
米軍普天間飛行場の移設先とされる同県名護市辺野古の埋め立て承認を取り消したのは違法だとして、取り消しの撤回を求めて国が翁長雄志知事を訴えた代執行訴訟の第1回口頭弁論が2015年12月2日、福岡高裁那覇支部で開かれました。
代執行とは、沖縄県の権限を国が取り上げてしまい、沖縄県の代わりに国が行政を執行してしまうという、「それをやったらおしまい」な制度です。

この法廷に、翁長知事が出廷して意見陳述し、その冒頭で、
「歴史的にも現在においても、沖縄県民は自由・平等・人権・自己決定権をないがしろにされてまいりました。
私はこのことを「魂の飢餓感」と表現しています。
政府との間には多くの課題がありますが、「魂の飢餓感」への理解がなければ、それぞれの課題の解決は大変困難であります。」
と述べました。
この、魂の飢餓感、という言葉は初めて使われた言葉ではなく、8月に菅官房長官が沖縄を訪問した際にも、翁長知事は
「県民の気持ちには魂の飢餓感があり、それに理解がなければ個別の問題は難しい」
と話したのですが、安倍政権は理解できませんでした。
司法はこれを理解できるのでしょうか。


「沖縄が米軍に自ら土地を提供したことは一度もありません。
そして戦後70年、あろうことか、今度は日本政府によって、海上での銃剣とブルドーザーを彷彿(ほうふつ)させる行為で美しい海を埋め立て、私たちの自己決定権の及ばない国有地となり、そして、普天間基地にはない軍港機能や弾薬庫が加わり、機能強化され、耐用年数200年とも言われる基地が造られようとしています。」
「米軍基地関連収入は、終戦直後にはGDP(=国内総生産)の約50%。基地で働くしか仕方がない時代でした。日本復帰時には約15%、最近は約5%で推移しています。経済の面では、米軍基地の存在は今や沖縄経済発展の最大の阻害要因になっています。」
「沖縄は基地経済で成り立っているというような話は今や過去のものとなり、完全な誤解であります。」
「沖縄は他県に比べて莫大(ばくだい)な予算を政府からもらっている、だから基地は我慢しろという話もよく言われます。年末にマスコミ報道で沖縄の振興予算3000億円とか言われるため、多くの国民は47都道府県が一様に国から予算をもらったところに、沖縄だけさらに3000億円上乗せをしてもらっていると勘違いをしてしまっているのです。」

「この裁判で問われているのは、単に公有水面埋立法に基づく承認取り消しの是非だけではありません。
戦後70年を経たにもかかわらず、国土面積のわずか0.6%しかない沖縄県に、73.8%もの米軍専用施設を集中させ続け、今また22世紀まで利用可能な基地建設が強行されようとしています。
日本には、本当に地方自治や民主主義は存在するのでしょうか。
沖縄県にのみ負担を強いる今の日米安保体制は正常と言えるのでしょうか。国民の皆さますべてに問いかけたいと思います。
沖縄、そして日本の未来を切り開く判断をお願いします。」
翁長知事の魂の意見陳述。
全文を是非お読みくださいませ。
琉球新報より、翁長知事が提出した意見書の全文。
代執行訴訟 翁長知事陳述書全文
法廷で陳述した意見陳述は以下の通りです。
沖縄のアメリカ軍普天間基地の移設先をめぐり、名護市辺野古の海の埋め立て承認取り消しを撤回するよう、国が沖縄県を訴えた裁判が2日、福岡高裁那覇支部で始まり、冒頭、翁長知事が意見陳述を行った。
記事全文
【翁長知事の意見陳述全文】(前編)
沖縄県知事の翁長雄志でございます。本日は、本法廷において意見陳述する機会を与えていただきましたことに、心から感謝申し上げます。
私は、昨年の県知事選挙で「オール沖縄」「イデオロギーよりアイデンティティー」をスローガンに、保守・革新の対立を乗り越えて当選をいたしました。本件訴訟の口頭弁論にあたり、私の意見を申し上げます。
歴史的にも現在においても、沖縄県民は自由・平等・人権・自己決定権をないがしろにされてまいりました。私はこのことを「魂の飢餓感」と表現しています。政府との間には多くの課題がありますが、「魂の飢餓感」への理解がなければ、それぞれの課題の解決は大変困難であります。
