ビートルズの曲を一度も聞いたことが無い人は稀だと思うが、意識してそれとして聞いていない場合もあるであろう。(Help!が「なんでも鑑定団」のオープニングに使われていたり、All Together Nowがバラエティ番組で使用されたり、Birthdayのイントロだけジングル的に使用されたり枚挙にいとまがない)
ビートルズを意識して聞こうとする時、最も良い入口について考えてみた。
最初に思いつくのは英米でのNo.1曲ばかり集めた「1」である。2000年にCDでリリースされたコンピレーション。ヒットシングルが網羅されていて、全27曲80分超のボリュームである。
2011年には090909の音源を利用したリマスター盤がリリースされ、2015年にはジェイルズ・マーティンによるリミックス盤も作成されている。(現在流通しているのはこのリミックス盤だと思われる)
音も良く、古い音源はモノラルで収録してあり、無理が無い。一見よさそうなのだが、お勧めできない。この曲もビートルズ?といった発見はあるかも知れないが、必ずしも(当時の)ヒットシングルがビートルズの重要な(聞くべき)曲というわけではないからだ。
(個人的な話だが自分はこのアルバムを聴くと頭が痛くなる。原因は不明)
事実上の解散状態だった1973年にリリースされ大ヒットした初めての公式ベストアルバム「赤盤」「青盤」はどうだろう?
アルバム「1」の曲をすべて含み54曲の大ボリューム。(LP、CDともに4枚組)である。「1」では漏れていたアルバムの曲も収録されている。
「赤盤」(キャリア前半26曲)はアルバムRevolverの時期までのシングル曲(英国盤)のすべてと名盤Rubber SoulからジョンのIn My LifeやNorwegian Wood (This Bird Has Flown)、Nowhere Man、Girlを収録。また、ポールじゃなければ書けないDrive My CarとMichelleも収録している。(Rubber Soulはシングル曲を収録していないので「1」には入らない)CD2枚組だが全体の時間が60分余しかなくあっという間に聞けてしまう。(CD1枚に十分入る内容)初期を中心に聴くのであれば十分に選択肢に入ると思う。この時期のビートルズは勢いがあるし、この頃こそがビートルズという人も存在するのだが、後半の充実ぶりに比べると、やや物足りない感じがする。
「青盤」(キャリア後半28曲)はアルバムで言えばSgt. Pepper's Lonely Hearts Club BandからLET IT BEまでの期間をカバーし、「赤盤」とは少々趣がことなる。シングルの数が減り、アルバム曲の比重が高くなる。曲も長くなり収録時間はCD2枚組で98分余りとなっている。(CD1枚には収まらない)
1枚目の、のっけからビートルズ史上最強のシングルと言われるStrawberry Fields ForeverとPenny Laneの両A面シングル、Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Bandからキャリア最大級(人によると思うが)の名曲A Day in the lifeを含む4曲と畳みかける。All You Need Is LoveでLP A面終了(CD1の半分)
LP B面はポールが炸裂。Magical Mystery Tour関連曲を中心に7曲中5曲がポールの曲だ。
CD1だけでお腹いっぱいという感じだが、さらにCD2でバリエーションを拡げていく。ジョージの曲が14曲中4曲を占め、Get BackやLet It Beといったポールの名曲、Come TogetherやAcross The Universe等のジョンの曲を聴くことができる。ラストはポールのLong And Winding Road。名曲の森である。
1枚だけというなら「青盤」がおすすめ。(2枚ですけと…)
知っている曲が少なくてもアルバムとしてまとまりの良いものがよいというのであれば、オリジナルアルバムのAbbey Roadがおすすめである。(1曲、1曲のクオリティでいうとRubber Soulも捨てがたいのだが…)
最後に録音されたアルバムで、直前のゲットバックセッション(後にアルバムLet It Beとなる)の失敗を知っていると、奇跡と思えるクオリティのアルバムである。
青盤では聞くことのできないポールの曲を中心としたメドレー(LP B面)が素晴らしい。メドレー最後の曲はTHE ENDという曲である。この曲にはジョン、ポール、ジョージによるギターバトルがあり、リンゴによるドラムソロ(彼のビートルズのキャリアの中で唯一)がある。感動的である。(ジョンはこのメドレーの出来が気に入らなかったようだが…)

あまりに有名なジャケット
他の人の意見も聞いてみよう。
中山康樹さんは講談社現代新書「これがビートルズだ」(2003)の中で、公式213曲の中でアルバムに収録できなかった曲を集めたPast masters Vol.1,Vol.2を入門時のアルバムとして推奨されている。(2009年のリマスター盤以降、Vol.1と2を統合した2枚組のPast mastersとなっている)
