
菅直人元首相が、福島原発事故への対応を巡り、安倍首相のメールマガジン記事で名誉を毀損されたとして、安倍首相本人を訴えていた裁判で、東京地裁は2015年12月3日、菅元首相全面敗訴の判決を言い渡しました。
菅元首相もよりによって安倍首相に負けるくらいなら裁判起こすなよ、チッ!と思ったのですが(笑)、報道されている裁判と判決内容に疑問点があるので、それをメモとして書いておきたいと思います。
もちろん、私は今の時点で、原告・被告双方の主張立証も見ていませんし、判決文さえ手元にないので、新聞報道を見る限りの論評に過ぎないということをあらかじめお断りしておきます。

元首相が原告、現首相が被告という前代未聞の裁判。
さて、この裁判は2011年5月、安倍首相が自らのメールマガジンに当時の菅首相の原発事故への対応について、
「菅総理の海水注入指示はでっち上げ」
「海水注入を止めたのは何と菅総理その人だったのです」
などと掲載した記事を巡り争われていたものです。

菅元首相は
「実際には注入中断を指示していなかった上、吉田昌郎所長(当時)の判断で注入は続けられていたのに、安倍氏は嘘を書いて菅氏の名誉を傷つけた」
として安倍首相に1100万円の慰謝料などを求めていました。

3日の判決で東京地裁の永谷裁判長は
「記事は海水注入が継続されていたことが判明する以前に発信されていた」
「注入を中断させかねない振る舞いが菅氏にあったこと、(実際には東電が決めた)海水注入を菅氏が決めたという虚偽の事実を海江田万里経済産業相(当時)ら側近が流したことなど記事は重要な部分で真実だった」
「記事は違法な人身攻撃ではなく、論評として適切だった」
として、菅元首相の訴えを全面的に退けたというのです。
安倍首相は自身のフェイスブックでさっそく
「官邸における原発事故問題の本質を真正面から認めていただきました」
「海水注入は吉田(昌郎)元所長の英断であったという真実が確認されました」
と勝利宣言を出したというのですが。

私の疑問点というのは、この事件は「重要な部分で真実だった」と言えるのかということです。
だって、安倍首相は、福島原発事故をさらなる大事故にせずに済んだ海水注入について
「菅元首相の指示で中断した」
と書いちゃったのに、実際には、中断せず、注入は継続していたんですよ。
これが最も重要な点ではないですか?

安倍首相がメルマガを出したのが2011年5月20日。翌21日の読売新聞も誤報。

しかし、一週間も経たない5月26日に東電が海水注入を継続したことを認め、海水注入は中断されていないことが判明している。
その際に、安倍氏が謝罪すればそれで済んだ話ではなのに、その後、4年も上のメルマガを削除しなかったのだという。
もちろん、名誉毀損訴訟では、被告の表現の自由が問題となるだけに、被告の表現が真実でなくても、真実であると信じたことに相当の理由があった、つまり、それ相応の証拠があったということが立証できれば、被告の表現は許されることになっています。
でも、今回の場合、裁判所から見ても
「記事は海水注入が継続されていたことが判明する以前に発信されていた」
んですよね。
それだったら、菅元首相が海水注入を中断させたという確たる証拠がなかったというように論理を進めるべきなのに、注入が継続されていたことが判明する以前だったから、菅元首相が中断させたと書いてもかまわないという論理はおかしいと思います。