簡単に沖縄の歴史をお話ししますと、沖縄は約500年に及ぶ琉球王国の時代がありました。日本と中国・朝鮮・東南アジアを駆けめぐって大交易時代を謳歌(おうか)しました。琉球は1879年、今から136年前に日本に併合されました。これは琉球が強く抵抗したため、日本政府は琉球処分という名目で軍隊を伴って行われたのです。
併合後に待ち受けていたのが70年前の第二次世界大戦、国内唯一の軍隊と民間人が混在しての凄惨(せいさん)な地上戦が行われました。沖縄県民約10万人を含む約20万人の人々が犠牲になりました。
戦後は、ほとんどの県民が収容所に収容され、その間に強制的に土地を収用され、収容所からふるさとに帰ってみると、普天間飛行場をはじめ、米軍基地に変わっていました。その後も、住宅や人が住んでいても「銃剣とブルドーザー」で土地を強制的に接収されました。
1952年、サンフランシスコ講和条約による日本の独立と引き換えに、沖縄は米軍の施政権下に置かれ、日本国民でもアメリカ国民でもない無国籍人となり、当然、日本国憲法の適用もなく、県民を代表する国会議員を1人も国会に送ったことはありませんでした。犯罪を犯した米兵がそのまま帰国することすらあった治外法権とも言える時代でした。
ベトナム戦争のときは、沖縄からB52爆撃機の出撃をはじめ、いろいろな作戦が展開されており、沖縄は日米安保体制と、日本の平和と高度経済成長を陰で支えてきたわけです。
しかし、政府は一昨年、サンフランシスコ講和条約が発効した4月28日を「主権回復の日」として式典を開催し、そこでは万歳三唱まで行われたのです。沖縄にとっては悲しい、やるせない式典でした。全く別々の人生を歩んできたような気がします。
1956年、米軍の施政権下で沖縄の政治史に残ることが起きました。プライス勧告といって、銃剣とブルドーザーで強制接収した土地を、実質的な強制買い上げをするという勧告が出されました。当時、沖縄は大変貧しかったので、喉から手が出るほどお金が欲しかったはずですが、県民は心を一つにしてそれを撤回させました。これによって、基地のあり方に、沖縄の自己決定権の主張できる素地(そじ)がつくられ、私たちに受け継がれているのです。
沖縄が米軍に自ら土地を提供したことは一度もありません。そして戦後70年、あろうことか、今度は日本政府によって、海上での銃剣とブルドーザーを彷彿(ほうふつ)させる行為で美しい海を埋め立て、私たちの自己決定権の及ばない国有地となり、そして、普天間基地にはない軍港機能や弾薬庫が加わり、機能強化され、耐用年数200年とも言われる基地が造られようとしています。
今、沖縄には日本国憲法が適用され、昨年のすべての選挙で辺野古新基地反対の民意が出たにもかかわらず、政府は建設を強行しようとしています。米軍基地に関してだけは、米軍施政権下と何ら変わりありません。米軍施政権下、キャラウェイ高等弁務官は沖縄の自治は神話であると言いましたが、今の状況は、国内外から日本の真の独立は神話であると思われているのではないでしょうか。
辺野古新基地は、完成するまで順調にいっても約10年、場合によっては15年、20年かかります。その期間、普天間基地が動かず、危険性が放置される状況は固定化そのものではないでしょうか。
本当に宜野湾市民のことを考えているならば、前知事の埋め立て承認に際して、総理と官房長官の最大の約束であった普天間基地の5年以内の運用停止を、承認後、着実に前に進めるべきではなかったでしょうか。
しかし、米国からは当初からそんな約束はしていない、話も聞いたこともないと言われ、前知事との約束は、埋め立て承認をするための空手形ではなかったのか、それを双方承知の上で埋め立て承認がなされたのではないか、いろいろな疑問が湧いてきます。
日本政府に改めて問いたいと思います。普天間飛行場は世界一危険だと、政府は同じ言葉を繰り返しているが、辺野古新基地ができない場合、本当に普天間基地は固定化できるのでしょうか。(後編に続く)
沖縄のアメリカ軍普天間基地の移設先をめぐり、名護市辺野古の海の埋め立て承認取り消しを撤回するよう、国が沖縄県を訴えた裁判が2日、福岡高裁那覇支部で始まり、冒頭、翁長知事が意見陳述を行った。
記事全文
