
政府は、10月25日の給与関係閣僚会議で、国家公務員の給与について、東日本大震災の復興財源を捻出するため、国会に提出している、月給とボーナスで平均7.8%削減する法案の成立を優先させ、人事院勧告の実施は事実上見送る方針を確認しました。
先の通常国会に提出され、衆院で継続審議となっている給与削減法案は、国家公務員の現行の俸給表を据え置いたまま、2013年度末まで俸給月額(基本給)を職責に応じて、10%、8%、5%削減する内容です。ボーナスの減額分と合わせ、年間2900億円の人件費削減につながります。
一方、人事院勧告は俸給表を改定して平均年収を0・23%引き下げるもので、11年度は120億円の人件費削減を見込んでいます。政府は今回、給与削減法案が減額幅で人勧水準を大きく上回っていることなどを踏まえ、「削減法案が成立すれば人勧の趣旨は生きる」(総務省幹部)とし、人勧実施の必要はないと判断したというのです。
1948年の人事院発足後、人事院勧告を超える削減は初めてとなります。

これについて川端総務大臣は、閣議のあと記者団に対し、「人事院勧告が極めて重い のだということを踏まえたなかでの判断で、勧告を無視するという意味とは全く違う」と述べました。
藤村修官房長官は「特例法案は勧告の趣旨を内包している」と強調しています。法案は震災対応の臨時措置で勧告の引き下げ分も含まれるとし、合憲と主張しました。
人事院勧告が0・23%下げるという内容なのに、8%近く下げよという法案が人事院勧告の趣旨を内包しているとか無視していないだなんて、牽強付会以外の何物でもありません。

この特例法案を巡っては、公務員にも労使交渉を認める公務員制度改革法案との同時成立を条件にして国会に提出したものです。
しかし、自民党・みんなの党など野党は「労使交渉を認めれば、公務員の人件費が上昇する」として反対し、このため、政府・民主党は特例法案を先行し、成立を図る方針となりました。
こういうのをやらずぶったくりというのです。

10月26日の衆議院内閣委員会で、梶田信一郎内閣法制局長官は「努力を尽くしたが実施されない結果になった場合、本来の機能を営んでいないとはいえない」と野田政権の助太刀に入りました。
しかし、人事院の江利川毅総裁はこれに対し、公務員は労働基本権を制約されている代わりに勧告で給与水準が決まっていると説明し、「勧告が尊重されなければ(憲法に)抵触する問題が出てくる」と反論しています。
国家公務員は労働基本権が制約され、給与水準を政府側との交渉で決めることができません。政府は人事院勧告を労使交渉に代わる措置として60年以上尊重してきたため、「無視するのは憲法上問題だ」と主張しているわけです。
また、特例法案だけでは50歳以上に比べて中堅・若手の給与が抑えられている実態が是正されないと訴えました。

はい、お待ちかね?の宮武講師の憲法講義です。
この公務員の労働基本権制約に関しては、昭和48年の全農林警職法事件が今でも先例になっています。「人事院勧告が労働基本権制約の代償措置だ」というのは、これらの裁判で政府が主張してきたことです。
ただし、公務員の争議権(ストライキ権)を全面的に禁止する国家公務員法の規定を合憲判断したこの判例は、それまでの最高裁判例を8対7の僅差で逆転した合憲判決であり、憲法学界からの批判が極めて大きいことをあらかじめ知っておいてください。
さて、この事件は警察官職務執行法改正案の国会上程に反対する全農林労組による争議行為をあおる行為についての処罰が問題となった事件です。この判決が国家公務員の争議権全面禁止を合憲とした理由は以下の点にありました。

(9月、人事院総裁から人事院勧告を渡される野田首相)
①憲法28条の労働基本権の保障は公務員に対しても及ぶが、国家公務員の地位の特殊性と職務の公共性など国民全体の共同利益の見地からする制約を免れない。
②公務員の勤務条件は国会の制定する法律・予算によって定められる以上、行政府に対する争議行為は意味がなく、議会制民主主義に反する恐れがある(財政民主主義)
③私企業とは異なり、公務員の争議行為に対しては(やりすぎると雇い主の経営が危うくなり自らの首も締めることになりかねないという)市場の抑制力が働かない(市場抑制力の欠如)
④人事院制度等により争議行為禁止に伴う十分な代替措置が講じられている(代替措置の存在)
よって、①ないし④を踏まえれば、争議行為の一律全面禁止も合憲という結論でした。

