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安倍首相が野党の国会質問の時間を削減しようとするのは、議会に対する責任放棄だ。


 

 2017年11月1日始まった特別国会は、首相指名選挙の後、何の質疑も行われず、質問時間の見直しをめぐる与野党の対立が続きました。

 なぜこんな事態になったかというと、自民党が野党の質問時間を削り、与党の時間を増やすと言い出したからです。

 具体的には従来の「与党2対野党8」の配分を自民党が「5対5」にするよう求めたことから問題が発生しました。

 見直しを主導したのは安倍晋三首相や菅義偉官房長官ら官邸で、菅官房長官は

「議席数に応じるのは国民からすればもっともだ」

と開き直りましたが、与党の質問時間を増やすべきだなどという国民世論が勃興したなどということは一切ありません。

 そもそも、議院内閣制の下では政府と与党は一体をなしています。

 また、福祉国家においては、行政権の役割が増大し、三権分立の建前にもかかわらず「行政権の肥大」「行政国家現象」と呼ばれる、行政権が歪に力を増す傾向がなおさら強いのです。

 そのような行政国家現象の下では、国会は政府を厳しくチェックし、行政権との抑制均衡を果たし、本来の三権分立の姿を維持するのが大きな役割です。

 それを考えれば、同じ議院内閣制の英国やドイツもそうであるように、質問時間を野党に手厚くするのが合理的なのです。

国会質問で野党の質問時間・回数が多いのは国際的常識!

 

 しかも、議院内閣制のもとで、今の自民党には「事前審査」の慣習があり、与党は政府の政策や法案に関し、政府から国会提出前に説明を受けて質問する時間が確保されています。

 したがって、もともと与党は法案・予算案が出される前に質問をしつくしているのであり、また、国会前に得ている情報量は与党と野党とでは大きな差があるのです。

 質問の中身を見ても、これまで与党側の質問は政府の方針に同調し、礼賛して終わる例が多く、質問時間が余ったからと般若心経を読みだした与党議員までいます。

カジノ法案審議中に突然般若心経!与党に国会での質問時間を今より与えたらこうなる。

 

 ましてや「安倍1強」と言われ、安倍首相への異論がほとんど出ない今の自民党ですから、質問時間を増やして国会審議が充実するはずもないのです。

 そもそも、内閣総理大臣の地位は国民代表機関である議会での首相指名選挙を通じて与えられるのですから、総理大臣は野党を含む自分が選ばれた議会全体に説明責任を果たす必要があるのであって、質問時間見直しは国会の空洞化につながるだけでなく、政府と首相の責任放棄と言うべきなのです。

 それでなくても、10月の衆院解散は加計学園や森友学園をめぐる追及を逃れるための疑惑隠しが狙いと言われています。

 だとすれば、衆院選で自民党が大勝した途端に、自分が追及される野党の質問時間を提案を持ち出すのは、やはり両問題を追及されるのを安倍首相が嫌がっているからだとしかいいようがありません。

 もりかけ問題では、首相が政治をわたくししたことが真の問題なのですが、その疑惑を隠すために、国会の質問時間を変更するなど、それこそ政治の私物化以外の何物でもありません。

 そもそも、今の与党2対野党8の質問時間にしたのは、民主党政権時代に野党であった自民党の要求でした。

 ですから、衆院選後「謙虚に」と繰り返した安倍首相は、質問時間変更の撤回を自民党に指示すると同時に、予算委員会などに首相自らが出席して丁寧に両問題の説明するべきなのです。

 

 

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政府・与党が出す予算案や法案を、野党の異なる視点でチェックするのが国会質疑の意義。その野党の発言が封じられれば、国会が大政翼賛会と化してしまうのだが…
 
 もしかしたら日本の運命を大きく変えることになるかもしれない。開会中の特別国会で、与党・自民党が、野党が国政をただす場である委員会審議の質問時間を削ってしまったのだ。「与党議員の質問機会が少ないから」が理由らしいが、それは事実か。大政翼賛会へと歩んだ戦前の国会でも、同じ動きがあったのだが……。【吉井理記】
 

