
第1部
今日の午前、私がまだ寝ている間に、娘未来はもう何十回目かになるんですが、宮崎駿の大傑作「ルパン三世カリオストロの城」を見てたらしいんです。
そのとき、ふと、思いついて、妻イエティが「未来、将来、クラリスタイプになりたいの?峰不二子タイプになりたいの?」と聞いたらしいんです。
もちろん、答えは、クラリス!6歳の女の子ですからね。王女様がいいに決まってます。「マリー・アントワネット」も何十回見てることか。
ところが、イエティは意地が悪いわけじゃないんですが、リアリストなんですよね。それで、むごいことに、娘に「クラリスは無理と思うよ。言葉も悪いし。」などと、身も蓋もないことを言ってしまったんですな。
当然、泣いて、クラリスになると言い張る未来に、さらに、峰不二子のほうがかっこいいやん!と、全く説得力のない会話を続けるイエティ・・・

確かに、宮崎駿という監督は、ナウシカしかり、クラリスしかり、女性観に大いに問題のある人なんで(峰不二子みたいなのは彼は大嫌いらしい)、いずれはね、そういうことがわかってきたらいいんですけどね。
6歳の夢見る乙女として、母親に頭ごなしに「あんた、お姫様は無理よ」と言われて納得できるはずのない未来。
私が寝ぼけ眼で起きてきたときに、未来がなぜかでかいカチューシャを頭につけて、ドレスみたいなのを着ていすに座ってるので、なんなんだ、と思っていたんですが、彼女なりのクラリスなりきり特訓法だったらしいんです。

で、その夜のこと。
3人で寝床でしゃべってたら、いきなり、未来が「私はクラリスがいいのに、ママは峰不二子っていう!」と憤懣やるかたない感じで言い出し、イエティも、しつこく「峰不二子のほうがええやん」というと未来が泣き出したのです。
私はすぐになんとなく事情を察し、「そりゃ、クラリスの方がいいよなあ!」と未来に言いました。「未来は髪の毛もサラサラやからクラリスになれるよ」と。
そして、「ところで、じゃあ、ママはカリオストロの城に出てくるなにかな。なにかな。あ、ママはあれだ、銭形警部だ!」と私が言うと、本人も納得したのか、うなずいてました。そういうところがイエティの度量の大きいところ。
「じゃあ、未来さあ、カリオストロの城に出てくる人の中で、パパはなにかな?」と、尋ねると、未来はすぐさま、
「ハエ」
(ハエって、まさか、蠅?)
「ハエって、カリオストロの城に出てきたかなあ?」
「ハエ」
私、悶絶してしまってそれ以上聞き出せなかったのです。
そりゃ、2時間もある映画だからハエも出てきたかもしれないけど(出てきてないわ!)、自分は峰不二子じゃなくてクラリスであることに命賭けてるくせに、こんだけ気を使ってやってる父親の登場人物、ハエってどういうことやねん!
ほんまに、こいつは人を人とも思わない、女王様みたいな人間になるのではないかと戦慄したのでした。
俺は、ザ・フライか!!?
第2部
クラリスになりたい娘未来に、「おとうさんはカリオストロに出てくる誰かな?」と尋ねたら、ハエ、と答えられたのが前回。
ハエなんて出てないじゃないか!と抗議するも、なんでも次元大介が食ってるカップラーメンの上を飛んでいるハエがいたのだそうだ。
どうしても納得できない私は、「とにかく人間にしてくれ。人間の登場人物!」というと、未来は、即座に、「衛視」というのだ。(難しい言葉覚えるなあ。カリオストロ伯爵の部下ですな)。
「名前がないでしょ、名前があるのがいい!!」というと、「あるよ、名前。グスタフ」と切り返され、ぎゃふんとなった。確かに衛視長はグスタフって名前だったよ!

でも、それで納得できますか?今日という今日は言ってやりました。
「ルパンの一味の中では、パパは誰かな?」
この、あしかけ一週間の、しつこいまでの質問に込められた父の思いを娘は知るや、知らずや。
未来、即答。
「ルパンさあ、パパのこと仲間にしてくれないと思うよ」
父の思いなど知る由もない娘であった。
完。