ウクライナ戦争開始からバランスのいい評論をするということで名を挙げたロシア・軍事研究家の小泉悠東大准教授のインタビュー記事
が週刊エコノミストon-lineに載りましたので、ご紹介します。
この前書いたように護憲派の私や杉原浩二さんや志葉玲さんは即時降伏派の停戦真理教徒たちから「徹底抗戦派」と揶揄されるのですが(秋風亭師匠なんて「徹底好戦派」と言われたらしいw)、日米安保体制肯定の保守側である小泉氏はなおさら、親露派陰謀論者からは忌み嫌われているんです(笑)。
即時降伏派たちはダボハゼのように貪欲資本主義者のイーロン・マスクやトンデモ核武装論者のエマニュエル・トッドを引用するくせにね(笑)。

ロシアのアセット(資源)たちが小泉悠氏を叩く理由。
ロシアのプーチン政権が小泉悠東大助教授ら学者やジャーナリスト30人を入国禁止に。ほとんどのネットサービスを禁止にし、一部地域ではモバイル通信も戦争終結まで遮断して言論統制をしているロシア政府。
小泉氏が親露派陰謀論者から一番嫌がられたのは、東京大学先端科学技術研究センター講師時代に岩波書店の「世界」2023年10月号に彼が書いた
でした。
親露派陰謀論者のうち、一応枕詞で「ロシアの侵略は許されない」で始めるエセリベラルが、そのあと、「が」「しかし」として、あとはウクライナと当時の欧米諸国を非難するばかりだったのには私も腹立たしい思いで見ていました。
何しろ彼らは自称護憲派で安保法案のころには立憲主義を唱えていたくせに、ロシアが国連憲章を踏みにじってウクライナを侵略したら、いきなり法の支配も何のその。
エセリベラルは反米拗らせ丸出しで、(ロシアの侵略は許されないが)、ウクライナに軍事支援するべきではない、ロシアに経済制裁をすべきではない、プーチンに逮捕状を出すべきではない、ロシアの戦争犯罪を追及すべきではない、ロシアの選手をオリンピックに出せと、プーチン政権の代弁者で4年間来たわけですから。

南アフリカ共和国のアパルトヘイトを突き崩した一つの要因は国際社会による経済制裁だった。
ロシアに対する経済制裁も許さないという親露派陰謀論者は、それは侵略されているウクライナに即時降伏を求めるしか手がないだろう。
【ロシアによるウクライナ侵略開始から1年(中編)】なぜロシアの侵略を止めなければいけないのか。なぜロシア市民に経済制裁の痛みを負わせ、ロシア選手にパリ五輪出場を禁止しなければいけないのか。
このようなエセリベラルの屁理屈について、小泉氏は
『この間、日本でも多くの論考が世に出たが、そのうちの少なからぬものが「ロシアの侵略は許されるものではないが」という枕詞で始まっていた。これがどうもひっかかる、というのが本稿の根柢にある問題意識である。
この枕詞は、ロシアの行為が「侵略」であり「許されるものではない」という前提を置いている。
したがって、ロシアがウクライナに攻め込んで破壊と殺戮の限りを尽くしていることを決して肯定するものではないだろう。』
『ロシア軍占領地域においてどれだけの死者が出ているのかは全く明らかでない。実際には万の単位で無辜の一般市民が殺害され、あるいは生涯にわたって回復不能な障害を負っているはずであるし、その中にはロシア軍兵士が行った住民殺害・虐待行為、治安機関による組織的な拷問・レイプ・処刑によるものも相当含まれていると考えられる。
どのような「複雑さ」を考慮したとしても、これほどの破壊と殺戮をもたらす権利はどの国家にもあるはずがない。人々が平穏な生活を営む都市にクラスタ―爆弾やサーモバリック弾を打ち込んで吹き飛ばす権利が誰にあるというのか。』
などと論破したので、この論文はリベラル界隈でも大変な反響を呼びました。
岩波書店『世界』最新号に〈ウクライナ戦争をめぐる「が」について〉小泉悠(東京大学先端研講師)掲載。読者層へ向けた良き論考。
— 真野森作 / 毎日新聞モスクワ支局長 / 元カイロ特派員 (@Tokyo_dogpillow) 2023年9月8日
よくある「ロシアの侵略は非難すべきだが…」の「が」に続く論に対して、それは成り立ちませんよ等と丁寧に説く。
この戦争の複雑さは丁寧にきちんと扱う必要がある。 https://t.co/VZBbiR6WkW

人命尊重のために即時停戦をと言い募りながら、ロシア軍がブチャなど占領地で行なってきた虐殺からは目を背ける親露派陰謀論者と言う名のロシアのアセット(資源)たち。
