
核拡散防止条約=NPT条約は、1967年1月1日時点で核兵器を保有していた米・仏・英・露・中の5大国だけ核保有を合法とする1970年に発効した条約です。核兵器が拡散しないことは良いこととは言え、このように極めて不平等な中身を持っているので、核保有国には「誠実な核軍縮義務」が課され、5年ごとに再検討会議が開かれます。
イスラエルは核保有国である北朝鮮(1993年脱退)・インド・パキスタンと並び、世界でも数少ないNPT非加盟国の一つです。核兵器の保有が確実とみられていますが、肯定も否定もしないという「無言の脅迫」を続けており、国際原子力機関(IAEA)の査察も受け入れていないのです。
しかし、イスラエルは実際には、英仏中を越える200個から300個の核弾頭を保持するとさえ見られており、中東地域で唯一の核兵器保有政権であり、世界の平和と安全を脅かしているのです。
たとえば、2010年5月のNPT条約再検討会議で、アラブ諸国はイスラエルの核保有問題を提起し、採択された宣言にも中東地域の核廃絶に関する国際会合を本年2012年までに開催する呼びかけが盛り込まれています。
ところが、イスラエル政府は宣言について、「中東の現状に即しておらず、協力できない」と断言し、「イスラエルは地域で唯一の民主国家」とした上で、「NPTに加盟していない以上、決議を履行する義務はない」と呼びかけに従わない方針を明確にしました。
IAEA国際原子力機関に加盟するイスラム諸国とアラブ諸国は、2010年9月、オーストリアのウィーン本部で行われているIAEA年次総会で決議案を提出し、イスラエルのNPT加盟と、この政権の核活動がIAEAの監視下に置かれることを要請しています。
しかし、イスラエルは再度、「NPT核兵器不拡散条約への加盟はこの政権の利益に反する」としました。

(2012年3月2日、イスラエルのネタニヤフ首相は、イランが核問題をめぐる協議再開に前向きな姿勢を示していることについて、核兵器開発に向けた時間稼ぎをしているだけだと主張(2012年 ロイター/Chris Wattie)
これに対して、イランの核疑惑と言いますが、イランはNPT条約に加盟し、条約に則ってIAEAの査察も受け入れています。そして、核兵器を開発しうるのではないか、開発の意図があるのではないかという疑惑があるだけです。
イスラエルは核兵器を英仏中なみに保有していることが確実で、しかも、NPT条約には参加しようとしないのです。イスラエルの方が危険な国家である事は明らかでしょう。
現に、アメリカのロサンゼルス・タイムズは2012年2月25日付けの記事において、「イスラエルは、核爆弾を保有することから、世界の平和にとって最大の脅威である」としています。
また、「仮に、イランが核爆弾を製造できたとしても、パレスチナや中東諸国においては、イスラエルの核ミサイルに対する懸念の方が大きい」としました。
さらに、「肝心なのは、イランが核爆弾を製造する意向がないことを表明したのみならず、これまでに一度もイスラエルに対し、軍事攻撃を示唆していない一方で、イスラエルは逆に何度も、軍事攻撃を示唆してイランを脅迫し、しかも既に核爆弾を保有していることである」と報じています。
アメリカ国内でも、多くの情報アナリストらは、イランが核兵器の獲得を追求しているとは考えておらず、「アメリカによる対イラン制裁は、イランの現体制の転覆を狙ったものであるとみている」と述べています。
イラク戦争と同じです。
(3月2日、オバマ米大統領は、イランの核兵器保有を阻止するために米国は必要に応じて軍事的手段を取る用意があることを明らかにした。ニューヨークで1日撮影(2012年 ロイター/Kevin Lamarque)
ところが、イスラエルは再三イランの「核開発施設」に攻撃すると明言し、2月2日にはアメリカのバネッタ国防長官がイスラエルがこの春イランを攻撃する可能性を認めました。
さらに2月27日に行われたアトランティック誌のインタビューの中で、アメリカのオバマ大統領が、イランが核兵器を開発することは容認できないとし、アメリカ自身による行動を「脅しではない」と強調したことが3月2日に明らかになりました。
オバマ大統領は「イランが核兵器を保有することを容認しないと米国が表明した場合、それが言葉どおりの意味であることをイラン政府もイスラエル政府も認識していると思う」と語ったそうです。
また、イランに対する経済制裁が失敗に終わった場合、米国はどのような選択肢も排除しないと言明し、イランの核兵器保有を阻止することはイスラエルだけでなく米国にとって「重大」な国益との認識を示しました。
これは、明らかに軍事行動を予告したものです。
アメリカのダブルスタンダードは今に始まったことではありませんが、これは湾岸戦争、イラク戦争に続く戦争の危機ですから、看過することは出来ません。
下の本にあるように、戦争中毒のアメリカの禁断症状がまた始まったのではないでしょうか。

(戦争中毒―アメリカが軍国主義を脱け出せない本当の理由 ジョエル アンドレアス、Joel Andreas、きくち ゆみ、 グローバルピースキャンペーン有志)
イラク戦争は「独裁者」が支配する国家が「大量破壊兵器を持っている」のは「危険」だ、というだけで、始められた国際法違反の戦争で、市民の虐殺や捕虜虐待など戦争犯罪の限りが尽くされました。ご存じのように大量破壊兵器はなく、何十万人もの市民が死亡し、今も、イラク国内外には何百万人もの難民がいるのです。
イランがたとえ核開発をしていたとしても、だからといってイスラエルやアメリカに武力行使をする権利などないのです。NPT条約には条約違反の国があったとしても、軍事制裁を根拠づける規定はありません。
条約にも参加しないイスラエルと、それを黙認するアメリカが、条約には参加して査察も受け入れているイランを攻撃するほど理不尽かつ不公平なことはありません。
最近は、アメリカ従属ではなくて独自外交をするべきだという論が広範に主張されているわけですから、日本は断固としてアメリカの違法な軍事行動をやめさせるように説得すべきです。
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イスラエルのパレスチナ圧制もほったらかしやん。
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