod(後にiPod touchと区別するためにClassicと呼ばれる)がリリースされていた2001年から2009年の間、付属のイヤホンがあまり高音質ではないという理由(もしくはインイヤーのイヤホンが大きすぎるという理由で)買い換える人が出始める。ヘッドホンでも3.5㎜のプラグが一般化し選択肢が増える。自分の感覚では2010年前後から高級イヤホン(ヘッドホン)というのが出始め、50,000円を超える機種も登場した(初期のゼンハイザーやAKG)2010年前後からヘッドホン(イヤホン)のMOOK本が現れ始める。大型量販店にイヤホン試聴コーナーができ始めたのもこの頃なのではないか。
余談だがアニメ「けいおん」(2009)の登場人物が使用していたヘッドホンがAKGのK-701で「澪ホン」と呼ばれたが、これも当時50,000円超の価格だった。
イヤホン(ヘッドホン)に資本を集中することによって、相対的に家庭でのオーディオ機器というものが減っていき特にエントリークラスの消滅という現在の状況に繋がっていくのだが、それはまた別の話である。
スマホの普及とTWSの出現(2010年代後半)
日本において圧倒的なシェアを持っていたiPhoneがイヤホンジャックを廃したのはiPhone7(2016)だった。以降、一気に無線イヤホンにシフトしていく。特に日本においてはその傾向が強い。もう10年近くその状況なので有線のイヤホンは(日本では)絶滅しかかっているのかも知れない。
SHE97系もすっかり無くなって…と思ったら、無線イヤホンとして復活していた。SHE9700BT(2021)というのがその名前である。実機を見たことが無いが、かなり忠実に再現しているようだ。BTユニットをケーブル側につけるTWSではない無線タイプである。(現在の基準からするとかなり細いSHE9700の筐体にはBTユニット、アンプ、バッテリーを収納するのは無理がある。2025年3月現在2800円程度の価格で買えるようだ)
前置きが長くなったが…SHE9710を聴いた
実は同じ機種(SHE9711=白色)を使っていた。イヤチップが取れて無くなったため使わなくなったが、当時の印象は悪くなかったように記憶しているが…いかがなものだろう
良いところ
今回使ってみてまず、装着感の良さに驚いた。本家SHUREはじめ、ほとんどの中華イヤホンでシュア掛けがデフォルトになりつつある現在、ケーブルを耳に掛けないタイプのイヤホンは少数派である。
カナル型で耳穴に深く差すタイプであるが、本体が微妙に曲げられており、耳穴にフィットする。(Fainal Eシリーズは同じタイプだがイヤチップだけで支える形でやや不安定)イヤチップの形状、柔らかさも良好で違和感なく奥まで指すことができる。装着が上手くできると低域の質感量感ともに増す。
定位感がとても良い
ボーカルが前方の近いところに定位し、はっきりと聞こえる。一部の中華イヤホンのように隣の部屋で歌っているような感じではない。
解像感が高め
伴奏の楽器も解像感高めで細かい音も良く再生している。高音域もシャリシャリせずに、はっきり聞こえる。(しかもボーカルを邪魔しない)
低域も良く伸びる
中華イヤホンのドンシャリを聴いた後では、量的には控えめだが、十分に低域を再生している。当時の日本メーカーのイヤホンでは低域は重視されていなかったような気がする。
総じてバランスが良く、良イヤホンである。初代の2000円以下の価格なら間違いなくAクラスのイヤホンだろう。(3000円なら中華エントリーの上位との勝負になる)
ダメなところ
ケーブルのタッチノイズ
これについては現在のイヤホンは相当改善されているため、だいぶ気になる。ケーブルにゴムのようなコーティングがあり、ケーブル同士が触れただけでも盛大にノイズが発生する。
全体的にプラスティッキーで高級感に乏しい。軽くて良いという考え方もあるが…
ボリュームがやや取りにくい
インピーダンスは16Ω、音圧感度は103dB/mWということだがiPodではややボリュームを上げ気味にした方が具合がよい。イヤホンの個性というべき点でダメということではない。
まあケーブルノイズ以外は欠点らしい欠点が無いというのがこの機種である。
現在普通に存在したらこの機種を選ぶだろうか?
欠点の少ない良イヤホンであることは間違いないし、価格次第では買っても良い(自分は330円で買った)とは思うが、メインで使うとなるとちょっと考える。
装着感が良いので「音の良い寝イヤホン」あたりが落としどころかな、と思っている。