ボグナー国連人権監視団団長「戦争犯罪だ。国際人権法の重大な違反」。ロシア軍は侵略開始してからウクライナで民間人864人を拘束し9割以上を拷問し77人を裁判なしで即決処刑。ロシア軍は即時撤退せよ。
さて、今回の
では、小泉氏は
「ロシア軍は百数十万人の兵力規模だと思うが、開戦前の地上兵力は36万人程度。その後は徴兵ではなく、給料を出して兵士を募集して数を増やしている。これはかなりお金がかかり、兵器増産にも多額を投じている。25年のロシアの国防関連予算は約13兆4909億ルーブル(約25兆円)で、平時の4倍と途方もない額だ。補正予算も合わせれば25年は15兆ルーブル近くに達しているだろう。もう長く続けられない。」
と、ロシアの経済的な苦境と兵士の練度の低さについて客観的に述べ、普通に考えたらロシア軍の継戦能力は1年という話をしています。
しかし、じゃあ今年2026年に停戦できるかというと
『プーチン大統領は26年も可能な限り作戦を続けると考えているかもしれない。停戦は難しいのかもしれない。この状況を覆すには、政治の論理が軍事の論理よりも前面に出ていく必要がある。とにかく早期停戦するという政治的イニシアチブだ。ロシアを怒らせてでも停戦を強要させると、トランプ米大統領が腹をくくれるかどうかだ。』
というのですから、これは今年もウクライナ侵略戦争停戦は無理かもしれません。
国民や国民経済にとって無理でも何でもやってしまうのがプーチン大統領のような独裁者だし。
逆に頼みの綱のトランプ氏はロシアのアセットにして「タコ」なんですから。
(「Trump Always Chickens Out」。トランプはいつでもビビッて退く)。

(文春新書 1419) 新書 – 2023/9/20
小泉 悠 (著)
編集後記
保守論客である小泉悠氏でも、ウクライナ戦争の停戦を願っている点では停戦真理教の連中と何ら変わりないということが、この論文を読むとお分かりになると思います。
彼らと違うのは正確な知識と客観的なデータに基づいていることだけです。
上下ともクリックしてくださると大変うれしいです。
秋風亭遊穂師匠
週刊エコノミスト Online
2026年1月7日
ウクライナ戦争は2026年に停戦の兆しが見えるのか。ロシアの安全保障と軍事政策に詳しい小泉悠・東京大学先端科学技術研究センター准教授に聞いた。(聞き手=和田肇・週刊エコノミスト編集部)
── ロシア国防省は2025年12月2日、ドネツク州にあるウクライナ軍の重要補給拠点の都市ポクロウシクを制圧したと発表した。ルハンスク州でもクピャンスクなど重要都市が制圧されそうな状況だ。プーチン大統領が目標にしているドネツク、ルハンスク2州の完全占領が実現しそうなのか。
■そうは見ていない。ポクロウシクが占領されても、ドネツク州にはクラマトルスクなど重要拠点がいくつか残っている。この戦争は一つ一つの都市を争っても、それが戦争の勝敗につながらない。総体として勝敗をつけないといけないが、個々の都市の争奪戦がばらばらに行われている状況だ。
── ウクライナ軍はロシア軍にかなり押されているのか。
■そうだと考えている。ドネツクとルハンスク州に加えて、ザポリージャ州でもウクライナ軍は突き上げられている。三正面でロシア軍に押されている状況だ。例年だと11月ごろは地面が泥濘(でいねい)化して、大規模な作戦ができないが、25年は11月になってもロシア軍の圧力が弱まっていない。
── そもそもウクライナ軍はロシア軍に比べてかなり兵力が少ない。それで1200キロメートルの前線を支えている。ロシア軍は大量の戦車、装甲車の機動部隊を集中して前線を突破して、都市を包囲すれば容易に占領できそうに見える。
■私はロシア軍の練度がかなり低くなっているので、そうした高度な作戦が実行できなくなっていると見ている。ロシアには今、毎年35万〜40万人くらいの志願兵が入隊しているとされるが、同じぐらいの数の兵士が戦死・戦傷している。きちんとした訓練を受けた兵士、指揮官がかなり不足していると見ている。
ロシアの新兵訓練施設の規模では、年間25万人前後しか訓練できない。ところが今のロシアは、通常の徴兵制度での新兵訓練(年間25万人程度)をやりつつ、プラス35万〜40万人の志願兵を確保している。つまり、毎年70万〜75万人の兵士が入隊している。明らかに訓練リソースが足りない。訓練不足の大量の兵士を前線に送り出している状況だろう。