【翁長知事の意見陳述全文】(後編)
次に基地経済と沖縄振興策について述べたいと思います。一般の国民もそうですが、多くの政治家も、「沖縄は基地で食べているんでしょう。だから基地を預かって振興策をもらったらいいですよ」と沖縄に投げかけます。この言葉は、「沖縄に過重な基地負担を強いていることの免罪符」と、「沖縄は振興策をもらっておきながら基地に反対する、沖縄は甘えるな」と言わんばかりです。これくらい真実と違い、沖縄県民を傷つける言葉はありません。
米軍基地関連収入は、終戦直後にはGDP(=国内総生産)の約50%。基地で働くしか仕方がない時代でした。日本復帰時には約15%、最近は約5%で推移しています。経済の面では、米軍基地の存在は今や沖縄経済発展の最大の阻害要因になっています。
例えば、那覇市の新都心地区、米軍の住宅地跡で215ヘクタールありますが、25年前に返還され、当時は軍用地料等の経済効果が52億円ありました。私が那覇市長になって、15年前から区画整理を始め、現在の街ができました。経済効果としては52億円から1634億円と32倍、雇用は170名程度でしたが、今は1万6000名、約100倍です。税収は6億から199億円と33倍に増えています。沖縄は基地経済で成り立っているというような話は今や過去のものとなり、完全な誤解であります。
沖縄は他県に比べて莫大(ばくだい)な予算を政府からもらっている、だから基地は我慢しろという話もよく言われます。年末にマスコミ報道で沖縄の振興予算3000億円とか言われるため、多くの国民は47都道府県が一様に国から予算をもらったところに、沖縄だけさらに3000億円上乗せをしてもらっていると勘違いをしてしまっているのです。
沖縄はサンフランシスコ講和条約で日本から切り離され、27年間、各省庁と予算折衝を行うこともありませんでした。ですから日本復帰に際して沖縄開発庁が創設され、その後、内閣府に引き継がれ、沖縄県と各省庁の間に立って調整を行い、沖縄振興に必要な予算を確保するという、予算の一括計上方式が導入されたのです。沖縄県分は年末にその総額が発表されるのに対し、他の都道府県は独自で予算折衝の末、数千億円という予算を確保していますが、各省庁ごとの計上のため、沖縄のように発表されることがないのです。
実際に、補助金等の配分額で見ると、沖縄県が突出しているわけではありません。例えば、地方交付税と国庫支出金等の県民一人当たりの額で比較しますと、沖縄県は全国で6位、地方交付税だけで見ると17位です。
都道府県で国に甘えているとか甘えていないとかと、言われるような場所があるでしょうか。残念ながら、私は改めて問うていきたいと思います。沖縄が日本に甘えているでしょうか。日本が沖縄に甘えているのでしょうか。ここを無視してこれからの沖縄問題の解決、あるいは日本を取り戻すことなど、できないと確信をします。
沖縄の将来あるべき姿は、万国津梁の精神を発揮し、日本とアジアの架け橋となること、ゆくゆくはアジア・太平洋地域の平和の緩衝地帯となること。そのことこそ、私の願いであります。
この裁判で問われているのは、単に公有水面埋立法に基づく承認取り消しの是非だけではありません。戦後70年を経たにもかかわらず、国土面積のわずか0.6%しかない沖縄県に、73.8%もの米軍専用施設を集中させ続け、今また22世紀まで利用可能な基地建設が強行されようとしています。日本には、本当に地方自治や民主主義は存在するのでしょうか。沖縄県にのみ負担を強いる今の日米安保体制は正常と言えるのでしょうか。国民の皆さますべてに問いかけたいと思います。
沖縄、そして日本の未来を切り開く判断をお願いします。

日本テレビも全文掲載していたのには驚きました。
それだけ大きな「事件」なんですね。
いま、日本に暮らすすべての人々の魂が問われている。
よろしかったら大変お手数とは存じますが、上下ともクリックしてくださると大変うれしいです!
| 翁長雄志 (著), 寺島実郎 (著), 佐藤優 (著), 山口昇 (著), 朝日新聞取材班 (著) | |
| 朝日新聞出版 |
2015年7月29日東京。聴衆が固唾を飲んで聞き入った、白熱のシンポジウムを完全収録!