ビートルズは2枚目のアルバム以降シングルを収録しない方針としたために、アルバム未収録シングルというものが多数存在した。その受け皿として発売されたのがパスト・マスターズ(シリーズ)である。ドイツ語版のI Want To Hold Your Handなどのレアテイクも収録するが、基本、アルバム未収録のシングルA面、B面が収録されている。ブレイクスルー曲、I Want To Hold Your Handも通常のアルバムでは聞くことができない。I Feel Fineもそうだ。ただし、シングル曲でもアルバムに入ってしまった曲(マジカルミステリーツアーはアメリカで発売されたものを公式としたためシングル曲が多数収録されている。また、映画サントラ扱いのアルバムにはシングル曲が収録されている)は収録されていない。
それでも充実ぶり(特にVol.2)は相当なものでこれから入るのは理にかなっているような気もする。
ただ、このアルバムに収録された曲はほとんど「赤盤」「青盤」に収録されていて、そちらで事足りる気もする。例外は名曲Rain(シングルPaperback WriterのB面)で、この曲はPastmastersでしか聞くことはできない。(他のコンピレーションにも収録されていない)
入口としておすすめは「青盤」とオリジナルアルバム「Abbey Road」。中山さんのお勧めは「Past masters」と書いた。
公式にはそれでよいのだが、裏のおすすめも書いておこう。それは1999年にリリースされた企画盤「Yellow Submarine Songtrack」である。企画盤とはいえApple公式のアルバムである。
Yellow Submarine というオリジナルアルバム(11stアルバム)が存在しているじゃないかと言われる方も居られると思うが、別物である。これは映画Yellow Submarine に使用されたビートルズの曲だけ集めたコンピレーションアルバムで、オリジナル(11stアルバム)がサウンドトラックとしてジョージ・マーティンの劇伴も収録していたのと異なり、純粋にビートルズの曲だけで構成されている。そして、特記すべきはそのリリース時期である。1999年といえば1987年(最初のCD化)でも2009年(全作リマスター)とも違う時期となっている。
このアルバムは映画DVDのリリースに合わせて制作されており、映画の方は初の5.1ch収録となった(当然、制作し直しである)その過程で制作されたCDなのである。
ビートルズ物としては初めてのデジタルリミックスされた作品である。リマスターではなくリミックスである。オリジナルのテープに戻りトラックごとに素材を取り出し、ノイズを除去した後、音の配置も含めて再構成されている。(今までセンターに定位しなかったボーカルの定位を修正したり、アナログコピーの際に発生したノイズを除去したり、かなり大がかりな修正が行われている)
この時、Only a Northern Songが初めてリアルステレオ化された。全体にブラッシュアップされた品位の高いものになっている。
イエローサブマリンの映画は1968年公開。このアルバムはそれ以前の楽曲と映画用に作成された曲で構成されている。アルバムで言えばRubber Soul(2曲)、Revolver(3曲)、Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band(4曲)、Magical Mystery Tour(1曲)、Yellow Submarine(5曲)である。時代なのかサイケ色の強い作品が集まった。中期が好きな人には好適なアルバムである。音も良いので隠れた名作と言える。
ただ、現在では顧みられることがほとんどない。残念である。2009年のリマスター盤発売後すっかり影が薄くなって、件のディアゴスティーニビートルズコレクションでもLOVEやANTHOLOGYはあったのにYellow Submarine Songtrackはラインナップされなかった。
中古市場では比較的安価に(正典扱いではないから…)手に入るので一度聴いてみては…

Yellow Submarine Songtrack
|
1 |
Yellow Submarine |
|
2 |
Hey Bulldog |
|
3 |
Eleanor Rigby |
|
4 |
Love You To |
|
5 |
All Together Now |
|
6 |
Lucy In The Sky With Diamonds |
|
7 |
Think For Yourself |
|
8 |
Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club
Band |
|
9 |
With A Little Help From My
Friends |
|
10 |
Baby, You're A Rich Man |
|
11 |
Only a Northern Song |
|
12 |
All You Need Is Love |
|
13 |
When I'm Sixty-Four |
|
14 |
Nowhere Man |
|
15 |
It's All Too Much |




