朝の空気と机越しのまなざしデザイナーとプロデューサーのはじまりの気配
午前8時すぎ。
職場にはまだ半分ほどしか人が来ていない。
ボクは早めに席について、PCを立ち上げながらマウスの感度を調整していた。ふと前を見ると、マユミがコーヒー片手にゆっくりと歩いてきた。

「おはよう」
ボクはすっと声をかける。
「……おはよう。昨日のデザイン、ちょっと気になったから後で話せる?」
マユミは静かに言って、自分の席につく。
「ああ、何かズレてた?」
「ううん。ヒロの作るものって、ちゃんと伝えようとしてる感じがあるから、好きだけど……たまに、その“伝えすぎ”が惜しい時があるの」
ボクはその言葉に「なるほど」とだけ返したけれど、どこか嬉しい気持ちになっていた。
隣のデスクでマユミがノートPCを開く。画面に顔が照らされ、横顔がくっきり浮かび上がる。

誰かが窓を開けたのか、朝の風がふわりと空間を動かした。
「じゃあ、あとでレビューお願い。……さん付けは、今日も忘れずにね」
マユミが目線を画面に戻しながら、最後だけ少し笑って言った。
ボクは思わず頷いてから、「マユミさん、よろしくお願いします」と社内ルール通りに返す。
朝、仕事中、誰もいない間に、こういう風にマユミを見ている時間が好きだった。
ほんの短いやりとりだったけれど、心にあたたかい手触りが残る朝だった。
Voyage まだ会社に人もまばらな早朝、二人の間に流れる穏やかな時間や、「ヒロの作るものって、ちゃんと伝えようとしてる感じがあるから、好きだけど……」というマユミの言葉に表れる、ボクの仕事への理解と尊敬の念が、「Voyage」の持つ包み込むような温かさと重なります。