
自民党の憲法改正推進本部は2018年3月22日、安倍晋三首相の9条改正案に沿って、戦力不保持を定める2項を維持して
「自衛隊」
を明記する方向で取りまとめる方針を決めました。

この案では、従来の憲法9条1項、2項はそのままにしながら、新たに以下のような9条の2を設けることになっています。
もともとはこういう規定でした。
9条の2 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
② 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

9条の2を見ると、今ある自衛隊の存在を追認するだけだから、今までと何ら変わらないという自民党の説明が一見腑に落ちそうです。
しかし、今までと全く変わらないのなら、自衛隊を憲法に書く必要がありません。
思い起こせば、日の丸を国旗とし、君が代を国歌とするとだけ規定した国旗及び国歌に関する法律も、現状を追認するだけで何ら国民生活に変更はないと再三説明されました。
しかし、実際には、日の丸君が代が法制化されたのだから、これを教育現場で教えなければならないとして、日の丸掲揚時の起立や君が代の斉唱が強制されています。
法律でさえこのありさまです。まして憲法が変われば、「現場」は全く変わってしまうのです。
ことに、これまでの憲法9条2項は


NHK世論調査。憲法改正「必要ない」が「必要ある」を上回り、9条改正「必要ない」が「必要ある」の2倍に!
より、2016年4月の世論調査


9条を変えると言っても自衛隊の存在を書き込むだけですよ、とか、ちゃんと内閣総理大臣の指揮下にあると規定することがむしろ立憲主義にかなうんですよ、とか、耳障りのいいことがいろいろ言われると思うんです。
しかし、今までと変わらないなら、改憲する必要などない。
改憲策動の裏には、必ず暗い意図があることを、国民に訴えていかないといけないと思います。
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9条2項は維持し9条の2で自衛隊明記…自民案
- 自民党憲法改正推進本部は22日、党本部で全体会合を開き、自衛隊の根拠規定を明記する改憲案の取りまとめを細田博之本部長に一任した。
細田氏は安倍首相(党総裁)の提案に沿い、戦力不保持を定めた9条2項は維持し、「9条の2」を新設して自衛隊の保持を定める条文案を作る方針だ。これにより、自民党が検討中の4項目で事実上、改憲案の取りまとめを終えた。
細田氏が作る条文案は、自衛隊を「自衛の措置をとるための実力組織」と位置付け、「自衛の措置」という表現で自衛権を行使できることを明確にすることが軸となる。
社説
毎日新聞2018年3月24日 東京朝刊
自民党の憲法改正推進本部が自衛隊の根拠規定に関する憲法9条の改正論議を終結させた。
戦力不保持を定めた9条第2項は維持したまま、「9条の2」を新設し、「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つ」ために、「自衛隊を保持する」との条文にするという。安倍晋三首相が提起した考えに沿ったものだ。
執行部の当初案には、自衛隊の性格付けとして「必要最小限度の実力組織」との文言があったが、これを削除して「必要な自衛の措置をとる」ことが可能に書き換えられた。
政府は9条2項と整合させるため自衛隊を「戦力未満」の組織と定義してきた。その補強材料が「必要最小限度」という表現である。
新たな自民案ではこの制約があいまいになる。結果として政府が「必要」と判断すれば自衛隊の活動範囲や装備を大幅に拡大させる根拠になる。集団的自衛権の完全行使すら読み込めないことはない。
首相は、改憲しても「自衛隊の役割と権限に変更はない」と語ったが、この説明とも相いれない。
党内では首相主導の「2項維持」論と石破茂元幹事長らの訴える「2項削除」論とが対立していた。執行部は、あすの自民党大会前に意見集約を済ませようと、2項削除派に配慮して文言を修正したのだろう。
