一般土木工事・一般建築工事における掘削と床掘の違い
公共工事や民間建築工事といった、一般的な土木工事・建築工事1における土工には、掘削と床掘2の2種類が存在します。
掘削は、「現状の地盤面から施工の基準となる地盤面まで土砂等を掘り下げる作業」を指し、「埋戻しを伴わない」というのが前提とされます。一方の床掘は、「構造物等の築造・撤去を目的として、現状の地盤面または施工の基準となる地盤面から土砂を掘り下げる作業」を指し、「埋戻しを伴う」というのが前提とされます。「掘削は埋戻しを伴わない」「埋戻しを伴う土工は床掘である」というのが大きなポイントです。
通信建設における、土工を指す語の独自用法
通信建設、すなわち「電気通信事業の用に供する電気通信設備を対象とする建設工事」において、土工を指す語は独自の用法が採用されています。具体的には、「埋戻しを伴う土工に対して掘削の語を用いる」「床掘の語は用いない」というのが通信建設における独自用法です。
「埋戻しを伴う土工」とは、典型的には「電柱の新設・撤去」が該当します。「電柱新設時に下穴を掘る」「電柱撤去時に地面を原状に復帰する」といった作業は、埋戻しを伴う作業です。一般的な土木工事・建築工事であれば、疑問の余地なく「床掘」の語が用いられます。しかしながら、通信建設においては、電柱の新設・撤去に伴う土工は「掘削」と称されます。
一方、「埋戻しを伴う土工に対して掘削の語を用いる」ことから、通信建設において「床掘」の語は用法がありません。ゆえに、通信建設において「床掘」の語は用いられません。
一般的な土木工事・建築工事において、「掘削」の語と「埋戻し」の語は対応する関係にありません。「埋戻し」に対応する語は「床掘」です。しかしながら、通信建設においては、「掘削」の語に「埋戻し」の語が対応しているのです。
この独自用法は通信建設全体の話なのか?
掘削・床掘の独自用法は、通信建設全体で使われている可能性が高いです。「通信建設工事の発注者である電気通信事業者の間で、掘削・床掘の独自用法を用いることについて共通認識が存在する」というのがその理由です。
「電気通信事業者の間の共通認識」というのは、具体的には「電気通信主任技術者試験の出題内容」を指します。電気通信主任技術者は、電気通信事業の根拠法である電気通信事業法において、電気通信事業者に必置とされる技術者です。電気通信主任技術者試験は、同じく電気通信事業法を根拠法とする、電気通信主任技術者として配置される者の資質を問う国家試験です。ゆえに、電気通信主任技術者試験の出題内容は、電気通信事業者の間の共通認識であると考えて間違いありません。
令和4年度第2回電気通信主任技術者試験、科目「線路設備及び設備管理」、問5-(2)の解答群には以下の記述が存在します。
③ 管路設備に近接して掘削が行われる場合の影響範囲は…
④ とう道設備に近接して掘削が行われる場合…
「既存の地下構造物に近接する箇所で、埋戻しを伴わない土工が行われる」というのは、既存の地下構造物への影響が大きすぎるため現実的ではありません。したがって、当該記述における「掘削」の語は、一般的な土木工事・建築工事における床掘を指すと考えるのが妥当です。
電力関係の工事でも同様の用法が用いられている?
電力関係の工事においても、「埋戻しを伴う土工に対して掘削の語を用いる」という独自用法が用いられている可能性があります。
↑関西電力送配電のWebサイトには、「道路での掘削工事」と題されたページが存在します。当該Webページの記述は、「地中埋設電線路に接近する道路において土工を行う際の注意事項」を内容としています。こちらの「掘削」も、上述「電気通信主任技術者試験における記述」と同様、一般的な土木工事・建築工事であれば「床掘」の語が用いられる内容です。