
イギリス下院議会
日本国憲法が採用する議院内閣制の下では、議会内の多数で選ばれた内閣総理大臣が内閣を組織するため、立法府である議会内の多数党=与党と行政府である内閣とは一体化します。
そこで、議院内閣制と呼ぶわけですが、この議院内閣制の下では、内閣が提出しようとする予算案・法律案はあらかじめ与党に官僚が説明し、与党からの質問にも答えて、もまれて、案となり議会に提出されます。
そこで、日本と同じく、首相を国会議員から選ぶ議院内閣制のドイツ国会のウェブサイトで国会の主な役割を
「立法と政府統制」
と説明しています。
政府統制のためには政府への厳しい質問は欠かせませんが、与党は内閣と一体ですから、政府統制のためには野党の役割を重視するのが、国際的な常識となっているのです。
立法府たる議会においては、法律をつくることが大きな役割ですが、採決は多数決で行われるため、常に与党が優位ですから、国会質問こそが野党の存在意義そのものだと考えられているわけです。
そのドイツでは、会派ごとに経済、教育、外交など大きなテーマを扱う「大質問」、会期中は毎週政府が議員の質問に答える「質問時間」、タイムリーな話題を扱う「時事討論」などがあるそうです。
日本の国会図書館による調査がまとめている2005年から2009年の数字で見ると、質問件数で野党が占める割合は大質問で98.4%、質問時間で80.7%、時事討論で99.1%。
つまり、ドイツでは国会質問のほとんどすべてを野党が使っています。ちなみに、当時は与党が議席の7割を占めていたにもかかわらずです。

ドイツ連邦議会
次に、やはり世界で最も伝統のある議院内閣制の国イギリスにおいては、議会の開かれている週には、月曜から木曜まで毎日1時間の「質問時間」があります。
議員は3日前までに質問を提出。限られた時間でどの質問をするかは抽選で決めます。与党か野党かは考慮されません。ただし、答弁に対して他の議員が追加でもう一つ質問をすることができ、これは与党と野党が交互にすることになっているそうです。
なお、水曜日は特別で、30分は首相が答えることが決まっています。まずは「首相のきょうの予定」を質問し、追加で事前の通知なくあらゆる分野の質問をするのが慣例です。
このとき、野党第1党の党首に限って6問まで質問ができ、野党がほぼ質問を独占できるので、毎週水曜日が事実上の党首討論になっています。

イギリス下院議会における野党からの質問時間
大統領制を敷きながらも、大統領の下に内閣総理大臣がおり、総理は議会内の多数から選ばれるフランスでは、法案の審議時間の最低60%を野党に割り振るルールがあります。
現在、国民会議(下院)の6割の議席を与党が占めているにもかかわらず、議席数とは無関係に、最低でも、6割の質問は野党がしているのです。
このように、どの国も野党に対し、質問の時間や件数を議席の比率よりも多く認めています。これは、議会に政府をチェックする役割が求められているからなのです。
このように、議院内閣制の先進国では、議席数に関係なく、野党の質問時間を多くとるのは常識になっています。
議席数に応じた質問時間などと言い出した自民党の言い分が、議院内閣制における野党の役割を全く理解しない笑止千万な首長であることは明らかです。

フランス議会
どこの国でも「行政権の肥大」に対する立法府による抑制が、どの国でも課題になっています。
その担い手は野党です。
安倍政権が全くそのあたりを理解していないことは明らかです。
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安倍1強に増枠」必要? 英独は野党を尊重
毎日新聞2017年11月6日 08時00分(最終更新 11月6日 08時00分)
自民党が国会の質問時間について、議席数に応じて与党分を増やすよう要求している。政府と一体のはずの与党の質問時間を増やすことは、どれだけ妥当なことなのだろうか。【和田浩幸】