政党が憲法についてどんな議論をしようと自由だ。しかし、自民党は戦後政治を担い、今も衆参両院で圧倒的多数を占める政権党である。
その党が現行憲法の核心である9条をこれほど無造作に扱い、これほど密度の粗い改憲案を提起することに、がくぜんとする。
戦後日本の安全保障は、9条と日米安保条約という、方向性の異なる規範のバランスの上に成り立ってきた。自衛隊は発足当初から日米安保の補完を目的にしている。
このねじれを解こうとする試みは右派勢力から繰り返し提起された。それでも、9条が維持されてきたのは、多くの国民にとって9条が忌まわしい戦前の軍国主義と断絶するシンボルだったからにほかならない。
すなわち9条は国家目標であるとともに、戦前へのネガティブな歴史観を併せ持っていたがゆえに、「屈辱規定」だと嫌悪する右派への支持は広がらなかった。9条と安保・自衛隊を共存させてきたのは「保守政治の知恵」でもあった。
しかし、自衛隊は今や世界有数の装備と隊員を擁する巨大組織だ。憲法施行から70年以上が過ぎ、この組織を憲法上どう位置づけるかという問題提起は意味がある。
日本を取り巻く国際環境も変わった。中国の軍事力が年々増強される一方、超大国だった米国は国際秩序を単独で維持するだけの意思も能力も低下させている。
日本としては、相対的に優位にある米国を中心に、自由や民主主義の価値観を共有する国々と安保面で相互依存のネットワークを築いていくことが現実的な選択肢だろう。
首相と党の自己都合
自衛隊をめぐる論議は、9条が担ってきた歴史的意義や、周辺環境の変化を踏まえて、憲法の平和主義と国際協調主義を今日的にどう生かすか、細心の注意を払いながらじっくりと行うべきものである。
自民党のやり方は、そうした正攻法とはかけ離れている。
執行部が党大会までの意見集約を急いだのは、今年秋の改憲案発議という目標から逆算したためだろう。
なぜ今秋の発議かというと、改憲容認勢力が衆参で3分の2以上を占めている間にという計算からだ。
安倍首相が2020年中の改憲目標を設定したのは、自らの在任中にという事情を抜きには語れない。
いわば首相と自民党は二重三重に自己都合による改憲日程を組み立てているだけだ。そこからは国会と国民との共同作業を通して新たな「国家的総意」を練り上げていこうとする誠実さがうかがえない。
長くタブー視されてきた9条の改正論議だからこそ曲折を覚悟すべきだろう。しかし、首相は現行憲法を「押しつけ憲法」と呼んではばからない。そんな感覚で取り組む改憲作業は、日本に取り返しのつかない分断をもたらすはずだ。
共有財産である憲法の改正は首相に同調する勢力の一時的な数で決めるものではない。3分の2があってもなくても、国民世論を熟成させるプロセスこそ最も重要である。
自民党が模索する九条に自衛隊を明記する改憲案。実現すれば、軍事力の統制が利かなくなる懸念を持つ。歯止めなき軍拡路線への道かもしれない。
もともと自民党が改憲草案を持っていたとはいえ、その理由が正しく国民に説明されねばならない。「党是である」ではあまりに説得力が乏しい。とくに戦争放棄を定めた九条に狙いがあるのはよく知られたことである。
この点について、国会で質疑があったのは二〇一六年二月三日の衆院予算委員会である。質問者は稲田朋美政調会長(当時)。次のように訊(き)いた。
学者のための改憲か?
<九条第二項を文理解釈すれば自衛隊は九条二項に違反する-、憲法学者の約七割が自衛隊は違反ないし違反する可能性があると解釈しております。このままにしておくことこそが立憲主義を空洞化するものであります>
九条二項とは、戦力不保持と交戦権の否認を定めた条文である。安倍晋三首相は答えた。
<七割の憲法学者が、自衛隊に憲法違反の疑いを持っている状況をなくすべきではないかという考え方もある>
この論法はおかしい。憲法があって学者は研究の結果として九条の条文解釈をし、自衛隊との関係を考えている。それが「違憲」と言っているだけだ。政府は自衛隊を「合憲だ」と一貫して認める立場を取ってきた。安倍首相の論法だと、「違憲」という研究結果を持つ学者のために憲法改正をすることになる。学者のために改憲?