ウクライナは14年以降、ドネツク、ルハンスク州の多くの都市を要塞(ようさい)化してきた。それもロシア軍がなかなか進撃できない要因だと思う。また、ウクライナ軍は24年秋にドローンやロケット弾を使って、ロシアの弾薬庫など物資集積拠点を相当たたいた。これも影響しているだろう。今は戦術もかなり変化していて、ドローンで戦車や装甲車を機能不全にさせられる。ドローン攻撃から戦車が生き残ったとしても、補給トラックがドローンにやられたら、戦車や装甲車は機能できない。そうしたテクノロジーの影響もある。
兵力不足は深刻
── ウクライナ軍の課題は何か
関連記事
<小泉悠氏「戦時下を支えるロシア防衛産業の底力とは」>
<ポーランド侵入「露ドローン」が暴いたNATOの平和ボケ>
ウクライナ和平交渉大詰め「大坂冬の陣」避けたいゼレンスキー氏
中国経済成長のカギは「近隣窮乏化」モデル
中国がドル箱から実験場に 欧米企業の今
もろい土台:習氏の外交成果、低迷する経済を覆い隠す
米企業の解雇通告に新手法 失敗例も続々
■最大の課題は、兵士の徴集が限界に達しつつあることだ。ゼレンスキー政権は兵士の徴集年齢を25歳以下に下げようとしない。そこまで徴集したら国の再建ができなくなる。ウクライナは常時、兵士の徴集を行っているが、数が足りないので、道を歩いている人をいきなり自動車に押し込むというやり方までして、集めている。ウクライナ軍はこれまで10万人から10万人台前半ぐらいの戦死者を出していると思われるので、それを考えれば、今の90万人程度の兵力が限界ではないか。
ロシア軍は百数十万人の兵力規模だと思うが、開戦前の地上兵力は36万人程度。その後は徴兵ではなく、給料を出して兵士を募集して数を増やしている。これはかなりお金がかかり、兵器増産にも多額を投じている。25年のロシアの国防関連予算は約13兆4909億ルーブル(約25兆円)で、平時の4倍と途方もない額だ。補正予算も合わせれば25年は15兆ルーブル近くに達しているだろう。もう長く続けられない。
── 26年も前線は膠着か。
■ロシアは、1920年代のロシアの軍事思想家アレクサンドル・スヴェーチンが唱えた消耗戦理論を考えているのではないか。戦線が膠着(こうちゃく)しても総合国力の消耗戦で最後は戦争に勝つという理論だ。ロシア軍のゲラシモフ参謀総長は過去の演説で何回もスヴェーチンに言及している。米国のある財政専門家によると、ロシアの財政状況は、あと1年は何とか戦争が続けられるという。だから、プーチン大統領は26年も可能な限り作戦を続けると考えているかもしれない。停戦は難しいのかもしれない。この状況を覆すには、政治の論理が軍事の論理よりも前面に出ていく必要がある。とにかく早期停戦するという政治的イニシアチブだ。ロシアを怒らせてでも停戦を強要させると、トランプ米大統領が腹をくくれるかどうかだ。
人物略歴
小泉悠〈こいずみ・ゆう〉東京大学先端科学技術研究センター准教授
1982年生まれ。早稲田大学大学院修士課程を修了後、民間企業、外務省専門分析員等を経て2009年未来工学研究所に入所、17年に特別研究員。19年東京大学先端科学技術研究センター特任助教に就任し、23年12月より現職
<週刊エコノミスト Onlineはこちら>
ロシアのウクライナ戦費、25年GDP比5.1% 政府が公式試算
Gleb Bryanski, Darya Korsunskaya
2025年12月18日午前 10:21 GMT+92025年12月18日更新

写真はロシアのベロウソフ国防相。モスクワで12月17日代表撮影。Sputnik/Alexander Kazakov/REUTERS
[モスクワ 17日 ロイター] - ロシアのベロウソフ国防相は17日、2025年の対ウクライナ戦費は11兆ルーブルで、国内総生産(GDP)の5.1%に相当すると発表した。今年の戦費の公式試算を示すのは初めて。
経済省が試算した今年のGDPは217兆ルーブル(約2兆7000億ドル)。
国防相によると、非戦争関連項目を含めた国防省の総支出はGDPの7.3%に相当する。
25年度予算では国防向けにGDPの6.2%、国家安全保障に1.8%を割り当て、総額は17兆ルーブルとなった。
26年はGDPの5.5%を国防に、1.7%を国家安全保障に充て、総額は16兆8000億ルーブル、予算全体の38%を占める見通し。
ベロウソフ氏は国防省の年次会議で、今年は戦闘作戦の実施で軍事費が増える中、ウクライナ戦争に関連しない支出の削減を進め、すでに1兆ルーブルを節約したと述べた。
