AORとシティポップ

若年層のシティポップの再発見は2018年頃はじまり、2020年の「真夜中のドア〜Stay With Me」のリバイバルヒットで決定的になった。そしてそれは現在まで続いている。
その時代(1980年代)を知るものとしては当時好きだった音楽がリバイバルする状況は悪くはない。ただ、林哲司の音楽と山下達郎や大瀧詠一の音楽が同時代というだけでいっしょくたに語られるのはどうかとも思う。まあ、良いものは良いのでラベリングなどどうでもよいのだが…

この80年代日本のシティポップの萌芽となったのが70年代後半から起こったAORブームではないかと思っている。アダルト・オリエンテッド・ロック(Adult-Oriented Rock)の略で大人向けのロックという意味合いであった。(Wikipediaによるとアルバム・オリエンテッド・ロックの略でもあると記載があったが、こちらはピンとこない)

一般的にAOR系のアーティストとしてまず浮かぶのはボズ・スキャッグス(「We are all alone」)や彼に楽曲提供していたボビー・コールドウェル(「風のシルエット」)、ピーター・セテラがボーカルをやっていた頃のシカゴ(「Love Me Tomorrow」)あたりであろうか。
しかし、自分の中ではルパート・ホルムズ(「Him」)である。そう「Him」(1980)なのである…


ルパート・ホルムズのLP「Partners In Crime」(1979)を買った

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『Partners In Crime』(1979)はルパート・ホルムズの5枚目のアルバムである。
彼自身の最大のヒット曲となった「ESCAPE」と「Him」が収録されている。
ボズ・スキャッグスの「シルク・ディグリーズ」や「ミドル・マン」のような名盤感は感じられないが、POPな良いアルバムである。80年代直前のよい音が鳴っている。
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A-1が「ESCAPE」で「ピニャコラーダ・ソング」という副題がついている。
長年のパートナーに飽きてアヴァンチュールを楽しみたい男が新聞の投書欄で見つけた「ピニャコラーダが好きで、雨が平気な人、…逃避行(エスケイプ)を楽しみませんか」という募集に応募したら、投書したのはパートナーだった。というオチのつく話で、このアルバムはこのような男女の風景が多めである。
(ちなみにピニャコラーダはカクテルの名前だそう。)

A-2はアルバムタイトルソング「Partners In Crime」。これは直訳すると犯罪のパートナー=共犯者という意味だが、慣用句としてそれほど(秘密を共有するほど)密接な関係の人という意味らしい。1曲目同様男女の関係をうたった歌である。

A-3の曲「NEARSIGHTED」はとても美しいバラード曲だが、内容は「近視賛歌」である。レコードジャケットのメガネを見つめるルパート・ホルムズというシュールな図柄はこの曲につながっている。(独特のユーモア感覚である)

A-4の「LUNCH HOUR」はOLがランチタイムに時間を惜しんで恋人と逢瀬を楽しむ話で、何ということはないのだが、サビの部分の”LUNCH HOUR”を連呼する部分が広末涼子の「大スキ!」(岡本真夜作詞作曲)のサビにそっくりである。

もちろんクライマックスはB面の1曲目「Him」である。アルバムリリースが79年なのにこの曲は(1980)とクレジットされているので80年にシングルカットされたということなのであろう。
彼の最大のヒット曲は上記のように「ESCAPE」らしいが、自分的には知らない曲だった。というよりも自分はこの「Him」しか知らなかったのだ。
ただ自分にとっては時代を代表する曲でAORと言ったらこの曲なのである。