
福島県の「県民健康調査」検討委員会では、東京電力福島第一原発の事故当時に県内に住んでいた18歳未満と、事故の後、1年以内に生まれた子どもをあわせておよそ37万人を対象に甲状腺検査を続けています。
このうち、167人が甲状腺がんないしその疑いがあるとされ、少なくとも116人は甲状腺がんと診断されました。
甲状腺がんは100万人に1人ないし2人しか罹患しないがんとされてきたので、それからすると数十倍の確率で、福島の子たちはがんになっていることになります。
ただし、福島県の検討委員会は以下の理由で、放射線の影響によるものである可能性は高くないとしています。

それは
1 チェルノブイリでは子供の甲状腺がんが多発したが、福島の放射性ヨウ素による被ばく量はチェルノブイリよりけた違いに少ないと推定されていること。
2 その理由は、チェルノブイリでは事故後も漫然と牛乳などを飲み続けたが、福島では事故後1週間で飲食物が厳しく規制されたこと。
3 放射線の影響によるものならば放射線感受性の強い5歳以下の子供にがんが多発するはずで、現にチェルノブイリではそうなっているが、福島県では5歳以下の子どものがんが少ないこと。
4 福島県内の地域によって甲状腺がんの見つかる数に違いがなく、放射性ヨウ素の濃度と無関係なこと
などが挙げられています。

ではなぜ通常の数十倍もの甲状腺がんが見つかったかというと、スクリーニング効果だというのです。
これは、普通はこんなにまで綿密に甲状腺がんは調べないのに、今回は厳密に調査しているので、普通は見つからない甲状腺がんまで見つかったのだろうという理屈です。
それでも、福島県の検討委員会も、放射線の影響がないとは言い切れませんでした。
たとえば、チェルノブイリよりも福島の方が放射性ヨウ素の量が少ないというのは推定にすぎません。
また、放射性ヨウ素がどの程度の量で甲状腺がんを引き起こすかはまだはっきりとした知見がありません。
さらに、放射性ヨウ素の半減期は8日間であり、福島原発事故では厳しく規制されたという1週間後までに吸入してしまった放射性ヨウ素が勝負の分かれ目ともいえます。
さらに、福島原発事故では事故後ずっと放射性物質が出っ放しであり、いまだに出続けています。

現に、国際環境疫学会(ISEE)は2016年1月22日、日本政府などに対して書簡を送り、福島県民健康調査の甲状腺検査について、
「福島県民における甲状腺がんのリスク増加は、想定よりはるかに大きい」
と懸念を表明し、信頼に足るリスクの推定を行うよう要請しています。
これは、2015年10月に、ISEEの学会誌「Epidemiology」電子版に公開された岡山大学津田敏秀教授ら研究チームの研究内容を重視したもので、福島県民健康調査の2巡目の健診(本格調査)で通常よりも12倍の多発が起きているのは
「例外的に高いリスク」
であると指摘しています。
この津田教授らの研究内容については、各方面から反論があり、これに対して津田教授から再反論もされています。
とにかく、放射線による被ばく、特に内部被曝の影響については、まだわからないことだらけです。
それならば、放射線の影響によるものであるという可能性があるという前提で、すべての調査と対策を組み立てるべきです。
| 市民と科学者の内部被曝問題研究会 (編集) | |
| 旬報社 |
| 肥田舜太郎、鎌仲ひとみ | |
| 筑摩書房 |
肥田舜太郎 扶桑社
矢ケ崎克美ほか 岩波書店
わからないことはわからない、と評価するのが真に科学的な態度でしょう。
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甲状腺検査 新たに子供14人ががんの疑い
(福島県)
県は、原発事故当時に県内に住んでいた18歳未満と、事故の後、1年以内に生まれた子ども、およそ37万人を対象に甲状腺検査を続けている。
きょうの検討委員会では、おととしから行われている2巡目の検査で、新たに12人が甲状腺がんまたはがんの疑いがあるとし、1巡目の検査でも2人を新たに追加した。
1巡目と2巡目を合わせると167人が該当し、このうち手術によって甲状腺がんと診断されたのは116人だという。
*県民健康管理調査検討委員会・星北斗座長
「チェルノブイリとの比較の線量の話(を踏まえると)放射線の影響とは考えにくいという見解をこのまま継続する形に、きょうの議論としては委員会としては、そうなったということです」
委員会は、放射線との因果関係は無いとする見解を変えていないが、今後も「長期的に検査をする必要がある」としている。
毎日新聞2016年2月15日 21時22分(最終更新 2月15日 23時37分)
県民健康調査
