アイロンの余熱と、朝のやさしさが満ちるとき
月曜日の朝。 ヒロは出勤の支度をしながら、クローゼットの前で立ち尽くしていた。
「……あれ、着ようと思ってた白シャツ、どこ行ったっけ」
マユミはキッチンでコーヒーを淹れながら、ふと振り返る。 「昨日、洗濯してたでしょ? 今アイロンかけてあるよ、テーブルの上」
「あ、本当だ……」

リビングのテーブルには、きちんとたたまれた白シャツ。 袖にはうっすらとアイロンのあとが残っていて、あたたかな匂いがした。
「ありがと。……あれ、これ、もしかして朝からやってくれたの?」
マユミはちょっとだけ頷いて、コーヒーの湯気越しにヒロを見た。

「うん、だって、今日ちょっと大事な打ち合わせなんでしょ? ヒロが気持ちよく出かけられるほうが、いいと思って」
ヒロは白シャツを胸に抱いたまま、少し照れたように笑う。
「……なんかさ、アイロンかけられたシャツって、着るだけでシャキッとする気がするよ。今日もがんばれるかも」

マユミはコーヒーカップをテーブルに置いて、ぽそっと言った。
「じゃあ、今度の土曜日は、私にもアイロンかけてね。……じゃなくて、マッサージのほうがいいか」
ふたりの笑い声が、静かな朝の部屋にふわっと広がった。
外では、青空が少しずつ広がっていた。