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Paul McCartney All the bestのLPを買った
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「Paul McCartney All the best」はUK盤とUS盤で違いがある。このネタは以前書いたような気もしていたが書いていないようなので、今回LP(UK盤)を購入した機会に書いてみる。

このアルバムはポール・マッカートニーのソロ(ウィングス時代を含む)の曲を集めたコンピレーションで1987年に発売された。
ポールは天才なのだが、ムラがありアルバムすべてが良いわけではない。(ビートルズ時代にはそれが無い。ジョンの存在のおかげ?)ヒット曲ばかり集めたこの『All the Best』のようなコンピレーションで聴くのもよいかもしれない。
1987年当時はCDへの移行が進み主流はCDになりつつある頃だがLPも併売されていた。
今回購入したものは当時のもののようだが、LPが超薄い。現在発売されるのは重量盤が普通になりつつあるので違和感がありありである。2枚組なのに薄いので本当に2枚入っているのか心配になったくらいである。

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ペラペラのLP、材質もビニールというよりSP版のそれ(シェラック)に近い質感。
グルーブガードと呼ばれるLPの端の膨らみ(針がレコード外に落ちないようにする+レコードを重ねた時に溝同士が接触しないようにする)が無く、まっ平である。これをフラット盤と呼ぶらしいが、このこともSP盤っぽく見せている要因かもしれない。ちなみに日本ではJIS規格で規定されているようなのでほとんどのLPにグルーブガードがあると思われる。

それはどうあれ、このアルバム、注意が必要なのだ。

特に問題になるのはCDだが、UK盤とUS盤で選曲と曲順に違いがあるのだ。

選曲の違い

UKLP2枚組(20曲)とUKCDを比較すると3曲削られている。(上記の網掛曲)その3曲のうち2曲はUSCD17曲)には採用されている。USCDでのみ収録されている曲は2曲あるので、CDUK盤とUS盤の違う曲は4曲ということになる。自分で書いていてもわからなくなってきた。整理すると…

 

UKCDにのみ収録

"Pipes of Peace"(全英1位、全米23位)

"Once Upon A Long Ago"(全英10位米国未発売)

"We All Stand Together"(全英3位英国のみリリース)

"Mull of Kintyre"(全英1位、全米33位)

 

USCDにのみ収録

"Junior's Farm"(全米3位、全英16位)

"Uncle Albert/Admiral Halsey"(全米1位、英国未発売)

"Goodnight Tonight"(全米5位、全英5位)

"With A Little Luck"(全米1位、全英5位)

 

UKLPに未収録

"Junior's Farm"

"Uncle Albert/Admiral Halsey"


この4曲が問題である。実はUK盤の4曲はアルバム発売時の新曲を含む英国でシングルになった曲である。残念ながら日本ではほとんど聞きなじみのない曲ばかりである。一方のUS盤の方はアメリカチャートに上った曲で日本でもなじみのある曲である。
特に、"Goodnight Tonight"(全米5位)は個人的に好きな曲で、この曲が収録されていなかったらがっかりするだろう。ロックテイストの"Junior's Farm"(全米3位)だって是非聞きたい曲である。"Uncle Albert/Admiral Halsey"は1971年ソロとして発表したアルバム『Ram』からシングルカット(北米・オセアニアのみ)した曲で全米1位。"With A Little Luck"も1978年に全米1位を獲得した曲である
米国は実情に合わせてUS盤を作ったと思われる。(それでも売れ行きは芳しくなかったBy Wikipedia英国ではバカ売れした)

つまり、日本で聴くならUS盤の方が良いと思われる。が、日本の東芝EMIから発売されたCDはUK盤だったのだ。(オリジナル至上主義?それとも契約の関係=大人の事情?)
自分が買ったのは、たまたま安かった輸入盤(US盤)で「いいなーポール」と思っていたのだが、その後、日本盤CDを聞いたとき全然違う構成に慄然とした。
(US盤の最後の曲は"My Love"である。これ以上の終わり方があるものかっっ!)

今回買ったLP盤にはUK盤CDで削除された歌が収録されており(しかもフルバージョン)、US盤との違いは2曲だけである。("Junior's Farm"と"Uncle Albert/Admiral Halsey")
現実的にLP盤を手に入れるのは難しいので聴くならCDとなる。その際にUS盤を探す方が幸せになれますよ。というお話でした。(人によるかもしれないが)
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LPのダブルジャケットの内側 写真が大きくて素敵!