 「国会が自ら、国会の権能を低下させる愚挙です。日本を破滅させた戦争の時代にも、国会の力を封じる動きがありました」と怒りが収まらないのは、「国会質問制度の研究」などの著書がある千葉商科大の田中信一郎特別客員准教授だ。

 歴史を振り返る前に、おさらいしておこう。問題になっているのは、衆議院の委員会審議などで、与野党の質問(正確には質疑。決められたテーマに限り問いただすこと)時間をどう割り振るか、ということだ。

 国会法や衆院規則、実務手引きである「先例集」にも明示がないが、野党の時間を多くするのが長年の慣例で、この特別国会まで「野党8、与党2」の割合だった。ところが自民党は衆院選での大勝を背景に野党の反対を数で押し切り、まず15日の文部科学委員会で「野党2、与党1」とした上で、国会審議の中心となる予算委などでも配分を見直す方針なのだ。

 「2対1」なら一見野党が多そうだが、「それは錯覚です」と田中さん。

 「注意すべきは、この時間は質問だけでなく、首相や閣僚ら政府答弁の時間も入っている点です。与党から政府閣僚が選ばれるのですから、事実上は政府=与党です。するとどうなるでしょうか」

 例えば、野党の持ち時間を4時間として、質問2時間に対し、政府が答弁を2時間したとしよう。「2対1」だから、与党の持ち時間が2時間で、質問1時間、政府答弁も1時間とする。発言時間を単純計算すれば、野党の2時間に対し、与党+政府の発言は4時間、つまり「2対4」と逆転する。

 政治学が専門の明治大教授、西川伸一さんも嘆息する。「そもそも、国会は野党のためにあるといっても過言ではありません。なぜなら国会で議論される予算案や内閣提出法案は、全て与党が事前承認したものしか提出されないからです。だからこそ国会質疑を通じた野党のチェックが重要なのですが、その野党の質問封じは、国会の否定です。少数意見を聞かず、多数決ですべてを決めれば、国会の意味がなくなりますから。議論が政府協賛の与党色に染められ、『大政翼賛会』『戦前回帰』という指摘も、あながち絵空事とも言えなくなってきます」

帝国議会ではゼロの時も

 では、その戦前の国会である帝国議会で、何があったのか? 田中さんが解説する。

 「帝国議会では最初、議員が政府に国政全般をただす『質問』は制限されていました。それでも田中正造ら自由民権運動を率いた先人の努力が、政府をただす機会を広げていったのです。しかし軍国主義が高まる時期から、議員が政府に質問する場が再び制限され、国会の力が失われていきました」

 当時は書面質問が原則だったが、議員は内容や理由を議場で演説することが慣例になっていった。田中正造はこうした質問を通じて足尾鉱毒事件を社会に問うことができた。

 慣例は「先例集」にまとめられ、国会運営のマニュアルとなっていたが、1935年前後に慣例が改められ、議員の演説時間や、政府答弁に対する再質問を制限する改定がなされた、という。残された「先例集」からは、改定を誰が言い出したかわからないが、議会多数派(当時は立憲政友会)の可能性が高い、という。

 「この時期は、満州事変(31年)で国際的孤立が深まり、天皇機関説事件(35年)など、思想弾圧が激しさを増す時代です。そんな風潮を反映し、国会で議論することに疑いを持ったり、政府批判は許せないと考えたりする議員が増えたための改定でしょう。つまり国会自ら、国会の力を弱めたのです」

 この結果、政府への質問そのものが国会から消えていく。田中さんによると、大正デモクラシー期の第31回帝国議会(13~14年)では衆院で計100件の質問があったが、各政党が大政翼賛会に合流した後の第76回帝国議会(40~41年)では18件。日米開戦後は質問ゼロという国会もあり、43年6月~44年9月の4回の国会は、1件の質問もなかった。国会が、政府の追認機関に堕した結果である。

 「国会の監視機能が働いていれば、無謀な戦争をしたり、続けたりすることはなかったかもしれない。でも結局、国会が機能しないがために、国を滅ぼす政策を止められませんでした」

 そもそも今回の問題は、自民党の若手議員が「自分たちの質問する機会が少ない」と訴えたことが発端とされるが、この理由には裏付けが乏しい。

 なぜなら、本当に政府をただしたいなら、時間もテーマも制限されない書面質問(質問主意書)が可能だからだ。例えば、「森友・加計(かけ)学園問題」で揺れた今年の通常国会では、衆院で438件の質問主意書が出されている。さて、与党分はどれだけか?

