
週刊少年サンデーで連載している、馬頭ゆずお先生が描くロッカロックが最終回を迎えた。高校生が主人公のバンドもので、いわゆるゾーンに入った状態を「ロッカロック」と呼び、主人公の世良幸丸は中学校の卒業式でゲリラ的に敢行したライブでそれに遭遇する。高校生になった幸丸は音楽を続けるためにバンドメンバーを集め、音楽活動に励み成長していく。そんな漫画だ。
バンドものについて知人が「配信サービスなどがかなり整備された今、リアルで集まる理由が必要だ」と指摘していたことがあった。ロッカロックに関していえば、ロッカロックを味わう、起こすことがそうであったと思う。バンドが一体になることで生まれるグルーブ感に名前をつけて、発生した際に丁寧にその瞬間を描写する様子は「こういう風に描くのか」という新鮮さとわかりやすさがあった。
野外ステージでの「あんたは今日友達と来た?」「フェスが好きなんだ」「なんか嫌なことあったのか」と客の一人一人に考えが及ぶシーンは本誌で読んでいて、こんなものを描ける作家がいるのかと驚いて、気づいたら涙が流れていた。アーティストがオーディエンスに与える瞬間をとても綺麗に描いていて、最後の一コマは「最終回か!?」とゾクゾクっと来るような切れ味の良さだった。
長生をドラムとして迎えたライブは最終回が近いこともあり、乾坤一擲とでも言いたくなるようなコマが続いた。狙って描いたような野外ステージとは違って、いくつかの断片的な絵が荒削りに重なっていく緊張感は凄まじかった。良いものを見た。

この漫画はサンデーで時折現れる「少年が人生のハンドルを限界まで振り切ると見えてくるかもしれない世界をしっかりと描いたもの」だと思う。じゃじゃ馬グルーミン!UPやモンキーターンなんかを中学時代に読んだ私は「その気になればこういう人生を送れるんだ」と本当に感じたし、その影響でみんなが地元の高校に進学する中で、遠くへ行ったものだ。ロッカロックも「今から音楽始めたらなんか面白いことが起きるかもしれない」と思わせる魅力がたくさんあったし、その一つとして、現象としてのロッカロックが存在していたというわけだ。
最初は「掲載誌のどの絵柄にも似ていないタッチだな」と思いながら見ていたけど、途中から白いところは真っ白、黒いところは真っ黒と割とはっきりした絵を描く人だなと気づいた。上条淳士や河合克敏っぽい白い背景にバシッと構図で決めていく絵が見られて昔のサンデーっぽいなぁと個人的に好感を持って見ていた。
流れるような線が「硬めの絵づくり」というよりはライブ中に動き回るような滑らかさがあって、らしさがあるなとも思っていた。他の掲載作品との比較、ではなく漫画全体との比較だけれどもデジタル作画によって得られるエフェクトブラシ的な背景はほとんどなかったような気がするので、そういうところにも「昔の漫画っぽさ」を覚えたのかもしれない。
それにシトロエン2cvやダッジバンらしき車が描かれたりするのも「こういうものが描きたい」という好きなものがあるように見えて、好感を持った。最終話の一話前の幸丸が履いている黒いスニーカーとかも作者の中で何か世界があるような気がして、好きだ。
高校生が音楽をやる漫画なのに割としっかりと大人と関わって外の世界への接続をマイルドにこなしている点がユニークだった。ライブハウスに出入りするということは当然あるのだけど、ドラムメンバーが定まっておらず先生がサポートに入り、その後はドラッグストアで働いている長尾が入るというと行った具合で自然と年上と接する構造を作っていた。彼ら大人組が、幸丸をはじめとした若者と良い対比になっていて「大人がハッとするようなことを言う子供」というのがバンド内で完結しているのが良いなぁと思っていた。人間関係が割とミニマムで、だからこそ時折関わる人物の異物感がいい味を出していると言うか。

漫画としてはサンデーっぽいなと思いながらかなり楽しく読んでいた。背伸びをすれば行けそうな世界を少年に向けて描いてるというのは本当に素晴らしいと思ったし、それでいてライブ描写は息を飲むほど。気づけば涙も出ていた。かと思えば長生を迎えたライブでは「音楽に取り組む時間を減らすことを大げさに辞めるっていっているだけだ」と音楽は一生やめられないということを平然と言ってのける。
音楽という意味だと私の友達がまさにそんな具合で、やめていないようだし、私は私でフリーペーパーを出すのをやめても、文フリに出ることをやめても同じようなことをミニチュアゲームでやって、今度はブログで発信している。「デザイナーの看板は下ろした」と言うくせに主催のイベントの告知画像をIllustratorで作っている。書くことも作ることもやめられなくて、続いている。
そんな風に「音楽とはやめられないものである」と主人公に言わせた作者の馬頭ゆずおのファンに私はすっかりなってしまった。終わってしまうのは寂しい。ただ、その一方で「この漫画がどこまで続くのか」というワクワクとは違った「どう終わるのか?」というジリジリ感が味わえたのは良かったと思う。長生のライブは、彼に全神経を注いだのかのような展開が良かったし、福岡に残るというキューちゃんはとても綺麗だった。最終回、絵に描いたような最終回で心を掴んでくれて、ありがとうございます。
絶対に次回作もサンデーで描いてくれ。中学生が夢を見られるような漫画をもう一度連載してくれ。俺は大人なのでターゲットじゃないことはもうわかっている。ただ、あなたが少年に夢を与える様子をもう一度見たい。
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