判決後、記者会見した菅元首相は
「注入が中断していないと認めながら、『中断した』と書いた記事が真実だというのは、論理矛盾だ。判決には事実誤認があり承服できない」
として、控訴することを宣言したそうですが、東京高裁では逆転勝訴する可能性も十分あるのではないでしょうか。
東京地裁判決は
「海水注入を菅氏が決めたという虚偽の事実を海江田万里経済産業相(当時)ら側近が流したことなど記事は重要な部分で真実だった」
というのですが、菅首相と原発推進の海江田氏が対立していたのは公然の秘密ですから、これもにわかに信じがたい話ですし、ここが安倍氏のメルマガの重要部分というのがそもそも認識としておかしいと思います。
安倍首相が権勢をふるうご時世に、また安倍首相に一本取られた菅元首相の責任は重大です。
控訴審では頑張ってほしいと思います。
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今の安倍首相を裁判所が負けさせるというのは、これは相当勇気のいることですが、それにしても一審判決は強引な気がします。
メルマガを発信した時点でも確たる証拠がなかったわけですが、少なくとも、海水注入は中断していなかったという真実が判明した後、削除要求があってもなおこのメルマガを削除しなかった時点以降は、名誉毀損が成立する可能性があるでしょう。
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2015.12.3 14:54 産経新聞
【菅元首相敗訴】
福島原発めぐる安倍首相メルマガ訴訟 「海水注入中断させかねぬ振る舞いあった」「記事は重要な部分で真実だった」
菅直人元首相
東京電力福島第1原発事故の政府対応をめぐり、安倍晋三首相が発行したメールマガジンの記事で嘘を書かれ名誉を毀損(きそん)されたとして、菅直人元首相が安倍首相に謝罪記事の掲載や約1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が3日、東京地裁であった。永谷典雄裁判長は「記事は菅氏の資質や政治責任を追及するもので、公益性があった」とし、菅氏の訴えを退けた。
訴えによると、安倍氏は平成23年5月20日付の記事で「3月12日の海水注入は菅氏が決定したとされているが、実際には注入は菅氏の指示で中断されていた。しかし側近は『注入は菅氏の英断』とする嘘をメディアに流した」などと指摘。しかし菅氏は実際には注入中断を指示していなかった上、吉田昌郎所長(当時)の判断で注入は続けられていたのに、安倍氏は嘘を書いて菅氏の名誉を傷つけた、と主張していた。
永谷裁判長は判決で「記事は海水注入が継続されていたことが判明する以前に発信されていた」「注入を中断させかねない振る舞いが菅氏にあったこと、(実際には東電が決めた)海水注入を菅氏が決めたという虚偽の事実を海江田万里経済産業相(当時)ら側近が流したことなど記事は重要な部分で真実だった」とし、「記事は違法な人身攻撃ではなく、論評として適切だった」と認定した。
安倍首相メルマガ「真実」 東京地裁、菅元首相の賠償請求棄却
- 2015/12/3 21:29 日本経済新聞
東京電力福島第1原子力発電所事故への対応をめぐり、安倍晋三首相のメールマガジンの記事で名誉を傷つけられたとして、菅直人元首相が安倍氏に慰謝料1100万円などを求めた訴訟で、東京地裁(永谷典雄裁判長)は3日、「記事の重要部分は真実」と認め、菅氏側の請求を棄却した。
問題となったのは、菅氏が首相だった2011年5月20日配信のメルマガ。「唯一の英断と言われている『3月12日の海水注入の指示』はまったくのでっちあげ」として、「海水注入を止めたのは菅総理その人」「これをごまかしウソを側近がばらまいた」と記載した。
永谷裁判長は判決理由で「菅氏に海水注入を中断させかねない振る舞いがあった」と指摘。「海水注入の実施を決めたのは菅氏という虚偽の事実を側近が新聞やテレビに流したという記事も重要部分は真実」と認めた。
判決後に記者会見した菅氏は「事実認定が誤っており、とても承服できない」と話し、控訴する方針を示した。
2015.12.3 18:08
【菅元首相敗訴】
「真実の勝利」 安倍首相が“勝利宣言”
「真実の勝利ではないかと思います」-。安倍晋三首相は3日、菅直人元首相から損害賠償などを求められた訴訟で、東京地裁が菅氏の訴えを退けたのを受け、自身のフェイスブックで“勝利宣言”した。
安倍首相は自身が発行したメールマガジンの記事をめぐり、東京電力福島第1原発事故の政府対応で「海水注入を中断させかねない振る舞いが菅氏にあったことなど記事は重要な部分で真実だった」とした判決にふれ、「官邸における原発事故問題の本質を真正面から認めていただきました」と歓迎。「海水注入は吉田(昌郎)元所長の英断であったという真実が確認されました」とつづった。
訴えでは、安倍氏は平成23年5月20日付の記事で「3月12日の海水注入は菅氏が決定したとされているが、実際には注入は菅氏の指示で中断されていた。しかし側近は『注入は菅氏の英断』とする嘘をメディアに流した」などと指摘。しかし菅氏は実際には注入中断を指示していなかった上、吉田所長(当時)の判断で注入は続けられていたのに、安倍氏は嘘を書いて菅氏の名誉を傷つけた、と主張していた。