CDの需要はがた落ちしているので、今は違うと思うが10年ほど前にはUS盤にプレミアがついて高値で取引されていた。少なくとも前述の2曲("Junior's Farm"と"Uncle Albert/Admiral Halsey")はシングル曲でオリジナルアルバム未収録である。All the bestはそれなりに貴重だったのである。

簡単な見分け方は最後の曲が"My Love"か、どうかだ。中古CD屋かネットで探してみよう。
日本盤は前述の通りUK盤と同じなので日本語の記載があるものはまず除外である。海外盤でも国名表記のない商品はやめた方がよい。(見た目で判別するのは難しい)

現在、キリンの少しお高め缶ビール「スプリングヴァレー シルクエール」のCMにビリー・ジョエルの「ピアノマン」が採用されており、お茶の間に流れている。
しみじみ良い曲だと思うのだが、ふとビリー・ジョエルのキャリアの中でどのくらいの位置を占めているのだろうか?と思った。
曲自体はビリー・ジョエルの早い時期のヒット曲でビリー・ジョエルの存在を世間に知らしめた曲である。ただ、ブレークしたのはそれより後の「素顔のままで」(全米3位・アルバム『ストレンジャー』収録)とその次のアルバム『ニューヨーク52番街』(グラミー賞受賞)であった。

Googleで「ビリージョエル名曲」と検索すると出てくるのがこの5曲。根拠も出典もわからないが、日本人が選ぶとそんな感じ、というランキングだ。(アメリカだとストレンジャーが入ることはないだろうし、オネスティが1位ということもないだろう)

第1位 オネスティ(Honesty)
第2位 素顔のままで(Just The Way You Are)
第3位 ストレンジャー(Stranger)
第4位 ピアノ・マン(Piano Man)
第5位 アップタウン・ガール(Uptown Girl)

これで良いといえば良いのであるが、自分的には少し違う気もする。(CMの使用曲ばかりだな)
自分のベストファイブを作ろうとしてみたのだが、5曲に絞ることができない。ベスト10ということでお許しを…(本当はベスト15にしたいところだが泣く泣く11位以降を消した)

私家版ビリージョエルベスト10


1.Say Goodbye to Hollywood.
アルバム『ソングズ・イン・ジ・アティック』(1981)に収められていたライブ版。このライブアルバムリリース時にシングルカットされてスマッシュヒットした。
オリジナルは『ニューヨーク物語』に収録されている。
生まれ故郷のニューヨークを捨ててショービズの中心ハリウッドで活動していたビリーが、結局鳴かず飛ばずで、ハリウッドを去ることになった。その時のことをうたった曲。
オリジナルは淡々と歌っている感じだが、ライブ版は盛り上がる。自分の中では一番好きな曲である。

2. My Life
ビリー・ジョエルらしい曲というとこの曲か「ムーヴィン・アウト」あたりがまず思い浮かぶ。中でもこの曲はビリー・ジョエルのピアノマンぶりがいかんなく発揮されている。アルバム『ストレンジャー』のヒットで上り調子の彼が放った『ニューヨーク52番街』最初のシングルである(全米3位)。この曲の勢いそのままにアルバム『ニューヨーク52番街』は全米1位を獲得し、グラミーの最優秀アルバム賞を獲得した。