法律学の基本的考え方で言うと、①~③が公務員の争議権を禁止する必要があるという「必要性」、④が禁止してもかまわないという「許容性」です。
①~③の必要性も憲法学界からはこてこてに批判されているのですが、ここではおきましょう。
とにかく、これ4つそろってギリギリ合憲です。公務員の争議権を禁止しても「かまわない」という④の点が抜ければ、もう「かまわなくなくなる」=違憲なんです。
④は国家公務員がストライキをしなくても、雇用主である政府は、公正中立な独立行政委員会である人事院勧告に従うのだから、公務員の給与は大丈夫なはずであるという要件です。
もし8%近くも給与を下げると言うことなら、国家公務員各労組がギリシャのようにストライキをして抵抗するところを、ストライキできない代わりに下げ幅をコンマ以下にするという人事院勧告にしぶしぶ納得するわけというです。
甘えた公務員ふさけんな!どれだけ人に迷惑かけてるか考えろ!!。。。ギリシャの場合(笑)

つまり、争議権禁止の許容性を支えていた④の人事院勧告をまるきり無視する今度の特例法を認めてしまえば、国家公務員法が国民一般に認めている争議権を公務員にだけ禁止していることはもはや正当化できないことになります。
これが憲法違反であるという人事院総裁の主張の方が正しいことは、憲法を学んだことがあるものの目から見れば明らかです。

確かに、東日本大震災の復興には10兆円単位の財源が必要であり、どこかから捻出しなければなりません。
しかし、この地震と津波は国家公務員のせいで起こったわけではもちろんありません。最近は公務員叩きが流行っているようですが、ご自身の身に置き換えてください。いきなり、給与が8%減額になったら、いくらなんでも生活に困るでしょう?
私だって財務省だの、経産省だの、厚労省だの、外務省だの、防衛省だの、文科省だの、法務省だの、警察庁だの散々批判してきましたが(やりすぎか?!)、今こそ国家公務員には復興に向けて頑張ってもらわなきゃいけないのに、いきなり給与大幅下げなんて、こんなことではモチベーション下がる下がる。


また、経済政策としても、95万人の国家公務員の給与を下げれば、それが300万人の地方公務員に波及し、ひいては民間給与水準の切り下げにつながるのは火を見るより明らかです。
公務員叩きは自分の首を絞めることだとなぜ国民は気がつかないのでしょうか?
これでは国民全体の可処分所得が減り、それでなくても冷え込んだ消費マインドはますます冷え込むし、デフレは一層進んでしまってもう日本経済は終わりです。
日本にも富裕税の導入を!年間所得100億円以上の富裕層は14%の税率でしか税金を支払っていない

かたや、復興増税が控えています。いまだに財界は復興増税も消費税増税でといっていますし、少なくとも税と社会保障の一体改革では、消費税が10%も上がる予定です。
私は、何度となく、富裕税の導入を訴えているのですが、これは格差社会の緩和に効果があるだけではありません。
ウォール街を占拠せよ 全米でデモ広がる 「国難」東日本大震災に沈黙する日本の富裕層に富裕税の導入を!
眠っている富裕層の資産にたった1%の富裕税をかければ、年間3・5兆円の財源が生まれます。それを復興に向ければ、動いていなかった金が動いて、景気の活性化につながるのです。
野ダメ内閣に望んでも無理かもしれませんが、国難の今こそ、こういうダイナミックな改革に挑んで欲しいものです。

野田内閣 復興増税・税と社会保障一体改革増税 ダブル消費税増税の危険性
公務員憎しでなんでも叩いていたら後でしっぺ返しがあると思われた方は
よろしかったら上下ともクリックしてくださると大変嬉しいです!