「首相は答弁に立つたびに必ず(スーツの)ボタンをお掛けになる。礼儀を尽くしておられる姿、本当に好ましい」。今年3月の参院予算委員会で自民党の堂故茂氏がこう発言し、ネット上で「ヨイショ質問の最たる例」と話題になった。昨年11月の衆院内閣委では同党の谷川弥一氏が質問時間をもてあまし、般若心経を唱えて批判を浴びた。
衆院での質問時間は自民党政権の2008年は「与党4、野党6」で配分していた。同党は09年に野党に転落すると増枠を要求。旧民主党政権の下で「与党2、野党8」に見直し、安倍政権でもこれが続いてきた。
見直し要求は10月の衆院選で大量当選した若手に活躍の場を与えるのが名目だ。ただ、与党は予算や法律案を国会提出前に「事前審査」している。議席数通りに配分すれば「与党67%、野党33%」。議院内閣制の国会で政府に対するチェック機能は一義的に野党にあり、自民党内でも「フェアではない」との意見がある。
◇
「議会の母」と呼ばれるイギリスはどうだろうか。政府が国会運営に影響力を持つなど政府・与党の一体性が強い半面、野党第1党の党首は法律で「国王陛下の政府に反対する最大野党の党首」と定義される。議員歳費のほかに給与も支給される特別な存在だ。
英国議会を特徴付ける首相への「クエスチョンタイム(質問時間)」は毎週1回で、与野党の議員が交互に質問する。13年の国立国会図書館の調査によると、特に野党第1党の党首には6回の補足質問が認められ、与野党のトップが力量を競う事実上の「党首討論」とされる。
1985年以降は会期ごとに20日間の「野党日」を設定。野党が議題を決めて閣僚に質問できる。成蹊大の高安健将教授(比較政治学)は「イギリスでは政府・与党の力が強いが、野党も尊重され、意見表明の機会が重視されている」と語る。
ドイツ連邦議会には外交など大きなテーマを文書でただす「大質問」▽関心の高いテーマを聞く「質問時間」▽答弁が不十分な場合の「時事討論」など多くの質問の機会がある。05~09年では大質問と時事討論は9割以上、質問時間は8割以上が野党だった。
首相の権限強化など90年代以降の日本の政治行政改革は、イギリス型のスピーディーな国家運営を目指してきた。それだけに高安教授は「本来は野党議員の質問を重視して民意のバランスを取るべきだ。政権の都合の悪い質問は受けたくないという意思の表れではないか」と指摘した。
議席数は3分の2超、質問時間は2割
ことの起こりは、衆院選圧勝の余韻さめやらぬ10月27日。自民党の3回生有志が国会内で自民党の森山裕国対委員長に対し、野党に優先的に配分してきた国会の質問時間を見直すように要望したことだった。萩生田光一幹事長代行は申し入れがあったことを安倍晋三首相(党総裁)に報告。安倍首相は「これだけの皆さんが民意をいただいたので、われわれの発言内容にも国民の皆さんが注目しているだろう。そういう機会はきちんと確保する努力を党としてもやってほしい」と配分見直しを検討するよう指示した。
国会での質問時間は今、おおむね「与党2割、野党8割」になっている。一方、国会の議席は、10月22日の衆院選で自民党が圧勝。与党で3分の2の議席を確保した。「ならば議席配分にあわせて質問時間を見直すべきだ」というのが自民党側の理屈だ。
一見、もっともな主張のようにも思えるのだが、実はそうとはいえない。彼らの主張は、かなり筋の悪い訴えと言わざるを得ない。
「魔の2回生」は「魔の3回生」に
先ほど書いたが、最初に質問時間の配分見直しを求めたのは自民党当選3回生の有志。3回生は衆院解散の前は2回生だった。「魔の2回生」という言葉を記憶している人も多いだろう。2012年、14年の自民党圧勝の恩恵を受けて連続当選してきた若手の総称だが、「ゲス不倫」「セクハラやじ」「このハゲー」など自民党議員による不祥事は、いずれも「魔の2回生」によるものだった。