東京電力福島第1原発事故後、福島県が当時18歳以下の子供らを対象に実施している県民健康調査で、県の検討委員会は15日、甲状腺がんと確定した子どもが100人を超え、全国の甲状腺がんの罹患(りかん)率(がんと診断される人の割合)に基づいた推計を大幅に上回ることから、「数十倍多い甲状腺がんが発見されている」との中間まとめの最終案を大筋で了承した。放射線の影響については「考えにくい」と評価しながらも、「現段階で完全に否定できない」としている。
<女性に多い甲状腺がん、どう対処すればいい?>
検討委は疫学やがんの専門医ら有識者で構成。最終案は、2011年10月から昨年4月末まで対象者約37万人のうち約30万人が受診した1巡目の検査結果に基づく。全国の患者の推計によると、検査で見つかる甲状腺がんは福島県の18歳以下で2人程度とされるが、1巡目では100人ががんと確定し、15人が「がんの疑い」とされた。
最終案では「将来的に診断されたり、死に結びつかなかったりするがんを多数診断している可能性がある」と明記。放射線の影響を考えにくいと評価した理由について、チェルノブイリ事故に比べ被ばく線量が少ない
▽当時5歳以下からの発見がない
▽県内の地域別発見率に大きな差がない
−−などを挙げた。
ただし、放射線の影響の可能性は小さいとはいえ完全には否定できず、将来悪化しないがんを見つけて不安を患者に与えるリスクも受診者に説明した上で検査を継続して実施すべきだとした。中間まとめは3月中に正式に決める方針。14年4月から始まった2巡目の検査では、昨年末現在で1巡目で「がん」や「がんの疑い」と診断されなかった16人ががんと確定。35人ががんの疑いがあるという。
一斉検診で多く
検討委の星北斗座長は会議後の記者会見で、数十倍の甲状腺がんの子どもが発見されたことについて、「一斉検診したことで数として多く見つかった」と述べた。【岡田英】
甲状腺についての説明(出典:福島県の県民健康調査検討委員会甲状腺検査評価部会資料)
福島県が東京電力福島第一原発事故後に始めた甲状腺検査で、甲状腺がんと確定した人数がこれまで115人に上っている。福島県の検討委員会は甲状腺がんの出現を「原発事故の影響とは考えにくい」と説明し続けているが、専門家がこう話す根拠は何なのか。東京大学医科学研究所研究員で、震災後は福島県南相馬市立総合病院で非常勤医を務め、県民の内部被ばく検査を続けている坪倉正治医師に話を聞いた。
チェルノブイリと福島とでは、被ばく量のケタが違う
チェルノブイリ原発事故では、放射性ヨウ素の被ばくにより0〜5歳児の甲状腺がんが目に見えて増えたことが分かっている。このことから福島県は2011年10月、福島第一原発事故による子供の甲状腺への影響を調べるため、事故当時18歳以下だった県民を対象に超音波による甲状腺検査を開始。2014年4月から約38万人の県民を対象に本格調査を始めた結果、これまで計115人が甲状腺がんと確定した。県検討委は「原発事故の影響であることは考えにくい」と説明しているが、一部ではこの結果が、原発事故による被ばくの影響ではないかとの憶測を呼んでいる。
坪倉医師は「福島で発覚した甲状腺がんは、原発事故の影響とは考えにくい」と話す。「まず非常に重要な点は、甲状腺がんは『被ばくしたかどうか』のゼロかイチではなく、事故当時に被ばくした『量』で決まるということです」
国連科学委員会(UNSCEAR)の2008年の報告書によると、チェルノブイリ原発事故で避難した人々の平均甲状腺線量は、ベラルーシで平均1077mGy(ミリグレイ)、ロシアで440mGy、ウクライナで333mGyだった。これに対しUNSCEARの2013年の報告書では、福島の原発事故では飯館村など福島県内で最も高いグループでも、平均甲状腺吸収線量は20歳で16〜35mGy、10歳で27〜58mGy、1歳で47〜83mGyと推計されている。
「つまり、チェルノブイリと比べ、被ばく量がケタ違いに低いのが福島の原発事故です。チェルノブイリ原発事故で判明している被ばく量と甲状腺がんのリスク上昇との相関関係を福島に当てはめると、福島の場合は被ばくの影響は目に見えて分かるレベルに到達するとは考えづらいです。確かに被ばくの事実はありましたし、県民全員の被ばく量を完璧に把握できているかと言われれば嘘になります。しかし、チェルノブイリの場合と今回の福島の場合とでは、被ばく量のケタが決定的に違うということは国内外のどの研究結果でも一致しており、この前提から議論を始めるべきです」
チェルノブイリでは原発事故が起きたことを住民が知らされないまま、放射能で汚染された牛の牛乳を飲むなどして子供たちの被ばく量が大きくなっていった。一方で福島の場合、3月17日には厳しい食品規制が敷かれ、内部被ばく量がかなり低く抑えられたという。「また、チェルノブイリで甲状腺がんが目に見えて増えたのは5歳以下でしたが、福島では5歳以下では甲状腺がんは見つからず、見つかったのはほとんどが15歳以上でした。専門家の間ではその事実も、福島で見つかった甲状腺がんが原発事故による放射線ヨウ素被ばくによるものとは考えにくいとの見解につながっています」