その発言を生で聞こうと集まった人々が見守る先にいたのは、翁長雄志・沖縄県知事。
| 新藤健一 編著 | |
| 七つ森書館 |
辺野古の海は、驚異的に美しいですが、そこへアジアでも最大という巨大な要塞ができる──どうしてでしょうか。
ジュゴンやアオサンゴの大群落などが、お花畑のように、あるいは森林のように……、たくさんの魚たち。
100点あまりのカラー写真と芥川賞作家・目取真俊が問題に迫ります。
| 琉球新報「日米廻り舞台」取材班 (著) | |
| 青灯社 |
県外・海外移設を可能と考えるアメリカの専門家・元高官たちと、辺野古に固執する日本政府―。
全国紙が伝えなかった問題の深層を総力取材でさぐり大反響を呼んだ「琉球新報」連載の書籍化。
米軍基地問題をめぐり国から訴えられた沖縄県の翁長雄志知事が、法廷に立った。「国民の皆様すべてに問いかけたい」。沖縄の歴史と現状にどう向き合うかを訴えた言葉は、沖縄の内外にどう響くのか。
「県民の思いを背に、沖縄の主張をして参ります」
裁判所前の公園に数百人が集まった支援集会で翁長雄志知事はこう叫び、裁判所に足を踏み入れた。
国、県それぞれ約20人の関係者や代理人弁護士が向かい合う法廷。午後2時に裁判が始まると、最初に翁長氏の陳述が許された。
「歴史的にも現在も沖縄県民は自由、平等、人権、自己決定権をないがしろにされてきた。私はこれを『魂の飢餓感』と表現している」。翁長氏は表情を変えず、裁判官3人の顔を順に見つめ、時折手持ちの書類に目を落としながら語った。
琉球王国が武力を背景に日本に併合されたことや70年前の地上戦、そこから始まった米軍施政下で県民の住まいが「銃剣とブルドーザー」で強制的に接収され、基地にされていった歴史をたどる。「今度は日本政府による海上での『銃剣とブルドーザー』で美しい海が埋め立てられようとしている。米軍基地だけは、米軍施政権下と何ら変わりない」
ほぼ満席の傍聴者が静かに聴き入る中、翁長氏の言葉は、県外の国民にも向けられた。「米軍基地は今や沖縄経済発展の最大の阻害要因。沖縄は基地経済で成り立っているという話は過去のもので完全な誤解だ」
10分余りの陳述が終わると、翁長氏は裁判官らに向かって一礼。自席に向かう翁長氏に向け、多見谷寿郎裁判長は「分かりやすい説明でした。ありがとうございます」と声をかけた。(木村司、吉田拓史)
■大田元知事「沖縄の立場訴えることは大きな意義」
法廷で翁長雄志知事は、過重な基地負担の歴史を訴え、沖縄を「日本とアジアのかけ橋、アジア・太平洋地域の平和の緩衝地帯」とする思いを語った。そして、「日本には、本当に地方自治や民主主義は存在するか」と問うた。
「当然の主張です」。沖縄国際平和研究所理事長の大田昌秀さん(90)は言う。沖縄県知事だった20年前、自身も福岡高裁那覇支部の法廷で意見陳述に立った。「勝ち負けではない。法廷で政府とぶつかり、沖縄の立場と歴史を訴えることには大きな意義がある」と話す。
日米が米軍普天間飛行場の返還合意へ動くきっかけとなった1995年の米兵による少女暴行事件の直後だった。大田さんは、地主が米軍用地として貸すことを拒む民有地の強制使用に必要な土地・物件調書への「代理署名」を拒み、国から訴えられた。
当時の意見陳述や尋問で大田さんは、沖縄の近現代史をひもとき、「平和の交流拠点となる国際都市」づくりの理想を語った。そして「日本の民主主義が問われる」と訴えた。だが、敗訴した。
当初から「政府との訴訟で簡単には勝てない」と感じていたが、一つの考えがあったという。「沖縄の現状を発言していかなければ基地をめぐる構造的差別はなくならない。法廷を通じて本土の皆さんに沖縄の問題が理解される可能性があると思った」。本土から応援の声や手紙が多数届き、手応えを感じたという。
また巡ってきた国との法廷闘争。「こと安保条約や外交が関わると、日本の司法は行政の主張に沿った判断を下す。そもそも不利な裁判だ」。知事時代に対立した橋本政権では、沖縄の苦難に理解のある閣僚がいたが、今の安倍政権にはいないとも感じる。