3. Just the Way You Are
4. Stranger
3.は日本語タイトル「素顔のままで」。アルバム『ストレンジャー』の収録曲でシングルは全米3位の大ヒット。ジャズっぽい曲で“らしさ”は少ないがメロディ、アレンジともに最高である。(AORのはしり?)
日本ではアルバムタイトル曲の「ストレンジャー」がシングルカットされ大ヒット。一気に知名度が上がった。(自分もリアルタイムで聴いていた)ちなみに米国ではシングルになっていないのでベスト盤でも落とされている。が、日本盤には必ず入っている(日本盤のみのボーナストラック)日本ではいまだに知名度ナンバーワンなのではないか?
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5. Piano Man
まだ売れていなかった頃のアルバム『ピアノマン』のタイトル曲。スタンダートとも言える名曲。イントロのハーモニカから盛り上がっていく様もビリー・ジョエルの真骨頂。一位でもいいのでは?五位とは…
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6. An Innocent Man
アルバム『イノセントマン』のタイトル曲。1980年の『グラスハウス』まで飛ぶ鳥を落とす勢いだったビリー・ジョエルが内省的なアルバム『ナイロンカーテン』(1982)でやや失速し(それでも全米7位)、その次のアルバム『イノセントマン』(1983)で完全復活をはたす。(それでも全米4位)なぜこのアルバムがセールスの割に成功作かといえば、10曲中6曲がシングルカットされ、すべてが全米トップ30入りするという快挙、さらにシングル曲ではじめて全米1位(Tell Her About It「彼女にアタック」)も獲得した。日本ではそれ以外にThis Night「今宵はフォーエバー」がシングルカットされCMソングにも起用されていた。綺羅星のごとくのシングルの中からタイトル曲を選んだのは、単純に良い曲だからである。(KANの「TOKYO MAN」の元となった?)

7.Honesty
日本人が好きそうな曲。ロマンティックな曲だが甘いラブソングではない。
相当に切ない曲である。語り手が聞き手であるあなたにHonest(正直、誠実)を希求する歌である。

サビの部分の歌詞
Honesty is such a lonely word  誠実 はなんて虚しい言葉だろう
Everyone is so untrue      人々は皆 不誠実だ

Honesty is hardly ever heard   誠実 耳にすることもまれな言葉
And mostly what I need from you  そして、あなたにはそうあってほしい…

ある意味説教臭い曲である。日本では歌詞の中身がわからないので、曲調だけで好まれているのかもしれない。易しい英語とゆっくりしたテンポでカラオケでも歌いやすい。そのあたりも人気の秘密か?(想像)

8.You May Be Right
大ヒットアルバム『グラスハウス』の劈頭を飾るロックンロール。ガラスが割れる音から始まるのだが、ビリージョエルが大きなガラスの家(ビリーが当時住んでいた家らしい)に向かって何かを投げつけるようなレコードジャケットと相まってスピード感あふれる感じである。初期のビートルズっぽいバンドサウンドもとても良い。

9.James
知る人ぞ知る(=知らない人は全く知らない)アルバム『ニューヨーク物語』収録の曲。エレピの弾き語りで切ないタッチの名曲。といってもラブソングではない。バンドを捨てて進学した友人に“Do you like your life?”と語りかける。
コンピレーションにも取り上げられないので聴く機会は少ないかもしれないが、名曲。
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10.Movin Out
ビリー・ジョエルしか書けない曲。アルバム『ストレンジャー』冒頭を飾る曲である。以前の記事でも書いたがこのアルバム冒頭から「ストレンジャー」「素顔のままで」までの3曲はこのアルバムのハイライトである。
今回知ったがアルバム『ニューヨーク52番街』は『ローリング・ストーン誌が選ぶオールタイム・ベストアルバム500』で354位。『ストレンジャー』は67位だそうだ。リリース当時全米ナンバーワン(年間も)を撮り。グラミー賞も受賞したが、現在の評価は逆転しているということか。

もうすぐTOP10

10位までを見ると70年代からせいぜい80年代前半までしか選んでいない。15位まで選出したと書いたが、その中には新しめの曲も入っていたのだが、ここで書くのは違う気がするので書かない。
ただ、1曲だけどうしても言及したい曲がある。
その曲は「マイアミ2017」Miami 2017 (I've Seen the Lights Go Out on Broadway)である。
1976年のアルバム『ニューヨーク物語』に収録され、ライブ版が『ソングズ・イン・ジ・アティック』に収録されている曲である。
2017年のマイアミ(ニューヨーカーは引退するとマイアミで余生を送るらしい)で過去を懐古する内容である。語られるのはニューヨークの崩壊である。副題に書かれているのは「自分はブロードウェイの灯が消えるのを見た」である。どういうこと?と思うが、1976年からは40年後の未来=2017年に過去を懐古するという、まさにSFソングなのである。
70年代後半ニューヨーク市は財政破綻の際(きわ)におり、十分に起こりえた未来ということのようだ。ご存じの通りニューヨーク市は破綻せずに金融の中心であり続けたのだが、2001年9月11日同時多発テロにより貿易センタービル2棟が崩壊。ある意味予言の歌のようになってしまった…