「これまで見つからなかったがんが見つかるように」
では、なぜ福島県の甲状腺検査で甲状腺がんが115人も見つかっているのか。坪倉医師は、集団での甲状腺検査は今まで全く前例がないことだと指摘。その上で、検査を受けてこなかった人々に大規模検査を初めて行うことで、今まで見つかってこなかった症状が大量に発覚するという「スクリーニング効果」を理由に挙げる。
「甲状腺がんは進行するとしても非常に緩やかであり、死に至ることはほぼない(生存率の非常に高い)病気です。これまでは患者が喉にしこりを感じるなどの自覚症状があり、病院に来ることで初めて甲状腺がんであることが発覚していました。しかし感度の高い超音波検査を大規模の集団で行うことで、本来なら治療の必要のないほど小さながんまでも見つけられるようになったのです」
韓国では1999年から乳がん検査と合わせて甲状腺検査を導入したところ、1993年から2011までに甲状腺がんの罹患率が15倍に増えた一方、甲状腺がんによる死亡者数は変化しなかったというデータが発表されている。「データを解釈する際に大事なことは、そのスクリーニング効果による増加分を超えて増えているか?という点なのですが、その点が置き去りにされて『がんが数十倍に増えた』という数字だけがしばしば抜き出されている。一般的にスクリーニング効果で患者数が数十倍に増えるというデータは科学的に示されている一方で、福島の原発事故による人々の被ばく量は甲状腺がんを増加させるとは考えにくいほど小さいものです」
甲状腺がんと診断されたら
それでは、「今まで見つかっていなかった」甲状腺がんが検査で発覚したとしたら、どのように対応すればいいのだろうか。坪倉医師はこう話す。「甲状腺がんはなかなか大きくならず、生存率は非常に高いです。病院によって判断に差はありますが、基本的にガイドライン上では1cm未満のものは慎重に経過観察でよいともされています。甲状腺がんの手術をすることは、声を出すための神経を傷つけたり、心に傷を負うというリスクもあります。あまり心配したり焦ったりせずに、病院で定期的に経過を見てもらいながら、手術をするかしないかについてはじっくり相談して考えることが望ましいと思います」
◇坪倉正治
2006年3月東京大学医学部卒、同年4月から医療法人鉄蕉会亀田総合病院で研修医。2008年4月に帝京大学ちば総合医療センターの第三内科に助手として勤務。2010年4月には、都立駒込病院血液内科の医員。同年4月から、東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門に移り研究員として勤務。東日本大震災発生以降、毎週月~水は浜通りに出向き、南相馬市立総合病院を拠点に医療支援に従事している。飯館村での健康診断、相馬市や南相馬市での放射線説明会などにも積極的に参加。血液内科を専門とすることから、放射線による内部被ばくを心配する被災者の相談にも対応している。
(安藤歩美/THE EAST TIMES)
甲状腺がん「信頼性高いリスクの推定を」〜国際環境疫学会が忠告
国際環境疫学会(ISEE)は1月22日、日本政府に対して書簡を送り、福島県民健康調査の甲状腺検査について、「福島県民における甲状腺がんのリスク増加は、想定よりはるかに大きい」と懸念を表明し、信頼に足るリスクの推定を行うよう要請した。
今回、ISEEが会長名で送ったのは、丸川珠代環境大臣と、環境省環境保健部・北島智子部長および福島県保健福祉部県民健康調査課の小林裕幸課長宛ての書簡。10月に、ISEEの学会誌「Epidemiology」電子版に公開された岡山大学津田敏秀教授ら研究チームの研究内容を重視し、福島県民健康調査の2巡目の健診(本格調査)で通常よりも12倍の多発が起きているのは「例外的に高いリスク」であると指摘した。
また津田教授が論文の中で、甲状腺がんの早期発見・早期治療のために、福島県外をも含む体系的なスクリーニング(健診)の必要性を言及していることについてISEEは、こうしたスクリーニングの実施は、被ばくを受けた人々の利益となるだけでなく、科学的にも有意義であると指摘。さらに日本政府に対し、福島原発事故によるリスクに対する理解を深め、信頼度の高いリスク推定を行うよう要請した。
今回、日本政府に書簡を出したタイミングについてISEEは、OurPlanetTVの取材に対し、「昨年10月に津田教授が論文が公開されて以来、政策委員会で議論を重ねてきた。最終的には、昨年12月17日にのオンライン会議で決定した。」としている。
