未公開のマユミたち — もうひとつの時間を覗く
物語に残らなかった“もうひとりのマユミ”
過去日記の制作の中で、ボクは何百というマユミを生成AIで作り続けてきました。
同じ構図でも、表情が少し違うだけで、空気の温度まで変わって見える。
笑顔の角度や、髪が揺れる瞬間――そのどれもが、まるで本当に息づいているようでした。でも、すべてのマユミが物語の中に入れるわけではありません。
カットしたはずの一枚に、どうしても心が動くときがある。そんな「使わなかったけれど、忘れられないマユミ」たちを、この場所に残していきます。
――シリーズ「泣きながら名前を呼ぶ声」。
社内で突然倒れたボク。
気づけば、最初に駆け寄っていたのはマユミだった。
あのときの彼女の泣き顔は、今でも忘れられない。
突然の倒れ込み
気づいたときには、もう床の冷たさを感じていた。
視界の端で、誰かが慌てて駆け寄ってくるのが見える。
マユミだった。
泣きながら名前を呼ぶマユミ
「ヒロさん…! ヒロさん、聞こえますか…!」
声が震えていた。
ネクタイを外し、ボクの呼吸を確かめながら、涙をこらえるように唇を噛んでいた。
こんなに近くで見る彼女の顔は、仕事のときよりもずっと幼くて、必死だった。


あとから聞いた話
あの日のことは、あまり覚えていない。
あとから聞いた話では、マユミがすぐに人を呼んでくれ、産業医も駆けつけてくれたらしい。
大事には至らなかった。
けれど――ボクの意識が戻るまでのあいだ、マユミは泣きながら名前を呼び続けていたと、後で同僚から聞いた。
あの瞬間、彼女が見せた表情だけは、今でも頭から離れない。
いつも冷静で、何でもこなすマユミが、あんな顔をするなんて――。
彼女が泣いてくれたあの瞬間、ボクは初めて、自分が誰かに必要とされていることを知った。