ロシアは今年、財政赤字目標を2度引き上げ、26年からは一部の増税を余儀なくされるなど、約4年に及ぶウクライナ戦争で財政問題が深刻化している。
上下ともクリックしてくださると大変うれしいです。


>「徹底抗戦派」と呼ばれる始末(苦笑)。
私は徹底好戦派と呼ばれました(大笑)。このラベリングについてAIに心理学的解説をお願いしました。
”「停戦の決定はウクライナ国民である」との発言に対して「徹底好戦派」という中傷(中傷者は戦闘反対、ウクライナ敗北の強い信念)をする心理的メカニズムとは。”
回答
①投影
ウクライナ敗北の信念が強いため、中立(停戦の決定はウクライナ国民である)が「本当は戦争継続を望んでいる」と歪曲して認識され、中傷が発生。 社会的認知のバイアス研究では、このようなバイアスは信念の不確実性が高い状況(戦争の不透明さ)で強まる。
②認知的不協和(自己の信念と見えない終戦との乖離)
中傷者は自身の信念を「現実直視」として価値付け、発言者を「非現実的な希望主義」と見なし、中傷で信念の優位性を主張。これが「徹底好戦派」というラベリングにつながり、不協和を外部に転嫁。特に、信念が強い場合(ウクライナ勝利不可能論)、中立が「現実を無視した好戦性」と歪曲されやすい。
③パターナリズム的態度
中傷者は「ウクライナのため」を主張しながら、実際にはウクライナ人の判断能力を信頼しない。「自分たちの方がウクライナ人より正しい判断ができる」という無意識の優越感が働いている。
と、これぐらいにしておきますが、ああ、なるほどと納得しました。みんなズボシです。AIの回答にあるように、即時降伏論者は「おまえたちは非現実的だ」とか自分でも言ってましたから。特に③はその傲慢さが際立っていました。
さて、Sotsial'nyi Rukh の主張、とても感動しました。彼らは真のリベラル・左翼です。ベネズエラの人たちは苦難の国内情勢の中、ロシアの侵略反対の声を上げていたんですね。元ベネズエラ領事のホセ・ダビド・チャパロ氏が、 ロシア侵攻後、ウクライナ国際領土防衛軍に入隊し、ロシア軍によって破壊された都市の復興に尽くすなんて並大抵のことじゃないですね。ウクライナに対する敬意の深さを読み取れます。
また、ウクライナ社会運動の方たちの中南米に対する視座はよく歴史を踏まえていて、それがトランプの欺瞞を痛快に射抜いています。お互いの強い絆があればこそでしょう。
私は知らなかったのですが、ウクライナは1991年当初からパレスチナ国家を公式に承認していました。ウクライナの罵倒に明け暮れる即時降伏論者は恥を知るべきでしょう。また、パレスチナの世論の7割がロシアの侵略に反対していることが、教育と対話の成果であることをあげていることは非常に重要です。
そして、世界の左翼について「古典的で耳ざわりのよい[安易な]平和主義にしがみつくことは、私たちにはあまりにナイーヴに映ります。」という批判を即時降伏論者は真摯に受け止めるべきです。
昔は左翼というイメージのあったキューバ、今は左翼政権とは言えないロシアに追随しているキューバに目を転じると、ソ連崩壊で自立するかに見えましたが、結局元に戻ってしまい非常に残念です。もっとも米国の経済的抑圧が大きな壁となっていたのですが。
別コメントで触れたスペインをはじめとする米国の蛮行を非難する声明に名前がないのはそこにありそうです。
そのキューバ、トランプの西半球を勢力圏とする戦略からすれば次の標的候補となる可能性は捨てきれません。中国はキューバとの協力関係を強めており、経済のみならず軍事面でも通信諜報基地をキューバに設立しました。この基地により、中国は米国全土、特にフロリダ州、ジョージア州、サウスカロライナ州の軍事施設や宇宙施設からの軍事、商業、さらには民間の通信を傍受することが可能になりました。
China’s Beachhead in Cuba Signals an Authoritarian Axis (THE DIPLOMAT June 19, 2025)
https://thediplomat.com/2025/06/chinas-beachhead-in-cuba-signals-an-authoritarian-axis/
またトランプは、グリーンランドに対しても領有意思を強める発言を繰り返しており、ベネズエラでの成功体験に味を占めたことで次の標的を検討していると思います。麻薬が口実だったように、安全保障など口実で利権が得られる場所が危険です。