それでも、知事が法廷から発信する意義は変わらないと思っている。辺野古移設を止めようと続く県民の運動。それに呼応した県外の学生らの「辺野古ノー」の声。「政府に対する不満や怒りは、かつてないほど高まっている。国民世論に訴え、意識を変えていく。翁長知事はそんなメッセージを発信していくべきだ」(田中久稔)
「沖縄のみ負担は正常か 国民に問いたい」 辺野古代執行訴訟始まる
2015年12月3日 東京新聞朝刊
|
口頭弁論前の支援者集会で多くの市民らから声援を受け、拳をあげる翁長雄志知事=2日、那覇市樋川の中央公園で(普久原裕南撮影) |
![]() |
米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設先、名護市辺野古(へのこ)の埋め立て承認を翁長雄志(おながたけし)知事が取り消したのは違法として、国が撤回を求めた「代執行」訴訟の第一回口頭弁論が二日、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎(たみやとしろう)裁判長)で開かれた。翁長氏は意見陳述し、沖縄が過重な基地負担と犠牲を強いられてきた歴史を強調した。国は承認の適法性を主張し、迅速な審理終結を求め、県は訴えを退けるよう要求。国と県の異例の法廷闘争が始まった。
翁長氏は、住民を巻き込んだ沖縄戦や、米軍に土地を強制接収され、戦後七十年続く基地負担の実態を説明した。「政府は辺野古移設反対の民意にもかかわらず移設を強行している。米軍施政権下と何ら変わりない」と批判し「(争点は)承認取り消しの是非だけではない。日本に地方自治や民主主義はあるのか。沖縄にのみ負担を強いる安保体制は正常か。国民に問いたい」と訴えかけた。
国側は主張の要旨を読み上げ、まず「基地のありようにはさまざまな意見があるが、(法廷は)議論の場ではない」と指摘。「行政処分の安定性は保護する必要があり、例外的な場合しか取り消せない」と強調した。移設が実現しなければ普天間飛行場の危険性が除去されず、日米関係が崩壊しかねないなどの大きな不利益が生じるため、取り消しは違法と訴えた。県が主張する前知事による埋め立て承認の法的瑕疵(かし)にも反論。「県は辺野古に移設する根拠が乏しいと言うが、そもそも国家存亡にかかわることを知事が判断できるはずがない。環境保全も十分配慮した」と説明した。
県側は(1)辺野古移設強行は自治権の侵害で違憲(2)埋め立て承認は環境への配慮が不十分で瑕疵がある(3)代執行は他に手段がない場合の措置で、国は一方で取り消し処分の効力を停止しているため、代執行手続きを取れない-と訴えた。
判決で国が勝訴すると翁長氏が拒否しても国土交通相が取り消し処分の撤回を代執行する。次回弁論は来年一月八日。裁判長は、県側が申請した稲嶺進名護市長ら八人の証人尋問などの採否を、同月二十九日の第三回弁論で明らかにする。
◆翁長知事意見陳述 県民の思い伝える
沖縄県の翁長雄志知事は二日の「代執行」訴訟の法廷で、米軍基地の重い負担に対する県民の心情を、歴史をひもときながら訴えた。辺野古移設反対を公約に、知事就任から約一年。「集大成」と位置付けた舞台で、法律論で勝訴を得ようとする政府に対し、日米安保体制の在り方という政治的な問題を持ち出して「日本に地方自治や民主主義は存在するのか」と国民全体に問いかけた。
「歴史的にも現在も、県民は自由、平等、人権、自己決定権をないがしろにされてきた。私はこのことを『魂の飢餓感』と表現している。政府との間には多くの課題があるが、『魂の飢餓感』への理解がなければ、課題の解決は大変困難」
こう切り出した翁長氏は、陳述のほぼ半分を歴史の説明に費やした。その意図について、裁判所に提出した書面で「過去の話はやめろと言われても、今ある基地の大きさを見ると、それを言わずして未来は語れない」と記していた。
県民の四人に一人が命を落とした七十年前の沖縄戦。生き残った県民が収容所にいる間に米軍は広大な軍用地を確保し「銃剣とブルドーザー」と呼ばれる強制的な土地収用で基地を建設した。日本本土は一九五二年に主権回復した一方、沖縄は七二年まで米軍施政権下に。その状況を「日本国民でも米国民でもない無国籍人。当然、憲法の適用もない」と例示した。
十一分間で読み上げた陳述は約三千四百字。閉廷後、県庁で報道陣に囲まれると「裁判官から『分かりやすい話だった』と言われた。思いは伝えられたかな」と充実感をにじませた。
