韓国の最高裁が日本企業に元徴用工への賠償を命じた判決をめぐり、菅官房長官は2018年11月8日の
「日韓請求権協定は、司法府も含めて当事国全体を拘束するものであり、大法院の判決が確定した時点で、韓国による国際法違反の状態が生じている、このように考えます」
と述べ、
「判決は協定に明らかに反しており、極めて遺憾だ。韓国政府に、国際法違反の状態の是正を含め、ただちに適切な措置を取ることを求めている」
と語りました。
これらの菅官房長官の発言には1つ正しいところがあり、3つ間違っているところがあるのですが、お分かりになるでしょうか?
まず、菅官房長官の発言で珍しく正しいところから。
この日韓請求権協定のような条約は一定の手続きを経ると当事国それぞれの国内でも法規範としての性格を持つようになります。
裁判所は憲法、法律、条約などの法規範を解釈してこれを具体的な事件に当てはめて事件を解決する機関ですから、韓国の裁判所も日韓請求権協定にも基づいて、この元徴用工の方々が訴えた裁判の判決を出さなければならないのは当然です。
その意味では韓国の裁判所もこの協定に拘束されますから、もちろん、韓国の最高裁も詳細に同協定を解釈して、本判決を出しています。
では、菅官房長官がいつものように頓珍漢な間違いをしている第1の点はなにか?
それは、日韓請求権協定のような条約など法規範の解釈を国内で最終的にする機関は裁判所だということです。
つまり、韓国の裁判所の判決は日韓請求権協定に反しているというコメントはナンセンスです。
法解釈する最終責任者は近代憲法を持っている国ではどこでも裁判所です。立法府が法律を作り、行政府はその法律を執行し、司法府は問題が起きた時にその法律を解釈するのが仕事です。
日韓請求権協定のような法規範の中身を韓国内で最終的に判断するのは、韓国の行政府でもなく、ましてや菅官房長官ら日本の政府でもなく、韓国国内では韓国の裁判所なのです。
一審の判断に文句があってもそれに異議申し立てができるのは二審の裁判所に対してです。
それが最終的に最高裁で判断が出たのですから、日本政府が文句を言うのがおかしいのです。
よくわかってるじゃん(笑)
第2に間違っているのは、これはすでに書いたことがあるのですが、韓国内でも条約は憲法より法規範として下位にあるということです。
つまり、効力の強さから言うと、
憲法>条約>法律
なんですね。
日韓請求権協定のような国と国との間の約束でも、それが憲法違反ですと無効とされます。なぜなら、憲法は国民の基本的人権を保障する法規範なので、憲法違反の条約を有効とすると国民の基本的人権が侵害されるからです。
今回の韓国最高裁の判決によると、日韓請求権協定でも違法な植民地支配による被害者の慰謝料請求権は放棄されておらず、消滅していないとのこと。
もし、これを放棄・消滅させるような協定となれば、その部分は憲法が保障する財産権という基本的人権を侵害しますから、違憲無効となります。
法規範の最終解釈権者である最高裁がこの条約を憲法に適合するように解釈したのですから、韓国最高裁が日韓請求権協定に拘束されるから、この判決は同協定に反しているというコメントは完全に間違っているのです。
痛ましいことにこの日の判決を待たずに、4人の原告のうち3人が亡くなっています。
菅官房長官が、韓国の判決が日韓請求権協定に反しているから韓国政府が適切な処理をしなければならない、と発言したことの3番目の問題点は何か。
それは三権分立違反だということです。
韓国の裁判所、ましてや最高裁が日韓請求権協定という法規範を解釈して判断したのですから、韓国政府は当然これに従わなければならないのです。
日本でも例えば裁判所が衆議院の議員定数が法の下の平等に反するから違憲だと判決すれば、政府は是正措置をとるでしょう?
