恒例の梨狩りドライブ、今年は義理の芋生も一緒に
結婚してから、ボクはマユミへの感謝と慰労を込めて、季節ごとにドライブへ連れ出すようになった。
行き先は、もう恒例になった梨狩り。ここ5年ほどは、毎年訪れる小さな旅だ。
今年は義妹のマキも一緒に、家族3人で出かけることにした。

車窓から広がる風景と、旅のワクワク感
クルマは千葉へ向かって走り出す。
窓の外には、夏の名残りの青い空と、少し色づき始めた山の稜線。

途中、海の上の東京アクアブリッジを走って千葉県に入り、田んぼでは黄金色の稲穂が風に揺れていて、「ほら、キレイだね」とマユミが嬉しそうに指をさす。
後部座席のマキも「もうすぐ梨? もうすぐ?」と待ちきれない様子。
そのやりとりを聞きながら、ボクはハンドルを握りつつ、心の奥がじんわり温かくなる。
こういう瞬間が、きっと家族の宝物になるんだろうなと。
スーパーとは違う!もぎたて梨の格別な美味しさ
クルマで1時間30分で、千葉県の梨園に到着した。
毎年お世話になっている若夫婦が迎えてくれる。旦那さんは日焼けした笑顔が爽やかで、奥さんは飯島直子を思わせるような美人。
「今年もいらっしゃい」とニコニコ案内され、梨園の奥へ。

カゴを受け取り、陽を浴びて輝く枝を見上げる。
梨を手で「プチッ」ともぎ取る瞬間、その小気味よさに思わず笑顔になる。
かじれば、みずみずしい甘さが口いっぱいに広がる。
「美味しいね」
気がつけば、毎年同じ言葉を繰り返している。
テレビのグルメ番組みたいな気の利いたコメントなんてできない。
でも、この素直な「美味しい」だけで十分だと思う。
梨談義と「新高」の贅沢
梨園の旦那さんが笑いながら話してくれる。
「やっぱり新高は人気なんですよ。大きいものは1個1,000円近くしますけど、味が違うんです」

ボクも頷きながら「確かに、他の梨とは次元が違いますね」と返す。
そのやりとりを横で聞いていたマユミは「でも美味しいから、つい奮発しちゃうのよね」と笑った。

今年は家族が増えたので10個ほど獲って、箱に詰めてもらう。
特大の新高4個に秋月6個。
「ほっぺが落ちるほど美味しい」という言葉は大げさじゃなく、本当にぴったりだった。
義母へのお土産と、懐かしい夕ご飯
帰り道、義母の家へ立ち寄り、お土産の梨を秋月3個と新高1個手渡す。
「まぁ、ありがとうねぇ」と母は嬉しそうに笑った。
そのまま夕飯をご馳走になることに。

食卓には煮物、焼き魚、味噌汁、そして炊き立ての白いご飯。
「やっぱり義母さんの味は落ち着くなぁ」と心の中で思いながら箸を進める。
梨狩りの話をしながら食べる食卓は、どんな高級レストランよりも贅沢に思えた。
マユミもマキも笑顔で、実の娘たちの顔を見れて義母も嬉しそうにしている。
その光景が、ボクにとって一番のご馳走だった。
このドライブは、ボクにとってただの気分転換じゃない。
マユミと過ごすための、かけがえのない時間なんだ。
自然の中で深呼吸をすると、少しずつ自律神経も整っていく。けれど、本当にボクの心を整えてくれるのは――隣に座るマユミの笑顔だ。
梨をひと口かじって「美味しいね」と顔をほころばせる、その瞬間。
ただそれだけで、ボクの心は満たされていく。
夫婦って、きっと大きな言葉や派手な出来事じゃなくて、こうして「同じ瞬間を同じ気持ちで味わえる」ことなんだろう。
その小さな積み重ねが、ボクたちのかけがえのない日々を作っている。
そして、ふと考える。
あの日、マユミと出会わなければ、こんな時間はなかったのかもしれない。
偶然が重なって、今こうして隣にいてくれる。
その奇跡に、ただただ感謝する。
「ありがとう、マユミ」
声には出せないけれど、心の中で何度もつぶやきながら、ボクはハンドルを握り続けていた。