津田教授の論文については、福島県立医科大学の高橋秀人教授や長崎大学の高村昇教授らが反論文を提出しているが、津田教授は、再反論している。ISEEは、津田教授の論文で、「スクリーニング効果」が考えられない2回目の検査でも、想定を超える多発が起きている点を重視したものと見られる。
福島原発事故に伴う住民の健康診断などを担当している環境省環境保健局の放射線健康管理担当参事官室は、ISEEの書簡について、「課内で共有はさせていただいたた。他の学術団体の論文と同様に、参考にさせていただく」と述べ、ISEEに対して特段、返信はしないという。また「他の学術団体からも直接、書簡が届いているのか」との質問については、即答できないとした。
国際環境疫学会は世界最大の国際的な環境疫学者の組織で、たばこの発がん性やPM2.5など、環境暴露による身体への影響に関して、因果関係を解明する疫学分野で活躍する研究者が多数、所属していることで知られている。
ISEEから日本政府への書簡
http://www.iseepi.org/documents/Fukushimaletter.pdf
津田敏秀教授をはじめとする岡山大学の研究チームの論文
http://journals.lww.com/epidem/Abstract/publishahead/Thyroid_Cancer_Dete...
津田教授の論文に対するレター
名古屋大学鈴木貞夫教授
長崎大学高村昇教授
福島県立医大高橋秀人教授
マンチェスター大学Wakeford, Richard教授
ジョージタウン大学Jorgensen, Timothy J准教授
長崎大学柴田義貞教授
Körblein, Alfred教授
津田敏秀博士らの論文の方法の誤りを指摘したLetterが「Epidemiology」誌電子版に掲載されました(福島県立医大県民健康管理センター見解)
http://fukushima-mimamori.jp/news/2016/02/000248.html
上記レターに対する津田教授のコメント
| 国際環境疫学会・会長から日本政府に対する書簡(仮訳) 環境省総合環境政策局環境保健部長 北島智子殿 福島県保健福祉部県民健康調査課課長 小林弘幸殿 環境大臣 丸川珠代殿 環境疫学者の組織として世界最大の専門家集団である「国際環境疫学学会(ISEE)」は、環境疫学者を代表し、福島県民における甲状腺がんの発症リスクが、想定よりもはるかに大きいと示した最近の科学的証拠について憂慮しています。 最近発表された研究では、福島県民における甲状腺がんの発生リスクが、日本の他の地域と比較して12倍高いと示されています。これは、公開された論文へのコメンタリーでも指摘されていたように、例外的に高いリスクです。この研究は、福島原子力発電所事故に伴う地域住民に対する長期的な影響について追跡調査するには、適切なデータや研究が欠如していることを懸念して、実施されているものです。 2015年9月にサンパウロで開催されたISEE年次総会の特別シンポジウムにおいて、この論文に先駆けた研究結果が発表されました。シンポジウムにおける議論において、学会メンバーは、福島原発事故の健康影響の続報に関して大きな科学的関心を示しました。 この研究は、事故によって影響を受けた集団に対し、甲状腺がんの早期発見・早期治療を可能にするための、継続的かつ体系的なスクリーニングの必要性を示しています。そのような前向き研究は、影響を受けた集団への直接的な利益に加え、電離放射線のリスクに関する国際的知見を構築するために重要な価値があります。 私たちは、国民の利益を守る利害関係者としての日本政府に対し、福島県民の健康を科学的に記録して追跡するための一連の方策を構築し、2011年に起きた事故によるリスクに対する理解を深め、より信頼度の高いリスク推定をするよう要請します。 事故後に環境中に残留している可能性のある放射線への集団の被ばくを詳細に追跡することは、科学的および予防的な理由で必要であり続けると考えています。そのような研究は、原子力事故の健康影響に関する世界的な知識体系にへの貴重な貢献となり、また影響を受けた集団におけるリスク低減策も提供することでしょう。 ISEEは、学会メンバーの専門知識を活用することにより、必要な活動を支援・支持することができます。日本政府が、ISEEが独立した国際専門家組織として関与することを構想できるのか、そしてどのような関与を構想されているのかについて、私たちは関心を寄せています。この手紙に関する見解と、またこの重要な問題に関する将来的な計画について、日本政府からご返信いただけると幸いです。 1月22日 フランシーヌ・ラディン博士 ISEE会長 |
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