この作曲者名や曲名を知らなくとも曲は聞いたことがあるという人が大半なのではないだろうか。いろいろなバリエーションで演奏されているし、映像作品への使用も多い。(エヴァンゲリオンにも登場する)
ただ、パッヘルベルの「カノン」という曲は存在せず、正しくは「3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調」で、その前半部分が「カノン」として演奏されている。
パッヘルベル(1653−1706)はバロック期の人で、かのバッハ家とも交流があり、あの大バッハにも影響を与えたのではないかと言われている。
当然この曲も17世紀か18世紀の曲だが、作曲時期ははっきりしない。どころかこの曲、20世紀になるまでほぼ埋もれていたのだという。
1919年にグスタフ・ベックマンという学者がパッヘルベルの室内楽に関する論文の中にスコアのせるという形で初めて出版され、それを支持する古楽研究家マックス・ザイフェルドによって編曲され(1929)その版が広く使われることになる。(後述するカラヤンの演奏はザイフェルド版を使用している)
最初に録音されたのが1940年で、一般にひろく広まることになったのは1968年のジャン=フランソワ・パイヤールの室内管弦楽団によって録音された演奏がリリースされてからだと言われている(by wikipedia)
意外と最近なのである。パイヤール版は映画「普通の人々」(1980)で使用され80年代以降、「カノン」ブームとも言える状況になっていく。たしかに自分が子供の頃、バロックといえばバッハかヴィヴァルディでパッヘルベルの名前は知らなかったと思う。
美しく、わかりやすいメロディと手頃な長さ(5分〜7分)というのも演奏機会が増える要因かもしれない。まあ名曲なのは間違いのないところではあるが…
今回、上記のジャン=フランソワ・パイヤールの室内管弦楽団版のCDが手に入ったので、もともと持っていたカラヤン版(1969BPO・LP)とアダージョカラヤン版(1983BPOデジタルレコーディング)を聴き比べてみた。

1.パイヤール指揮 パイヤール室内管弦楽団 1968 カノン7分8秒 ERATO

2.カラヤン指揮 ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 1969 カノン4分6秒 ジーグ2分 DG
3.カラヤン指揮 ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 1983 カノン5分6秒 DG DR
(1983年のカラヤン版はアルバムではジーグも収録されていたがアダージョカラヤンCDにはカノンのみの収録となっている)
1は他の2つにくらべて相当遅いテンポであるが、ゆったりと聴かせる名演である。(ザイフェルド版は使わずにパイヤール自身の編曲)

2はサンモリッツのフランス教会での録音、3はベルリンの(本拠地)フィルハーモニーでデジタルレコーディングをされたものである。1960年代カラヤンはオーケストラを連れてリゾート地に行き演奏会や録音を行っていたそうである。録音が古いせいかもしれないが、フランス教会の方はややデッドな音響。テンポは早く好ましい傾向。
3はテンポが遅くなり、ややもっさり感が出ている。音の拡がり感はさすがフィルハーモニーという感じである。(ザイフェルド版のテンポについては異論があったようでそれを反映したものかもしれない)
自分の好みでは2のハイテンポの演奏だが、もともとバイオリン3本、チェロ×1、バス×1、鍵盤×1の室内楽をオーケストラで(それもベルリンフィル)というのはドーピングのような気もしている。
1はテンポの遅さを芸術にまで昇華させた名演だと思う。
※それにしても1968年に話題(パイヤール版)になると(翌年に)すかさず録音するカラヤンは、商魂たくましいというかなんというか…ただ、確実に水準以上の演奏を仕上げてくるのはさすがというしかない。