翻って、もしこの安倍論法が正しいとするならば、国民投票で自衛隊を明記する案が否決された場合、自衛隊に国民も学者同様「違憲」という意思表示をした人も多く含まれる。論理的にそう考えることもできる。
世論は半数が「反対」
それでいて、安倍首相は二月五日の国会で「自衛隊が合憲であることは明確な一貫した政府の立場だ。国民投票でたとえ否定されても変わらない」と述べた。
つまり国民投票にかけても、かけなくても、自衛隊は「合憲」-。それなら違憲という憲法学者を引き合いに出す余地などないではないか。安倍首相のロジックは、まるで破綻している。
いずれにせよ、「何のための九条改憲か」の理由には、もっと背後に強い動機があろう。
まず推測されるのは、条文に書かれなくとも、既に成立している集団的自衛権の行使容認への国民の承認である。現在は「限定的」とされているが、将来はどうなるかはわからない。
この自衛隊の任務拡大をあいまいにしたまま国民の同意を暗に求めているのではあるまいか。国民投票で「自衛隊の明記」に対し、安易にゴーサインを出してしまうと、自衛隊の活動範囲は将来、驚くほど広がってしまう事態を招く恐れもあると思う。
さらに今回は「自衛隊の明記」にとどまっていたとしても、将来、「軍隊」に変えることも予想される。国軍化は自民党の改憲草案でも示されていた。その場合は当然のことであるが、九条二項は削除されるのである。
要するに自民党の九条改憲案は、段階を踏んで、より軍隊と同質となってくるのではないか。これは日本国憲法の平和主義とは、相いれないと考える。
共同通信は三月上旬に世論調査を行った。「安倍晋三首相は、九条に自衛隊の存在を明記する憲法改正を行う考えです」としたうえ、この改正に賛成か反対かを問うた。賛成が39・2%、反対が48・5%だった。
ほぼ半数が「反対」という考えを持っているのは重視すべきである。それだけ改憲を望んでいないのだから。改憲を強く望むのは、自民党なのであり、安倍首相の宿願なのではないだろうか。
一九四五年の敗戦から、長く平和を保ってきた。この事実は重い。九条が果たしてきた役割は、もっとかみしめるべきなのだ。
実際に多くの憲法学者が「違憲」と指摘してきたために、自衛隊は正統性に疑いを掛けられてきたともいえる。そのために、かえって慎みのある実力組織となっている。軍人が闊歩(かっぽ)した戦前と比べれば、よほど明るい世の中である。これは軍事の権力統制という言葉で捉え直すこともできよう。
歯止めなき軍拡路線に
だが、憲法に明記されれば、自衛隊が正統性を持つがゆえに、かえって統制が困難になる懸念もある。財政面からの統制も難しい。
安倍首相の政権復帰後、防衛費は増え続ける。米国から高額な兵器を購入し、専守防衛では不可能とされた空母まで持とうとしている。歯止めが利かない軍拡路線の再来を恐れる。
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自民党執行部は二十二日の党憲法改正推進本部で、焦点の九条改憲について意見集約を図る。安倍晋三首相は、自衛隊の存在を憲法に書いても「任務や権限に変更が生じることはない」と強調するが、疑問の声も。長谷部恭男・早稲田大法学学術院教授に、自民党が検討している条文案について評価を聞いた。 (聞き手・生島章弘、中根政人)
-執行部の念頭にあるのは現行の九条一、二項を維持し、新設する「九条の二」で「自衛隊」を明記する案。「国民の安全を保つため」などの言葉を補うことも検討している。
「こうした条文を追加すると、戦力不保持などを定めた二項が死文化する恐れがある。後からできた法が前の法に優越するのは法学の一般原則だからだ。自衛隊と書くだけでは組織の性格や権限が条文上明確にならず、法律で全て決めることになりかねない。このことは『九条三項』でも『九条の二』でも変わらない」
