不自由な恋を選んだ理由──“普通の女性”が献身を選ぶとき
第8章:誰かのためじゃなく、“自分たちの選択”として
「ボクさ、最近ちょっと考えてたんだ」
ヒロがそう言ったのは、マユミが洗濯物を畳んでいた夕方だった。
窓の外では、近所の子どもたちが遊ぶ声が遠くに聞こえていた。
「なにを?」
マユミは手を止めずに聞き返す。
「この先のこと。仕事とか、住む場所とか……ボクたち、どうしたいんだろうなって」
ヒロの声は、いつもより少しだけ真面目だった。
マユミはタオルを畳み終えて、ヒロの隣に腰を下ろした。
「うん……わたしも、ちょっと考えてたの。誰かに言われたからじゃなくて、自分で決めたいなって」
「ボクもそう。親とか世間とか、もちろん気にはなるけど……それより、ボクたちが納得できるかどうかのほうが大事だと思う」
「そうね。ふたりで決めたことなら、きっと後悔しないわ」
マユミはそう言って、ヒロの肩にもたれた。
その瞬間、ふたりの間に流れる空気が、少しだけ変わった気がした。
“誰かのため”ではなく、“自分たちの選択”として未来を考える──それは、ふたりにとって初めてのことだった。
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