エレキピアノの美しいイントロから、テンポアップしロックな感じで進むが最後はバラードになる。とてもドラマティックな名曲である。ビリー・ジョエルがライブのオープニングに使い続けていたという逸話がある。『ソングズ・イン・ジ・アティック』の1曲目もこの曲だった。

稀代の名曲と思った「ピアノマン」が並べてみたら5位だった。という衝撃…
名曲が多すぎて…

DENONのスピーカーには良い思い出がない。
以前SC-T33というトールボーイタイプの3Way(4スピーカー)を使っていたが、今一つ詰まったような音で気に入らなかった。エントリーラインで多くを求めるものではないとわかっていてもONKYOのほぼ同じクラスの2Wayとどちらを残すか考えた時、ONKYOの方を残して売り払った。エンクロージャーの質感も所詮MDFに印刷化粧フイルム貼り付けのONKYOに負けている感じがする。(ONKYOが格段に良かったわけでもない)
今回久々にDENONのスピーカーSC-MX33という機種を買ってみた。ジャンク扱いで2,200円だった。

1990年代だったかDENONはヨーロッパ指向のスピーカーを作っていて独自の道を歩んでいた。好きな人は好きといった感じで一般化はしなかった、と思う。(Pioneerも英国人がチューニングしたUKシリーズを展開していたが永続きしなかった、と思う)
独自といえばP.P.D.Dというドライブ方式を採用していた。同じスピーカーユニットを二つ使って位相を打ち消しあい、より純度の高い低域再生を目指すというものだった。
SC-E717という機種のカットモデルの写真を見ると同じ口径のスピーカーユニットが逆向きに(背中合わせで=エンクロージャーの後ろ側に向かって)とりつけられている。どちらも入電していて音が鳴っている状態。(パッシブラジエーターではない)外観は普通のブックシェルフ型の2Wayだが3スピーカーという代物で重かったのではないだろうか。

2000年代以降DENONはAV分野に力をいれ発売するスピーカーもセットで売るようなシリーズスピーカーが多くなった。評判の良かったAVアンプと一緒に買ってもらおうという作戦である。
勢い5本や7本セットで売るため1本あたりにコストをかけられなくなり、鳴っているだけのスピーカーになっていった。P.P.D.Dのような凝った仕組みを使わなくなっていった。
(スミマセン、独断と偏見です)

ぱっと見でわかるDENONスピーカーの世代

DENONのスピーカーはウーハーユニットが時代によって異なっている。
90年代前半までは普通の黒色センターキャップ有のコーンスピーカーだった。
90年代後半からセンターキャップが無い凹型のウーハーとなる。
2000年代に入りB&Wのケブラーコーンに近いイメージの黄色のグラスファイバーコーンを使うようになる。
2006年頃から再びセンターキャップがない凹型のウーハーとなるが90年代後半の物とは違うものである。


SC-MX33とはなんなのか?

単独で発売されていたかどうかは不明。(当然価格も不明)2007年に発売されたミニコンポ用のスピーカーである。

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仕様は次のようなものである。(メーカーの取説による)


帯域や効率など性能に関する記載はなかった

14㎝の凹型コーン(センターキャップなし)と2.5㎝のソフトドームのツィーターユニットを装備した普通のブックシェルフ型スピーカーである。
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バスレフポートは背面の上部中央にある。スピーカーターミナルはバナナプラグ対応のやや大型の透明ネジの物を使用している。

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持った感じ軽い。エンクロージャーの剛性は期待薄である。
ミニコンポ用のスピーカーである。最初から分かっていることだが音の面で過度の期待は禁物であろう。

兄弟モデル?SC-MG33

2005年頃発売されていたミニコンポ用のスピーカー。
エンクロージャーが全く同じ大きさで材質板の厚みも(多分)同じ、ユニット込の重量も同じである。違う点はバスレフポートが前にある点と、ウーハーの材質形状、それとスピーカーの接続ターミナルの形状である。
いかにもミニコンポ付属という感じのバネ式のスピーカーターミナルを使用している。
ウーハーはセンターキャップ有のグラスファイバー製だが色は黒色である。(B&Wもどきを脱しつつあった?)

