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美容室でよみがえる記憶!夫婦と20年のヘアストーリー『ふたたび髪に触れる日』:過去日記160

お知らせです 画像は後ほどアップさせていただきますね。また、他の日記についても、時々、昔の写真を新しく生成し直したりしています。そんなふうに、少しずつ手を加えていけたらと思っています。どうぞ、これからもよろしくお願いいたします。

10年ぶりの美容室で、記憶がそっと動き出す

今日は、ひさしぶりに髪を切りに出かける日だった。  

ImageFX美容師

ボクは少し早めに美容室に着いて、受付で名前を告げると、Tさんが笑顔で「お久しぶりです、10年ぶりですね〜」と声をかけてくれた。  

そんなに経ったんだ、とボクは少し驚いた。

今まで担当だった美容師は独立してしまって、今回は店長にお願いしようとしたものの、スケジュールはびっしり。

空いている人を探すと、10年前に担当してくれていたTさんがちょうど空いている。

しかも10年経ってまた戻ってきていたらしい。「これは縁だな」そう思って、ボクはTさんを指名した。

カットだけならすぐ終わるはずだった。でも今日は、なんだか少し違う気分だった。美容室という場所には、不思議と記憶を手繰る力がある。

 

鏡の向こうに見えた、あの日の緊張と初対面の記憶

鏡に囲まれた空間の真ん中に、ボクは座っていた。

ふと昔のことを思い出す。中央のソファに座っていた自分の姿。

マユミに紹介してもらって、予約入れて来たものの女性客ばかりの中で、慣れない空気に小さくなっていたあの日。

女性客に囲まれて、どこか緊張しながらも通っていた。あの頃は男性客はゼロだった、ボクが通うようになってぽつりぽつりと増えてきた。

ボクも1年経って慣れてきて、話すことが楽しくなって、世間話やマユミの話もするようになった。

てきぱきと進むカットとカラー、その中にある静かな再会

「今日はどうなさいますか?」

「横と後ろは短めで、トップと前髪は長めでお願いします」

Tさんの手はてきぱきと動いて、音のリズムが妙に心地よかった。カットが終わり、カラーの相談。ブラウン系の中から、少し暗めの色を選ぶ。

「もう一段、暗めにしたいです」

「はい、少々お待ちくださいね」

染めている間、ボクはふとマユミと並んで座っていた日々を思い出した。

予約を合わせて、鏡越しに見える笑顔にほっとしていた頃。美容室という空間に、どれだけ自分の時間が刻まれていたのか。

切られる髪と一緒に、そんなことが少しずつよみがえってくる。

 

ふたり並んだ椅子、ヒロとの会話が生んだあたたかさ

あの美容室は、わたしが22年前から通っていた場所だった。  

ImageFX美容師

Sさん――少し年下の浜崎あゆみみたいな雰囲気の、やさしい店長さんがいて、わたしはずっと彼女に髪を切ってもらっていた。

話好きなわたしと、穏やかに耳を傾けてくれるSさん。季節の話、子どもの話、仕事の愚痴――どれもがその鏡の前では、ちょっとだけ軽くなっていた。

ヒロと結婚してから、彼も通うようになって、一緒の日に予約して並んで座ったこともあった。

はじめは緊張していたみたいだけど、だんだん慣れて話すようになって。

Sさんはヒロのそういう空気にもやさしく寄り添ってくれる人だった。

Sさんの独立と変わらないやさしさの居場所

独立したあと、わたしは新しいお店にも足を運んだ。変わったのは場所だけで、Sさんのやさしさは変わらなかった。

その空気に触れるだけで、「ここが自分の場所だな」と思えた。

 

麦茶の香りと夕暮れ、帰宅後に交わす夫婦の時間

その日の夕方。ヒロが美容室から戻ってきた。

「ただいま。今日、美容室行ってきたよ」

台所では麦茶を煮出していたところだった。やわらかく立ちのぼる湯気に、懐かしい香りが混ざる。

「おかえり。もう終わったの?早かったね」

わたしは湯呑みをテーブルに置いて、ヒロの髪を眺めた。  

少しだけ短くなった気がした。色も、なんだか落ち着いて見える。

「カラーも変えた?」

「うん。少し暗めのブラウンにしてみた。落ち着く色がよくて」

「似合ってる。今日は誰にお願いしたの?」

「店長が忙しくてね。空いてる人を見たら、Tさんが戻ってきてて」

「えっ、Tさん? 懐かしい……戻ってきたんだね。てきぱきしてて、気持ちいい人だったよね」

ボクは笑いながらうなずいた。

「10年ぶりだったのに、覚えててくれててさ。昔のことも少し話したよ。Sさんのことも」

「Sさんかぁ……あの人の空気って、不思議と落ち着くのよね。わたし、あの雰囲気にずっと助けられてた」

「そういえば、あの頃はよく予約を合わせて一緒に並んでたね。君は美容師さんと話すのが楽しそうだった」

わたしは湯呑みを持ち上げて、くすっと笑った。

「だって、美容室って話す場所じゃない? 髪だけじゃなくて、気持ちもちょっと軽くなるのよ」

ヒロの声は、どこか懐かしさに包まれていた。

「今日、久しぶりにそんな感じだった。カットされながら、昔のこともいろいろ思い出して……少し、整った気がする」

窓の外では、夕陽が静かに傾き始めていた。麦茶の湯気に紛れて、ふたりの会話もゆっくり部屋を満たしていた。

髪を切るという小さな出来事が、心を整えてくれる

ふたたび髪に触れる日――それは、過去と今がやさしく繋がるひとときだった。

鏡の前で感じるやわらかい気持ちも、夕暮れの匂いと混じる記憶も、わたしたちの暮らしのなかにちゃんと残っている。

 




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