2015.12.3 20:25 産経新聞
【菅元首相敗訴】
菅氏会見詳報 判決に不満ぶちまける「安倍さんは海水注入問題を根拠に不信任案を出そうとした」
安倍首相のメールマガジンをめぐる敗訴判決を受け、記者会見する菅元首相(左)=3日午後、国会
安倍晋三首相のメールマガジンで東京電力福島第1原発事故の際に海水注入を止めさせたとうそを書かれ名誉を毀損(きそん)されたとして、民主党の菅直人元首相が安倍首相に謝罪掲載と損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は3日、菅氏の請求を棄却した。菅氏は同日夕、国会内で記者会見を開き、判決への不満をぶちまけた。詳報は以下の通り。
◇
【冒頭発言】
「この名誉毀損事件は、安倍さんが平成23年5月20日に出されたメルマガで、私が海水注入を中止するよう指示し、私が海水注入を中止させたと、こういう事実に基づい、ていくつかのことを言われております。しかし、この判決の中でも、海水注入は実は中止されていなかった、中断されていなかったということは裁判所も認めているわけであります。海水注入を中止したのは菅総理である、とメルマガには書いてあるわけですが、まったくの虚偽情報であり、このことは判決からも明確にいうことができます」
「また、判決では、『(海水注入を)中断させかねない振る舞い』が原告である私にあったことを(メルマガは)批判しているんだ、と。そういう認定をされております。そして、このメルマガは妥当だ、という言い方になっておりますが、結果として中断はされていないということでありますから、『させかねない振る舞い』があったかなかったかということが争点ではなくて、中断がなされたかどうか、そして中断の指示を行ったかどうか、それが中心的事実認定だと思っております。私が中断を指示したことはありません」
「以上のように、重大な事実の認定において明らかに誤認があることがはっきりしておりますので、東京高裁に控訴したいと、このように考えております」
--請求が棄却されたことの感想を
「大変残念ということが一つと、判決文を読んでみると、私が海水注入を中断したという一番の重要な点について、中断していないということを裁判所は認めながら、『中断した』と書いたものが真実だというのは、まったくの論理矛盾でとても納得することはできません」
--判決は、メルマガは総理だった原告の政治的責任を追及したものだ、との判断だが
「名誉毀損の裁判ですから。政治家同士が政策やいろんな問題で批判しあうことについて争っているわけではありません。安倍さんが事実に基づいて批判をされるのは当然、自由ですし、私も野党時代、そういうことはずっとやってきました。ただ、それはあくまで、事実に基づいての批判でなければいけない。今回は『海水注入を止めたのは菅だ』『だからけしからん』『だから責任をとってやめろ』と、総理であった私に『即刻やめなさい』というところまで言い切っているわけです」
「(5月)24日のメルマガには、いよいよ不信任案を提出する時期が迫っているという表現も入っています。ですから、安倍さんがこの問題を一つの根拠にして不信任案を出そうとしたということ。まあ、これは別に今回の裁判で争っているわけではありませんが。メルマガは今はもう削除されていますから、私のブログに添付されたものを見ていただければよく分かります」
「もう1点だけ付け加えますと、判決の中で、このメルマガが出された5月20日はいろんな事実関係がまだはっきりしていなかった、という指摘があります。5月26日に、海水注入は継続していたということを東電自身が認めて発表しているわけです。だから、その発表の前だから、というふうな言い方を(判決は)しているんだと思うんですが、しかし、私が提訴したのは、事故から2年目。そしてこのメルマガが削除をされたのが4年目。つまり、ほぼ4年間、ネット上には残っていたわけでありまして、そういう点で、発信のスタートが5月20日であったということと、事実関係がはっきりしたのが5月26日であったということ、そのことは決して、その後の開示を正当化するものではないと考えています」
「しかも、こちらから削除と謝罪を要求した段階では、(安倍首相側は)削除には応じないという姿勢であったわけですから、『その時点では分からなかった』ということは言い訳として成立しないということができると思います」
--現職の首相を裁判で負けさせるわけにはいかない、というような裁判所の政治的配慮があった可能性はあると思うか
「そこは分からないというしかありません。裁判官がどういうことを考えてこういう判決を書かれたかはですね。ただ、判決そのものは事実に対して明らかに誤認がある。なぜ明らかな誤認をしたかという、それに今ご質問のような背景が影響したかどうかというのは、それは分かりません」
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