SC-MX33の音はどうか

音の面では特徴がなく、普通である。低域に伸びがあるわけでも高域が特別キレイなわけでもない。ミニコンポのスピーカーとしては過不足ない性能といえるのかもしれない。
単品コンポとしては不満が残るが…

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久々の登場LXA-OT3
ネットの情報によると2Wayだがウーハーはネットワークを通らない、つまりフルレンジで鳴っていて、カバーできない高音域のみツィーターという設計になっている。90年代のDIATONEの低価格スピーカーと同じ設計である。当時のDIATONEの広告には「良質なウーハーユニットの特性をいかして」とか書いてあり、ネットワークを介さないのも利点のように書かれていた。(すべてコストダウンのためということは今ならわかる)まあ、それで音が良いなら文句はないのだが…
改造記事を読むと、中がスカスカなのがよくわかる。吸音材もほとんどなく「そりゃ、軽いわ!」という造りである。

購入価格が2,200円なので文句は言えないが、それ以上の価値があるかといえば微妙であろう。
ただ、ロック系(クィーン)を聞いたときに「おっ!」と思うほどスピード感に追随していた。聞く音楽を選ぶのかもしれない。満足度は50%くらい。既存の物をリプレイスするほどのものではない。(個人の感想です)

日本を代表するカメラメーカーNikonのフイルム1眼レフカメラEM(1980年)を買った。

フイルムカメラを今、買うこと自体、微妙なのだが、買ってしまったのだ。
しかもEMを…

そもそもどうしてこうなったのか?

発端はハードオフ

最寄りのハードオフでは新しく入ったジャンク商品を店頭の入り口付近の棚に並べている。知っている人(常連)はそこだけチェックする人もいるくらいだが、そこにフイルムカメラのボディがいくつか並んでいた。
一番最初に目を惹いたのはCanon EOS-1n(5,500円)だった。Canonの数字一桁“1”は旗艦(フラッグシップ)と呼ぶべきプロ用カメラで、1nはある意味Canon のフイルムカメラの完成形とも呼べる機種だ。(最後のフイルムカメラのフラッグシップはEOS-1vである。2018年まで販売されていた)
自分もEOS-1を所有していたが1nとは別物でシャッター速度や測距技術に格段の開きがあった。(重さや、堅牢さは同等だったが…)
手に取った感じキレイで良さげである。ただ、電子シャッターモデルなので電源が無いとテストできない。5,500円の価格も動作すればこそ、である。今更感があるなと思って棚に戻すと、横にNikonのFM(初代)があった。(7,700円=絶妙な値付け)
FMシリーズはNikon Fの傍流でMはメカニカルの意味。完全な機械式シャッターの機構を持ったカメラで、電池がなくとも作動する。きれいにシャッターは切れていた。
FMシリーズは高校写真部が使う定番カメラだった。これで写真を撮ると写真が上手くなるといわれていた。

写真が上手くなるとは?(少し脱線します)

FMは完全なマニュアルカメラである。基本的には露出(シャッタースピードと絞値)を自分で設定するカメラである。AE機能がないので露出計を見ながら(もしくは勘で)調整する必要がある。この辺りが写真を「考えて撮る」=写真が上手くなるということにつながるのだろう。

