🧡【家族よりも優しい人がいる】血より濃い“やさしさ”をくれた人との物語

昔、家族と衝突したことがある。
ボクの病気のこと、わかってくれていると思っていた親戚に、「あなたのせいでこっちが損してる」なんて言われた。
ボクの兄妹はこんなに思いやりのない奴等ばかりだったのかと、この時になって知った…
自分たちのことばかり優先で、僕のことは知らん顔していたのに…
世話になろうとは思っていないけれど、この人たちには、もうウンザリした。
ボクの体調のことなど何も関係ないみたいな感じで、体調の「た」の字も出てこなかった。
…そのとき、何かが音を立てて崩れた。

“家族だから”という言葉が、ただの飾りのように思えてしまった。
それ以来、ボクは心に決めた。
「縁を切る」
たとえ血がつながっていても、無理な関係なら距離を置いてもいいと。
職場でも、意地の悪い人とは必要以上に関わらない。
それが、ボクなりの“心を守る距離感”だった。
でも、マユミだけは違っていた。
忙しさでピリピリしているときも、時に彼女の声が少しだけ強くなるときも、
なぜか彼女は、いつもボクの隣にいた。
気まずくなることがあっても、気づけばたわいない話をしていて、そのやりとりのなかで、ボクの心がふっとほどけていくのを感じていた。
彼女は、ボクの過去を知っている。
そして、今もなお、ボクを見続けてくれている。
薬が足りなさそうなときは、黙って薬箱を整えてくれる。
ボクが少し疲れている日は、夕飯のおかずがいつもより一品多い。
何も言わなくても、目が合うだけでわかってくれるやさしさ。
それがマユミだった。
マユミは、ボクにとって、血のつながりでは得られなかった“やさしさ”そのものだった。
下手な親戚や兄弟は、ふだん会いもしないし、連絡もない。
何年も音沙汰のない人たちに、ボクの体調を気づかうはずもなかった。
でもマユミは、毎日、会社でボクと顔を合わせる。
その日その日のボクの状態を、目で、空気で、ちゃんと把握している。
妹から心配の電話がかかってきたことなんて、一度もない。
きっと、もう10代の頃のボクのままだと思っているのかもしれない。
でも――
今のボクは、ちゃんと歳を重ねていて、昔のように無理はきかない。
それを、血のつながった家族は見ていない。見ようとしない。
マユミだけが、付き合う前から、誰よりも近くにいてくれた。
何も言わなくても、静かに寄り添ってくれた。
“血は水よりも濃い”ということわざがあるけれど、ボクにとっての真実は、少し違っていた。
血がつながっているからこその絆――
絆、そんなもの、ボクの兄妹と親戚には無かった。
マユミは、血のつながりのない“赤の他人”だったのに、身内よりも深く、誰よりも自然に、ボクの心に入り込んできた。
そんなふうに、いつの間にかボクの人生に溶け込んだ人。
だから、今日もまた――


彼女の隣にいられるボクは、ほんの少しだけ、自分のことを好きでいられる気がする。