2015年12月3日 05:30 沖縄タイムス社説
「この裁判で問われているのは、単に公有水面埋立法に基づく承認取り消しの是非だけではありません」「日本には本当に地方自治や民主主義は存在するのでしょうか。沖縄県にのみ負担を強いる今の日米安保体制は正常といえるのでしょうか」
名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立て承認の取り消しを違法として、国が翁長雄志知事を相手に起こした代執行訴訟の第1回口頭弁論が福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)で開かれ、翁長知事が意見陳述した。
国と県の異例の法廷闘争の始まりである。翁長知事の意見陳述は約10分と短かったが、住民を巻き込んだ沖縄戦や戦後70年続く基地負担に対する県民の大多数の思いを凝縮し分かりやすく伝えた。
開廷前には近くの公園で翁長知事を後押しする2千人(主催者発表)の集会が開かれ、「県民の思いを胸に、しっかり沖縄の主張をする」と決意表明していた。
冒頭に引用した翁長知事の言葉は、戦後沖縄の基地形成をめぐる歴史を踏まえ、米軍基地の過重負担、日本の民主主義を問う発言だ。
戦後、沖縄は本土とは全く違う道を歩んできた。県民が収容所に入れられている間に米軍に強制的に土地を接収され、「銃剣とブルドーザー」によって土地を奪われた。
1952年にサンフランシスコ講和条約で日本から切り離され、沖縄は米軍施政権下に置かれた。日本国憲法の適用もなかった。
米軍基地の過重負担は、戦後70年たったいまも、国土面積の0・6%しかない沖縄県に73・8%の米軍専用施設が集中している現状が物語る。沖縄と本土の極端な不均衡は何も改善されていない。
それなのに今度は政府が新基地建設を強行しようとしているのである。こんな理不尽なことはない。翁長知事が言うように「米軍施政権下と何ら変わりない」のである。
選挙は民主主義の根幹を成すとともに、民意の表出である。昨年の名護市長選、知事選、衆院選と相次いだ選挙は辺野古新基地に反対する候補がすべて勝利した。
一連の選挙の争点は前知事が埋め立て承認をしたことに対する審判だった。知事選で10万票の差で翁長知事が誕生し県民の明確な意思が示されたにもかかわらず、新基地を押し付けてくるのは民主主義国家といえない。
■ ■
翁長知事の問いかけは、本土側の無理解や誤解にも向けられた。基地経済と沖縄振興策に対し「沖縄は基地で食べているんでしょう。だから基地を預かって振興策をもらったらいいですよ」という本土の人や政治家の言葉に反論した。米軍基地関連収入が県経済に占める割合は約5%にすぎず「今や沖縄経済発展の最大の阻害要因」と言い切り、米軍返還跡地の飛躍的な経済効果を具体的なデータを挙げて示した。翁長知事は「都道府県で国に甘えているとか甘えていないとかと、いわれる場所があるでしょうか」と疑問を投げかけた。
代執行訴訟で県は国に訴えられている形だが、新基地建設をめぐる政府のやり方を翁長知事が厳しく問うているのである。被告席に座っているのはむしろ国である。
意見陳述で翁長知事が「今の状況は、国内外から日本の真の独立は神話であると思われているのではないでしょうか」と指摘する通りだ。
■ ■
弁論で国側は「取り消しは例外的な場合しかできず違法である。日米関係に大きな不利益が生じる」などと主張している。県側は「民意に反して新基地建設を強行することは自治権を侵害し憲法違反である」「公有水面埋立法は外交や国防といった要素を特別扱いしない」などと正当性を訴えている。
翁長知事は意見陳述の最後に裁判所に「沖縄、そして日本の未来を切り拓(ひら)く判断をしてほしい」と要望した。
県側は稲嶺進名護市長や環境、安全保障の専門家ら8人を証人申請している。民主主義、地方自治、環境、抑止論など論点は多岐にわたる。
福岡高裁那覇支部は形式的な審理にとどまらず、これらの論点にも踏み込み、実質的な審理をしてもらいたい。
よろしかったら大変お手数とは存じますが、上下ともクリックしてくださると大変うれしいです!


人気ブログランキング