現代のシャッターを切るだけで相当良い写真が撮れるデジカメ時代には露出という概念自体意味不明かもしれないが、本来フイルム(デジカメの場合受光素子=CCDなど)にあたる光の量を適切にしないとフィルムが露光した時、仕上がりの良い写真にならない。ラティチュードが広めのネガフィルムなら焼き付けでごまかしたりできるが、撮影時がすべてのポジフイルムではごまかしがきかない。(ちなみにポジフイルムは別名スライドフイルムで後ろから光をあてて白いバックに映すことでカラーの画像を表示するもの。映画のフイルムのイメージするとわかりやすいか)
ついでに言うとなぜシャッタースピードと絞値を調整するのかについてだが、写真は撮影者の仕上りのイメージを基に、絞値かシャッタースピードを先に決める。絞値を絞ると光の量が減るのでより多くの時間フイルムに光を当てる必要がある(シャッタースピードが遅くなる)
絞値を絞る意味は光の通過する点が小さい方がピントの合う範囲が広め(これを被写界深度が広いと呼ぶ)になる。全体的にシャープな仕上りになる。反対に絞を開くとピントの合う範囲が狭くなり、ピントの合っている部分とそうでない部分の差がでてピントが合っている部分以外はぼやけた感じになる。F値が小さい明るいレンズほど顕著で、より写真っぽい感じに仕上がりやすい。あまり慣れていない人に見せると「上手だね」といわれるのは開放付近で撮った写真が多い。人間の目で見ると関心の高いところを中心に周囲も同じようにフォーカスしているので、人間の目では見ることのできない対象物にだけピントが合っている写真は上手く見えるらしい。写真を撮る立場からすると、明るいレンズがあれば誰でも撮れる写真なのになあ、と思う。(ただ、明るいレンズは総じて大口径で値段が高い)
シャッタースピードを調整する意味は、例えば早く動く新幹線やF1のレーシングカーを撮影することを考えてみよう。フイルムカメラ時代の最高速度8000分の1秒でシャッターを切るとシャッターを開いている(露光している)時間が1秒の8000分の1なので大概のものは止まって写るだろう。風景写真とかで使われる90分のⅠ程度では被写体は動いて(ブレて)写るであろう。よく水の流れを表現するためにあえてスローシャッターを使う(当然三脚に固定)ことがある。この場合数分の1から下手すれば数秒の露光をするかもしれない。
星空の軌跡を写したような写真はB(バルブ)をつかって数分から数時間露光する場合もあるだろう。(もちろん星空だからできる。周りが明るいと無理である)
ただし、前にも書いたが露出はシャッタースピードと絞値の両方で決定するものである。
シャッタースピードを極限まで早くするためには十分な明るさがあるところで、明るいレンズ使用し絞値を開放近くで使用する必要がある。(露光が一瞬のため多くの光を取り入れるための明るさが必要)よくスポーツカメラマンが鏡胴の白い大きなレンズをつけたカメラで撮影を行っているのを見かけるが(リッチな撮り鉄も持っている)あれはプロ用の大口径望遠レンズで1本数百万円のしろものである。そのような機材で撮影されるのがスポーツの現場なのである。

自動露出はAEとよばれ70年代後半から一眼レフにも搭載されるようになった。
Canonは伝統的にシャッター速度優先で撮影者はシャッタースピードを設定しAEで撮影すると絞値が状況に合わせて自動で設定される。(絞値が可変)
それ以外のメーカーでは絞優先AEが主流。レンズの絞値を設定するとシャッタースピードが自動で変化する。
80年代半ば以降、小型の電算処理装置が開発されるとプログラムAE(絞値とシャッタースピードの両方を動かし最適な露出を得る)が搭載されるようになっていった。(Canon A-1やNikon FA)
現在はその発展型の撮影シーンに合わせたプログラムを複数持っているのが普通である。
スマホのカメラに至っては撮影後のエフェクト(画像処理)でボケアシの変化をつけたり、写ってしまったものの削除など、後からいくらでも変えられる。
撮影時にビシッと決めなければならないのはフイルムカメラだけなのかも知れない。


話を戻す…Nikon EMのこと

話を戻すとそこにあったカメラボディは前述のEOS-1n、Nikon FM(初代)の他、Nikon F3(44,000円)、Nikon EM(4,400円)なかなかのチョイスなのである。
名機中の名機F3の価格は妥当だとして、EMが4,400円はどうだろうというのが最初の感想であった。それより新しいCanonのフラッグシップEOS-1nが5,500円ならそちらを買うよな、と思いながらEMを持ってみた。
あまりの軽さに驚いた。ほぼオールメタルで堅牢なFMやEOS-1nと比べれば半分以下の重さなのではないか。(まあ、トータルの重さはレンズ次第なのだが)

