
共謀罪は、重大な犯罪を実際に実行に移す前に相談しただけで処罰するもので、小泉政権が2003年、04年、05年の計3回、関連法案を国会に提出しました。
しかし、犯罪は実行したときに初めて犯罪として処罰されるのが近代刑法の大原則だとして猛批判を受けました。犯罪は実行して初めて法益が侵害され、可罰性が生まれるのが原則で、相談だけでは実害がないからです。
さらに、捜査当局の拡大解釈で市民団体や労働組合も「団体」として処罰対象になるといった野党や世論からの批判を浴び、3回とも廃案になりました。
ところが、今回は、4年後に東京五輪・パラリンピックを控える中、世界で相次ぐテロ対策の一環として位置づけ、2020年の東京五輪やテロ対策を前面に出す形で、罪名を「テロ等組織犯罪準備罪」(組織的犯罪集団に係る実行準備行為を伴う犯罪遂行の計画罪)に変えるとしています。

このテロ準備罪について9月に召集される臨時国会での改正案提出を検討しているそうなのですが、なんと共謀の対象になる罪は法定刑が4年以上の懲役・禁錮の罪とし、その数は600を超えます。窃盗や詐欺などの一般の罪のみならず、道路交通法や公職選挙法にも適用されることになり、対象範囲が広く、テロには全く関係のない犯罪が目白押しです。
これでは、テロ準備罪というネーミングは詐欺と言われても仕方がないでしょう。
過去の共謀罪法案では、適用対象を単に「団体」としていたが、今回は「組織的犯罪集団」に限定し、「目的が4年以上の懲役・禁錮の罪を実行することにある団体」と定義し、テロ組織や暴力団、人身取引組織、振り込め詐欺集団などを想定しているいいます。

しかし、たとえば、沖縄県の米軍基地でのヘリパッド建設に反対行動をとろうとしている人たちも、道路交通法違反を目的とした組織的犯罪集団とされかねません。つまり、組織的犯罪集団と言っても限定性が弱く、捜査当局によって解釈が拡大される可能性が強いのです。
また、過去の法案では、犯罪を行うことで合意する「共謀」だけで罪に問われていたのに対して、今回は共謀という言葉を使わずに「2人以上で計画」と置き換えたうえで、計画した誰かが、「犯罪の実行のための資金または物品の取得その他の準備行為」を行うことを構成要件に加え、武器調達のためにパンフレットを集めるなどの行為を想定しているというのです。
しかし、この「準備行為」などの言葉は定義があいまいだし、パンフを集めたらもう適用というのではほとんど限定の役に立っていません。
このように、東京オリンピックをだしに、テロ準備などとネーミングをしていますがテロと全く関係ない犯罪を600種類も対象にしている今回の共謀罪。
市民の安全を図るどころか、恣意的な運用で市民生活をかえって危険にさらしかねず、絶対に反対しないといけません。
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自民党がパリのテロに便乗して憲法違反の「共謀罪」新設をまた言い出す。これぞ火事場泥棒、便乗商法だ。
衆参ともに3分の2以上を与党が占めているのですから、こういう悪法を通そうと次々と襲い掛かってくるのでしょうね。
だいたい、テロ対策の法律なら、対象となる団体も国際的組織犯罪団体、とかテロ組織にしないとおかしいでしょう。
それでもあいまいさはぬぐえないわけですが。
それにしてもテロ対策とは名称だけで、実質をそれに近づけようという見せかけの努力さえありません。
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名称をテロ等組織犯罪準備罪、要件変えて提出検討
毎日新聞2016年8月26日 11時43分(最終更新 8月26日 13時09分)
政府、9月召集の臨時国会で
テロ組織やマフィアなどの犯罪集団による国際的な組織犯罪に対応するため、政府は、過去に廃案となった「共謀罪」の成立要件を絞り込んで「テロ等組織犯罪準備罪」を新設することを柱にした組織犯罪処罰法改正案をまとめた。9月に召集される臨時国会での提出を検討している。
共謀罪を巡っては、小泉政権時代の2003、04、05年の計3回、関連法案が提出されたが、「一般市民が漠然と犯罪の実行を相談しただけで処罰されるのではないか」といった懸念や批判の声が少なくなかった。当時の民主党など野党側も反発し、いずれも廃案に追い込まれた経緯がある。
今回の政府案は、組織犯罪処罰法を改正し「テロ等組織犯罪準備罪」を新設する。共謀罪を盛り込んだ過去の法案では「団体」としていた適用対象を「組織的犯罪集団」と明記し、「4年以上の懲役・禁錮の罪を実行することを目的とする団体」と限定した。「組織的犯罪集団」はテロ組織や暴力団、振り込め詐欺集団などを念頭に置いているとみられる。
また、政府案は(1)組織的犯罪集団としての活動(2)2人以上の具体的な計画(3)犯罪実行の準備行為−−などを犯罪の構成要件として検討。一般に共謀は「2人以上の人が特定の犯罪を行おうとする合意」を指すと解されるが、今回の「テロ等組織犯罪準備罪」は成立する要件がより厳しくなっている。
一方で、対象となる犯罪は「4年以上の懲役・禁錮に当たる犯罪」で、廃案となった過去の法案と変更はない。600程度の罪種が対象で、道路交通法や公職選挙法も含まれることから、範囲が今後の議論になりそうだ。罰則は、対象犯罪が「死刑、無期、10年を超える懲役・禁錮に当たる刑」は5年以下、「4年以上10年以下の懲役・禁錮に当たる刑」は2年以下の懲役・禁錮を科すとしている。
共謀罪が長く議論されてきた背景には、国際的な組織犯罪への対応強化がある。各国共通の処罰法の整備を目的とした「国際組織犯罪防止条約」が00年に国連総会で採択され、03年に発効した。日本は同年に国会で承認したが、条約の締結には共謀罪を含む国内法の整備が必要とされ、今も締結できていない。【鈴木一生】