-自民党は、武力行使の要件は現行憲法下と変わらないと主張している。
「国会審議でそう説明したとしても、将来の政府は必ずしも拘束されない。現行憲法も(可決前に)帝国議会で答弁した意味合いと、今の解釈が異なるものがある。安倍政権自体、集団的自衛権行使を禁じた長年の解釈を根拠なく変えた」
-国民投票で否決される可能性も。
「安倍首相の考えに沿った改憲案の否決は、主権者たる国民が(集団的自衛権を限定的に行使できるとした)自衛隊の現状を否定したことを意味する。現状に戻れないのに、どんな組織なら(憲法上)いいのか分からず、大混乱に陥る」
-現行憲法が自衛隊の存在を明記していないことに、どんな意義があるのか。
「九条で戦争放棄、戦力不保持を定めていても『ここまでの武力なら行使できる』『こんな組織なら持てる』と説明したり、挙証したりする責任を政府に負わせていることだ。出発点がゼロだからこそ、任務や権限は法律上、できることだけを挙げる『ポジティブリスト』になる。自衛隊の存在を憲法に明記してしまうと、政権によっては『われわれが説明する必要はない』と言い出しかねない」
-自民党内では、自衛隊ではなく「自衛権」を規定する案への支持も根強い。
「自衛権と書けば、フルスペックの集団的自衛権を認めることになる。むしろ、集団的自衛権の行使容認を巡る違憲論争に決着をつけることが先ではないか」
<はせべ・やすお> 1956年生まれ。早稲田大法学学術院教授。日本公法学会理事長。2015年6月、自民党推薦の参考人として衆院憲法審査会に出席し、審議中だった安全保障関連法案を違憲と指摘した。
自民9条改憲案 井上武史・九州大大学院准教授
毎日新聞2018年3月23日 東京朝刊
自民党憲法改正推進本部の自衛隊明記案について憲法学者に評価を聞いた。
かろうじて及第点 井上武史・九州大大学院准教授
安倍晋三首相が提起した改憲案に従えば、「軍隊化」を意味する9条第2項の削除案はあり得ない。国民に周知された自衛隊を書き込む執行部案は、かろうじて及第点を与えられるのではないか。
2項維持案の論点は、自衛隊の権限、任務を維持できるか▽防衛省など既存の国家機関より自衛隊が高い正統性を有しないか--などだった。執行部案は「法律の定めるところにより、総理を最高の指揮監督者とする」と自衛隊を位置付けた。国会による承認、統制に服することも規定し、既存組織を超えない工夫をしたといえる。
「必要な自衛の措置をとることを妨げない」との表現は、党内で多かった「自衛権」明記論を踏まえたのだろう。自衛隊の任務拡大につながらないよう政治的に苦労した跡が見える。ただ、当初の執行部案の「必要最小限度の実力組織」の方が権限、任務を抑制しうる書きぶりだった。今後の国会論議で焦点になる可能性がある。
活動範囲あいまい 木村草太・首都大東京教授
修正案の「必要な自衛の措置」との文言は砂川事件の最高裁判決からの引用と思われるが、判決は日米安全保障条約を合憲と認めたもので、自衛隊を合憲と認めたものではない。また、首相の指揮監督権に触れてはいるが、自衛隊が行政組織か軍事組織かも不明確だ。
全体の文言は一見、抑制的だが、自衛隊の活動が拡大し得るあいまいさがある。何ができるのか、何のためかが不明確で、この文言で国民投票にかけても、国民は混乱するだけだろう。
現在の自衛隊法は安全保障法制を受けて集団的自衛権の行使を限定的に容認しており、違憲の疑いがある。そこをあいまいにして「今ある自衛隊を明記する」というのは、個別的自衛権の範囲内だと誤解させて賛成を増やそうとするひきょうなやり方だ。武力攻撃を受けた際に個別的自衛権行使が許されるとの条文と、存立危機事態では集団的自衛権の限定的な行使も許されるとの条文をそれぞれ国民に問うべきだ。
よろしかったら大変お手数とは存じますが、上下ともクリックしてくださると大変うれしいです!


