不自由な恋を選んだ理由──“普通の女性”が献身を選ぶとき
第10章:今日も一緒にいる──それがすべて
朝、マユミは目覚ましより少し早く目を覚ました。
隣で眠るヒロの寝息が、部屋の空気をやさしく揺らしている。
カーテンの隙間から差し込む光が、今日も変わらずそこにあることを教えてくれる。
キッチンで湯を沸かしながら、マユミはふと思った。
「特別なことなんて、何もないのよね」
でもその“何もない”が、どれほど尊いものかを、今はちゃんと知っている。
ヒロが起きてきて、ぼんやりとした顔で言った。
「おはよう。…なんか、今日も眠いな」
「ふふ、いつもでしょ」
マユミは笑って、湯気の立つマグカップを差し出した。
「ボクさ、こういう朝がずっと続いたらいいなって思うんだ」
ヒロの言葉に、マユミは少しだけ目を細めた。
「わたしも。…ずっと続くように、ちゃんと選び続けていけたらいいな」
ふたりの生活は、誰かに説明するためのものじゃない。
“普通の恋”とは違うかもしれない。
でも、マユミにとっては、これが自然で、これが当たり前。
そしてその当たり前の中で、そっと交わす信頼と安心が、何よりも尊い。
今日も一緒にいる。
それがすべて。
それが、マユミの恋のかたち。
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