これら問題を起こした政治家は、議員辞職したり落選したりして3回生になれなかった者も多いが、今回の衆院選でも80人以上が勝ち残っている。彼らが「魔の3回生」と呼ばれ続けないためにも、国会質問をすることで経験を積み、成長したいという思いがあった。
選挙対策上の思惑もちらつく。自民党若手議員たちは、地元で後援者と会合すると「野党の人たちは頻繁にテレビ入りの国会で質問しているのにあなたはまったくしていない」と皮肉を言われることも少なくない。内容はさておき、国会で質問をすれば「うちの代議士は頑張っているな」ということになるし、後援会だよりやブログで安倍首相に質問している写真を掲載すれば反響も大きい。
気持ちが分からないではない。しかし、国会は選挙区の支援者向けに行うものではない。選挙対策で質問時間を増やすだけなら政治家としての経験は豊かにはならないし、不祥事もなくならないだろう。
今月1日に行われた首班指名選挙では、「魔の3回生」の1人である渡辺孝一衆院議員の投じた1票が無効となった。無効となった原因は、自分の名前を書き忘れたこと。渡辺氏は今回を含め3回連続で自民党の比例北海道ブロックの名簿上位で当選した議員だ。
与党議員にとって自分たちの首相に選ぶ1票はなによりも大切な仕事。3度目の首班指名でも間違いを犯す議員が、国会で質問をすることで急速に成長するとは思えない。
与党議員の仕事は「出来レース質問」ではない
ここで、なぜ質問時間が野党に優位に配分されているのかを考えてみたい。理由は2つある。
まずは国会対策での「思いやり」。与党は、法案をできるだけ早く、できるだけ正常な形で成立させたい。このため「われわれの質問時間を削り野党に譲る」というカードを野党側に切って、法案採決の日時の約束を取り付けたり、採決時に牛歩戦術などの抵抗をしないように求めたりする。これが常態化して今の慣例になっている。
安倍政権は「1強」確立以来、国会運営などで野党の理解を得ようとする努力がおろそかになっている。重要法案では強行採決を繰り返している。野党側の理解を得る必要性を感じなくなった政権が、野党側に譲歩してきた関連を見直そうと考えるのは、ある意味で必然かもしれない。しかし、少数意見に耳を傾ける時間を減らそうというのは安倍首相の言う「謙虚に」とは正反対の発想だ。
もうひとつ、きわめて重要な論点がある。日本の政策決定システムでは与党と野党の役割は決定的に違う、ということだ。国会で1本の法律を成立させる場合には、以下のような流れとなる。
(2)与党と意見交換、質疑
(3)与党の了承のもと法案を国会提出
(4)国会で質疑
(5)国会で採決、成立
ここでの与党議員の主な仕事は、政府と議論して法案をつくりあげ、国会に提出することだ。国会に法案を提出した段階で、党として賛成することは決まっており、法案づくりにも関与しているのだから、国会提出後に質問すべきことはあまりないはずだ。質問しても、答弁が最初から分かる「出来レース」のようなやりとりになってしまう。
国会での質問時間が、法案づくりに参加せず、内容を熟知せず、賛否を決めていない野党議員に多く割かれるのは当然のことなのだ。
自民党も野党側の質問時間を増やすように求めていた
質問時間の配分は、長い間、野党優先が続いていると書いたが、今の「与党2割、野党8割」という配分になったのは2009年、民主党政権が誕生してからのことだ。その前の麻生政権の時まではおおむね「与党4割野党6割」だった。
この変化は、「政府と与党は一体」という立場から、民主党が自発的に与党の質問時間を自民党を含む野党側に譲ったものだ。当時、自民党も野党側の質問時間を増やすように求めていた。今、自民党が議席数に基づいて配分を変えようとするのは、野党時代の主張と矛盾することになる。
安倍首相の「議席配分にあわせて質問時間を見直す」という理屈には道理がない。メディアはこの事実について、厳しく追及するべきだろう。
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