ですから、菅官房長官が韓国の裁判所の出した判決はおかしいから、韓国政府に適切な処置を取れと要求するのは、韓国内の三権分立に反します。
このように日本の行政権が韓国の裁判所の判決を是正しろと韓国の政府に文句ををつけるのは三権分立に反し、おまけに韓国政府に対する内政干渉でもあり、二重に違法なのです。その意味では4つおかしい点があるといっていいかな。
菅官房長官ら安倍政権の面々は、普段から日本の憲法も法律も判決も守る気がないからこのようなコメントをするのでしょう。
この判決に対する日本政府の対応について、韓国の外務省は、
「責任ある指導者が問題の根源を度外視したまま、韓国の国民感情を刺激する発言を継続的に行っている」
などとする声明を出していて、日韓関係の悪化が表面化しています。
日本は植民地支配の加害国なのですから当然です。
安倍首相のみならず、菅官房長官と河野外相の盗人猛々しくかつ法の基本を間違った発言は酷すぎますね。

菅官房長官って賢そうに見せていますけど、あんまり物事を深く考えてませんよね。
そうでないと安倍内閣の官房長官なんて長く務められないのでしょう。
100人にお一人がクリックしてくださるとネトウヨブログを抜かして1位に躍り出ます。
毎日一日一回でいいので、上下ともクリックしてくださると大変助かります!
にほんブログ村ランキング
人気ブログランキング
記者会見する菅義偉官房長官=8日午前、首相官邸
日韓関係の冷却ぶりが深刻さを増している。ここ最近、自衛艦の旭日旗掲揚問題などでぎくしゃくしていたが、韓国最高裁が日本企業に元徴用工への損害賠償を命じた判決をめぐる両国政府の非難の応酬が関係悪化に拍車を掛けた。事態の打開策は見えず、日本人拉致問題にも影を落とす。<下へ続く>
今年は「未来志向」をうたった日韓共同宣言から20年の節目だが、あつれきが強まったのは秋以降だ。韓国の閣僚は9月、慰安婦問題の日韓合意に基づく財団の解散方針を示唆。また、韓国は10月の国際観艦式で自衛艦に旭日旗を掲揚しないよう要請。日本側が拒否し、式典への艦艇派遣を見送る事態に発展した。
沈黙続ける韓国政府=徴用工判決から1週間-相次ぐ訴訟相談
この直後、韓国国会議員団が島根県・竹島に上陸。続けざまに韓国最高裁が元徴用工への賠償を命じる判決を出した。
韓国最高裁の判決に関し、
安倍晋三首相は「あり得ない判断」と反発。
河野太郎外相は「暴挙」「国際秩序に対する挑戦」と激しく非難した。一方、韓国の李洛淵首相は「日本政府指導者たちが過激な発言を続けている」と不快感を表明。対立は先鋭化しつつある。
関係悪化による影響が懸念されるのは拉致問題の行方。首相が意欲を示す日朝首脳会談に関し、韓国の文在寅大統領が橋渡し役となることも期待されていたからだ。冷却期間が長引けば、拉致問題が停滞しかねない。
とはいえ、元徴用工問題で日本側に譲歩する気はない。判決に対し、日本政府は「1965年の日韓請求権協定に反する」との立場だからだ。
菅義偉官房長官は8日の記者会見で、韓国側に「適切な措置」を取るよう要求した。
首相と文氏は、来週の東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議にそろって出席するが、政府内では日韓の2国間会談を見送るべきだとの声が強まっている。
毎日新聞 2018年11月8日 21時51分(最終更新 11月8日 22時15分)
河野太郎外相(左)と韓国の李洛淵首相
韓国最高裁が新日鉄住金に元徴用工への賠償を命じた判決を確定させたことを巡り、日韓両政府の批判の応酬が続いている。日本側が「国際秩序に対する挑戦」(河野太郎外相)と非難すると、韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相は「日本の指導者が過激な発言を続けている」と反論。関係冷却化は深刻だ。
日韓請求権協定は、問題の「完全かつ最終的」な解決を記しており、菅義偉官房長官は8日の記者会見でも「判決は協定に明らかに反しており、極めて遺憾だ。韓国政府に、国際法違反の状態の是正を含め、ただちに適切な措置を取ることを求めている」と語った。
安倍晋三首相は10月30日の判決直後に「あり得ない判断だ」と韓国政府に対応を求めたが、対応策は一向に示されない。いらだった河野氏が11月6日の会見で「判決は暴挙だ」と非難のトーンを上げると、韓国外務省は同日深夜に「過剰対応」「(韓国の)国民感情を刺激する発言を非常に懸念している」との声明を発表。李首相も7日に「深い憂慮」を示した。
韓国政府も判決を「既存の立場と異なる」と認めてはいる。だが日本側が求める「韓国政府による賠償肩代わり」などの検討には「時間がかかる」との立場で、日本の反発に神経をとがらせる。「首脳会談を開く雰囲気ではない」(日本外務省幹部)状況が当面続きそうだ。【秋山信一】