この機種、デビュー当時から知っていて、当時「リトルニコン」の愛称で女性や初心者向けに売ろうとしていた。80年代初頭はそういう時代で、他の会社も軽くて使い勝手が良い、そして最も重要なのが「安い」一眼レフカメラを出し始めていた。ただ、コストを下げるとどこかにしわ寄せがくるもので、それらの機種はたいてい目に見えてチープで操作感もそれまでの一眼レフと違っていたりした。作るほうも使う方も割り切って購入するといった品物だったのだ。
このEMもそういう雰囲気が横溢(軽量化のためのプラ素材の多用やAE専用機でマニュアル撮影ができない点など)しているのだが、他社の低価格一眼レフと一線を画している部分がある。それは、ボディ全体のデザインである。
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EMが開発されたころNikonではフラッグシップ一眼レフカメラの開発も行っており、名機の誉れ高いF2の後継F3が設計されていた。F3の外観デザインを担当したのが車のスタイリングで有名なジウジアーロだった。
Fシリーズ伝統の山形ペンタ部を廃し、通常の、しかし交換可能なペンタ部に変更し、ブラックボディに(今も続く)赤ラインを入れた。結果的にF2を超える期間製造されNikonを代表する機種となった。

そして、このEMもジウジアーロがデザインしたモデルだったのだ。
全体的に小ぶりで角を落としたデザインは独特の雰囲気を持っている。持つとしっくりくる大きさなのである。上面部には左側に巻き上げレバー、フィルム感度ダイヤルと右側にシャッターボタンを兼ねた折畳式のフイルム巻き上げレバーとその底部にモードダイヤル(それもB=バルブ、90=90分の1秒、AUTO=オートの3つだけ)があるだけだ。シンプル極まりない。が、チープ感がないのはジウジアーロデザインだからか?
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複雑な操作系を廃し、フイルム感度を調整し撮影モードをAUTOにすれば、後は絞値を決めピントを合わせ、シャッターを切るだけである。AE専用機なのでそれ以外の撮影方法は基本的には無いのである。露出補正ダイヤルさえない。(露出補正ボタンはあるが+2の補正だけしかできないという割り切りよう。それ以外の段数やマイナス方向の補正はフイルム感度ダイヤルで代用可能だがそんな使い方はこの機種には似合わない)

チープな中にもニコンらしさを感じるのが、電池無しでも使用可能なメカニカルシャッターをBと90分の1秒の二つ装備している点である。AE無しでもシャッター速度90分の1固定で、(絞値を調整して)撮影可能な点である。


買わなかったのだが…

ハードオフの中古は結局買わなかった。程度は悪くなさそうだが、EM(4,400円)、FM(7,700円)、EOS-1n(5,500円)の間で揺れ動き、(一番心が動いたのがFMだったのだが)Nikonはレンズを1本も持っていないということで踏み切れなかった。
ただ、気になって調べているうちにEMの出物をネットで発見してポチってしまった。
そう、結局EMを買ってしまったのだ。

PayPayフリマで「EM+Nikkor 35-70㎜ F3.3-F4.5」セットで5,800円(クーポン使用で5,220円)だった。
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写真で見る限り程度は良さそう。EMリリースと同時にでたシリーズEではない通常の標準ズームレンズがセットになっている。(シリーズEだと36-72㎜ F3.5固定になる)
1980年代標準ズームといえば2倍ズームの35-70が主流で、自分が最初に買った一眼レフOLYMPUS OM-40のセットズームも35-70だった。(その後デジカメ時代の前=AF時代に広角から望遠まで1本で済ませる10倍ズーム28-300㎜というのがレンズメーカーからリリースされ流行ったが、今では全く聞かない。デジカメの世界では珍しくない倍率だが、そのほとんどは光学∔デジタルズームの倍率である)

レンズを買うことを考えれば4400円のジャンクを買うよりリスクが少ない。何より複雑怪奇※なNikonの替えレンズを探さなくてよい。

※ニコンのFマウントはFの登場からAF時代を超え、デジタル一眼になっても互換性を保っているのだが、そりゃあ、無理してる部分もあり、マウントが同じだからといってすべてのカメラとレンズに互換性があるわけではない。そういう意味では設計が同じでも違うレンズが存在しややこしい。EMはAE専用機のため、フイルムカメラ用のマニュアルレンズでもAi、Ai-Sの表記のあるものしか使えない。これがレンズ本体に書いてあるわけではない点がややこしい。使えないというのも物理的に装着できない。露出計が連動しないなど症状は様々である。

買ってしまってから考える。さてどう使おう?




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