政府は、重大犯罪の計画を実行しなくても計画を話し合うだけで処罰対象とする「共謀罪」を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を、九月召集の臨時国会に提出する方向で検討を始めた。複数の政府高官が二十六日、明らかにした。過去に提出した法案とは異なり、対象となる集団を絞り込んで要件も変更、「共謀罪」もテロ対策を前面に出した罪名に変える。共謀罪の導入を巡っては、小泉政権当時に関連法案が三回にわたって国会提出され、いずれも廃案になっている。
これまでの法案では対象となる集団を単に「団体」としていたが、今回の改正案では、テロ行為などの重大犯罪を行うことを目的とした「組織的犯罪集団」に変更。犯罪の実行を集団で話し合うだけでなく、資金の確保といった犯罪の準備行為も要件に加える。罪名は「テロ等組織犯罪準備罪」としている。
罪名の変更について、政府高官は「共謀罪では国民が身構える。東京五輪を控え『テロ対策』という目的を明確にした方が理解が得やすい」と述べている。
共謀罪が適用される罪はこれまでの法案と変わらず「法定刑が四年以上の懲役・禁錮の罪」で、道路交通法や公職選挙法などを含め六百超と範囲が広い。
政府は、改正案を秋の臨時国会に提出することを目指すが、前の通常国会で継続審議となった環太平洋連携協定(TPP)の関連法案などの成立を優先させる考えで、改正案成立は来年の通常国会以降を想定。
共謀罪を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案は、二〇〇三、〇四、〇五年に国会提出されたが、野党などは「労働組合も対象になりかねない」「居酒屋の会話でも逮捕される」と反発。日本弁護士連合会の反対もあり、政府側が成立を断念してきた。
◆現行法で対応可能
<神戸学院大の内田博文教授(刑事法)の話> 犯罪の準備段階の行為を処罰することは現行法でも対応が可能で、共謀罪は不要だ。殺人予備罪など、刑法には複数の予備罪が規定されており、準備行為を処罰することができる。現行法で対応できないというのであれば、具体的な立法事実を示して議論する必要がある。過去の治安維持法と同様に、運用の拡大で市民運動も標的となる恐れがある。
◆乱用、恐れ消えず
<ジャーナリストの斎藤貴男さんの話> 犯罪捜査が目的なのは分かるが、一度法律ができてしまえば、政権や捜査機関が監視や思想の取り締まりなどのために都合よく運用するのが目に見えている。海外でテロが頻発し、自民党が選挙で圧勝していることを口実にしても、乱用の恐れは消えない。今は「東京五輪のため」と言えば何でも許されるような風潮があるが、こうした法改正は、安倍政権が憲法改正を目指す際に、表現の自由を制限したり、緊急事態条項を新設したりするための地ならしになり得る。
菅官房長官「慎重に検討中」 新たな法整備に
毎日新聞2016年8月26日 12時53分(最終更新 8月26日 13時27分)

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