
最初に断っておきますが、子どもの権利を守るといううちの事務所のコンセプトからいって、教育委員会にはしょっちゅう煮え湯を飲まされています。
とくに、うちの地元の教委は「鉄板」という異名のある、鈍いというか、権力的というか、動かざること山の如き組織でして、私個人としては教育委員会に対する絶望感や怒りは半端ないものがあります。
だからこそ、大津のいじめ事件では大津の教育委員会や教育長に対する怒りが爆発しました。
マジで理解不能 電力会社のやらせ意見聴取会と細野原発相と大津市教育長の「不思議な危機管理感覚」
大津の中学生いじめ自殺事件で驚いた教育長の一言 そして教育者と司法は今まで何をやってきたのか
かといって、中央の文科省を信頼しているかというとそんなことは無理なわけです。
福島原発後、せっかくのSPEEDIの情報を公開せず福島の人々に不要な被曝をさせたり、子どもたちに年間5ミリシーベルトの放射線に耐えろと強要するような省庁が教育問題をつかさどっているのは本当に悲劇だと思います。
文科省がいじめ問題でできることはいじめ調査の基準つくり 政治家と官僚のパフォーマンスは要らない!
子どもたちが給食を食べて内部被曝することを容認する文科省は存在価値がない
他方、大津のいじめ事件隠ぺい、桜宮高校の体罰事件だけではなく、各地で教育委員会の不祥事がこれでもかというくらいに明らかになっています。
2012年に行われた高等学校教科書の採択で、東京都教育委員会は実教出版の新課程用『高校日本史A』を採択させないように高等学校長などに圧力をかけ、現場の希望する教科書を採択させないという前代未聞の妨害行為を行いました。しかも都教委は、この暴挙を行った事実を認めた上で、
「各学校が適正に教科書の選定業務 を行うことができるよう、担当課が必要な指導を行うことは、当然のこと」
などと開き直っています。
同じく東京都教委は、高校日本史副読本「江戸から東京へ」来年度版で、関東大震災(1923)での朝鮮人虐殺に関する記述から「虐殺」などの記述を修正し、現行版の「大震災の混乱のなかで数多くの朝鮮人が虐殺された」を、「碑には、大震災の混乱のなかで、『朝鮮人の尊い命が奪われました』と記されている」と変更してしまいました。
さらに、大阪市立汎愛高校では、柔道の授業中に顧問の男性教諭が女子生徒に体罰をしており、しかも報告を受けた市教育委員会が半年以上、対応を放置していたことがわかりました。橋下大阪市長は2013年2月1日に
「市教委が機能していない。政治介入と言われても、僕の権限の範囲で解体的に作り直す」
「大阪市も、大津市も教委は腐っている。政治的な力が排除されたままでは好き放題になる。自民党と協力しながら教委制度を解体する」
と述べましたが、次々に明るみに出る不祥事・失態を見れば、橋下市長の突破力に期待する方も多いのは無理もないことだと思います。
そもそも、教育委員会は教育の政治からの中立性を保つために存在しているのに、都教委のように教育委員会自体が政治的になってしまうと手に負えませんし、教育は継続性と安定性が大事だからこそ教育委員会という独自組織を作って任せているのに、継続的に安定して体罰やいじめを隠ぺいしているのでは、現場の生徒たちは窒息してしまいます。
桜宮高校の体罰事件を解きほぐす
桜宮高校の体育科入試中止のような、募集続行のような、何も解決しない「すばらしい大人の決定」
15の春を泣かせ続ける橋下市長の強権姿勢が体罰の実態調査と対策をできなくしてしまった
教育委員会の組織のイメージ 文科省HPより
しかし、仮に、橋下市長の言うように教育委員会制度を解体して、地方の首長の直轄の普通の行政組織が教育を担当することになると、それはそれで致命的な弊害がさまざまにあります。
1 多数派を占める首長の政治的意思がそのまま教育現場に反映して、教育内容の中立性がおびやかされる(東京の都教委がやっているような教育内容への介入を、政治家がしょっちゅうやりかねない)。たとえば、橋下市長が今回曲がりなりにも体罰容認から禁止に変わったからよかったのですが、別の首長なら逆の場合だってありうるわけです。そういう場合には取り返しのつかないことになります。
2 教育という極めて専門性が高く、繊細で、継続性・安定性が特に求められる分野が、時の首長の感覚に影響されかねない(「教育は、子どもの健全な成長発達のため、学習期間を通じて一貫した方針の下、安定的に行われることが必要。
また、教育は、結果が出るまで時間がかかり、その結果も把握しにくい特性から、学校運営の方針変更などの改革・改善は漸進的(徐々に進むこと)なものであることが必要」 文科省HPより)
3 橋下市長のような行動力のない普通の首長の場合、問題が起こっても何も対処しないということになりかねない
というような弊害があります。
最近、「決められる民主主義」ということが言われ、首相公選制とか、参議院廃止とか、討論と妥協の過程で少数者の人権をも保障する立憲民主主義を理解しない議論を見かけるのですが、政治においても権力分立による抑制と均衡(チェック アンド バランス)が非常に重要です。
たとえば、橋下市長と第三者機関が思想調査アンケートを取ったときに、後に労働委員会から人権侵害で違法であるとストップがかかり、これはやばいということでせっかく取ったアンケート用紙を破棄することになったのですが、教職員4000人分だけは市教委が違法だとストップをかけたのでアンケートが取れなかったことがありました。それで、橋下氏も住民訴訟の返還請求額がずいぶん減って助かっているのです。
首長の思い通りにならない抑制と均衡のシステムが働くことは、首長にとってはいらいらすることもありますが、住民の人権保障のためにはなくてはならない安全弁なんですね。
また裁判の被告になる橋下市長 大阪市職員の思想調査アンケートは憲法違反 住民訴訟提起は必至 続報あり

まして、教育ではかたや体罰やいじめのような命にもかかわる人権侵害については即時に適正な処理ができなければいけないという要請とともに、他方、継続性・安定性が大切で改善もゆっくりと時間をかける必要の両方が求められます。今回のような重大事件にうまく対処できないからと言って、首長と子どもの間の組織を取っ払ってしまうようなことは、肝心の日常の教育にとっては非常に危険です。
文科省、首長、都道府県教委、市町村教委、学校長・教職員、保護者がほどよい権限分配で、協力と抑制・均衡をはかり、子どもの権利を保障していくことが大事なのです。
そこで、教育委員会改革の基本は、権限と責任を明確にすること、その際、上に列記した関係者の右の方、つまり生徒に近い方にできるだけ権限と責任を持たせることになるだろうと思います。橋下市長の言うように、現場を知っている人間にできるだけ決定させるということですね。
続きます。
体罰はこうやればなくせる 子ども未来法律事務所通信27~体罰に対する誤解を解く~
本当は論文になるほど難しい問題なんですが、なんとかわかりやすく。
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| 1.教育委員会制度の概要 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 2.教育委員会の設置状況 (平成23年5月1日現在 出典:教育行政調査(中間報告)) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 3.教育委員の状況 (平成23年5月1日現在、報酬は平成23年4月1日現在 出典:教育行政調査(中間報告)、地方公務員給与の実態) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 4.教育長の状況 (平成23年5月1日現在、報酬は平成23年4月1日現在 出典:教育行政調査(中間報告)、地方公務員給与の実態) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 5.教育委員会の事務 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(初等中等教育局企画課)