 「ゼロ」である。政府をただすのは与野党を問わず、国会議員の責務だ。質問主意書が出されれば、答弁書を作る各省庁の職員の負担は増えるから、主意書の乱発は論外だが、本来なら与党議員も出すべきものだ。実際、旧民主党政権時代は民主党議員も出していた。

 立憲民主党の川内博史衆院議員もその一人だ。旧民主党議員時代の2010年、鳩山由紀夫政権に官僚の天下り規制のあり方を問う主意書を出した。

 「規制のあり方が甘いと感じ、政府をただしました。政府をチェックし、政策を良いものにするために、必要と思えば出すべきです。自民党の若手議員の活躍の場がないというなら、もっと政府内に若手を登用すればいい。そもそも与党は、自分たちが国会に提出する法案を自分たちで承認しておいて、国会で何を問うつもりか。『安倍1強』と呼ばれる状況で、政府のチェックがきちんとできるのか」

 その自民党のベテラン議員によれば、かつては与党議員の依頼で、各省庁が質問を作り、答弁も書く「自問自答」が横行していたらしい。さすがに最近は少ないようだが、この議員は「今でも『貴重な質問の機会を頂いて』とか言いながら、『○○大臣のご決意をお聞かせください』『××に行かれたご感想は』なんて、恥ずかしい質問をする若手がいる。時間をくれと言う前に、質問力を磨くべきだ」と首を横に振るのだ。

 では、野党の質問時間を削ることは何を意味するのか? 田中さんがまとめた。

 「今のまま質問時間を減らせば、国権の最高機関として政府をチェックする機能は確実に低下する。これは間違いない。厳しい監視にさらされてこそ、健全な政権や政治が実現するんです。国会が機能しないことが、この国に何をもたらすか、72年前に私たちは経験済みです。与野党の政争とか、そんな小さな話ではないんです」

 自民党の選挙スローガンは「この国を、守り抜く。」であった。今からでも遅くはない。この国を守るためにこそ、野党の声に耳を傾けるべきだろう。

 

 

 

 

 自民党の森山裕国対委員長は14日の記者会見で「(衆院の)先例集によると、国会議員の数で時間配分するのが原則だ」と強調。そのうえで「与党5、野党5」とした当初の提案を取り下げたとも指摘した。本来は与党分の時間を野党に「譲った」という主張だ。

 衆院の質問時間配分は、旧民主党政権時から「与党2、野党8」が続いてきた。ところが、先の通常国会で森友、加計学園問題に対する野党の追及が強まると、政権内に見直し論が浮上。7月24日の閉会中審査では、与党が「特例」として「与党3、野党7」を勝ち取った。

 さらに衆院選で圧勝すると、菅義偉官房長官が「議席数に応じるべきだ」と主張。安倍晋三首相が「丁寧な説明」を強調するのと逆行するように、野党側に一層の譲歩を迫った。立憲民主党の辻元清美国対委員長は「(安倍政権は)言行不一致で、加計隠しをしようとしている」と反発を強めていた。

 14日も平行線が続いたが、与党が委員長職権による委員会開催も辞さない構えを示したため、野党が軟化。国会冒頭からの混乱を避けたい与党も歩み寄った。

 「与党1対野党2」は100分率に直すと「33対67」。特例だった7月24日の閉会中審査より、野党の配分がさらに減った。今回も与野党は先例としないと確認したが、与党はこれを足がかりに配分見直しを他委員会にも広げる構えだ。だが、毎日新聞が11、12両日に実施した全国世論調査では質問時間について「野党に多く配分する」が54%に上った。度が過ぎると「おごり批判」を受けかねない。

 3月の参院予算委では、自民党議員が「(首相の)礼儀を尽くしておられる姿は本当に好ましい」などと質問して批判を浴びた。民進党の大塚耕平代表は「与党の賛美する質問が中心になると、議論ではない」とけん制した。【小山由宇、水脇友輔】

 

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