「住宅ローン金利上昇」を騒ぐ人に欠けている視点「報道されていない内容」を深読みすると…
住宅ローンの変動金利上昇が本格的に2024年10月から始まった。大手5行(メガ3行・住信・りそな)が既契約の変動金利の0.15%利上げを決定した。新規契約については足並みが揃わず、同様の利上げをする銀行と据え置きを含めて顧客属性次第で対応する銀行に分かれた。今回の「変動金利上昇問題」にどう対処したらいいのだろうか?
日銀が金融引き締めに舵を切った際に、私は変動金利について、「ほぼ上がらないだろう」と配信動画や取材などで発言していた。なぜならば、先に金利を上げたら、貸付額のシェアを奪われるだけだからだ。つまり、「上げたくても上げられない」がまん大会の様相を呈すると思っていたのだ。
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新規で住宅ローンを借りる人への影響は?
今回の利上げは想定以上に大きな上げ幅であった。しかし、報道されている内容よりも、報道されていない内容を深読みすると重要な意味が隠されていることがある。
今回の報道で「大手5行」とされている銀行は、住宅ローンの大手ではない。住宅ローンの主力行は今やネット銀行である。ネット銀行では住宅ローンが主力商品となっており、その利上げ幅は今のところ非常に小さい。実際は、がまん大会が継続していると私は見ている。
そうなると、今後起こるのは、住宅ローン業界におけるネット銀行へのさらなる顧客集中化。新規では金利を上げた銀行からネット銀行に顧客が流れるだけの問題だ。大手5行の中には、新規貸し出しは金利据え置きというダブルスタンダードを用いている銀行もあるのは、それを避ける意味合いがある。
こうして、新規で借りる側にはあまり大きな問題には今のところなっていないと見ることができる。
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また、「変動金利は短期プライムレートと連動する」と明記している銀行は多い。その短期プライムレート連動の基準金利は昔からかなり高く、優遇金利を引いて住宅ローンの変動金利は決められている。例えば、短期プライムレート1.5%、基準金利は+1%した2.5%、優遇金利が-1.8%で、住宅ローンの変動金利は0.7%といった具合だ。
大きな幅を持つ優遇金利には特段の根拠が見られないことから、基準金利は「店頭金利」とも言うように見せかけで、優遇金利は銀行都合でどうとでも設定できるようになっている。
その証拠に、変動金利で借りた金利は新規貸し出しの金利が下がっても下がらず、「固定金利」になっている。その意味でも、今回の報道はすでに変動金利で住宅ローンを借りている人たちだけの問題だとわかる。
そうなると、ニュースの影響範囲が決まってくる。今回の「17年ぶり」の利上げは、借りているほとんどの人が対象になる。その間、つねにあったローン控除の割合が0.7~1%の範囲内にある人が多く、借りている金利から0.15%上がるとはいえ、金利がローン控除割合を超えない人が多いと考えられる。超えたとしても、これまでのローン控除の累計額と相殺すればプラスの人が大多数だろう。
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利上げによる住宅ローン返済額の変化
次に、返済額の変化に着目してみよう。金利が0.15%上がると、返済額は最大2.7%増える。しかし、2013年以降のマンションのインフレ率は年率6~13%だったので、すでに含み益は数十%ある人が多い。返済額の上昇幅より価格の上昇幅がつねに圧倒的に大きかったので、トータルの収支にはだいぶ余裕がある。
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変動金利についてもう少し詳しく見てみよう。多くの銀行では変動金利が上がる際には、以下の3つのルールがある。
2:毎月の返済額は「5年間」は変わらない
3:毎月の返済額の増額は以前の「125%」を上限とする
1があるので、数カ月後に金利が見直されるが、5年間は返済額が変わらずに金利だけが増え、その分元本の減少が緩やかになる。「125%ルール」になるには金利が1.4%上がる必要があるが、今回の利上げ幅はその約10分の1にすぎない。
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住宅ローンを借りるという「ゲーム」に勝つには
住宅ローンを借りることをゲームと想定して、戦略上大事なことを整理しておこう。次の5つは私がゲームに勝ちたいときに必ず使っている戦略構築の枠組みだ。
① 「ゲーム」のエッセンスを深く理解する
まず、住宅ローンはローン控除を含めると「超借り得」であることに変わりはない。金利が多少上がっても、不動産価格が下がることはない。一般論では、金利上昇は需要減退させ、価格の下げ要因になる。しかし、マンション価格は新築価格が牽引するもので、マンションデベロッパーの借入金利の上昇はコストプッシュになって新築価格に上乗せされるだけだからだ。
② 勝敗に至る「因果関係」を深く理解する
「金利は低く、期間は長く、借入額は多く」が原則で、これが最も得をする。金利が上がると繰り上げ返済を考える人が出てくるが、0.6%を繰り上げ返済しても0.6%で運用したことと同じ意味しかなく、効果は低いのでやらないほうがいい。それに、住宅ローン控除の期間内なら、返済したら損をすることになる。
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③ 「相手」の出方を事前に調べておいて、推量する
ネット銀行の金利が最も低く、貸し出し上位行であり、シェアに響くので金利は上げにくい。最大手が0.01%の金利上げで大ニュースになったくらいなので、これは今後も変わらない。
④ 安心の「拠り所」(勝ちパターン)を用意しておく
住宅ローンを変動金利で借りている人は住み替えをしたところで、当面は今までより高い金利になるだけだ。持ち家に住み続ける選択肢を選択していることは変動金利上昇の影響を最小限にしていると考えよう。つまり、リスク回避のために「現状維持でいい」という拠り所があれば、焦る必要はないはずだ。
⑤ ゲーム中は「想定の範囲内」をつねに保つ
住宅ローン金利は上がってもローン控除の範囲に収まっているケースが多いはずだ。これは想定の範囲内だし、住宅ローンを借りた当時の固定金利より1%以上安い金利で借りているのだから、変動金利を借りた選択は正しかったことに変わりはない。
また、金利上昇局面において、変動金利から固定金利に借り換えることを考えても、固定金利は変動金利以上に金利が上がってしまっていて、借り換えるのは現時点で現実的ではない。この程度の金利上昇は「想定の範囲内」と静観しよう。
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金利上昇は逆風なのか、追い風なのか
最後に、金利上昇の逆風が吹いているように見えて、追い風になることだってあり得ることを伝えておこう。住宅ローン控除は超低金利になったことで、会計検査院(税収の出方に無駄がないか監視している役所)から「住宅ローンは超低金利なのでマイナス金利の益税になっている」と指摘され、1%から0.7%に縮小した経緯がある。
金利上昇局面では逆に拡大される可能性すらあるし、ロビー活動に強い不動産業界は遠くない将来にそれを主張する日が来るだろう。金利上昇はローン控除で相殺される可能性が高く、その税制改正を見届けてから住み替えを考えても遅くはないと考えている。


























