『姉妹と過ごす特別な休日—デパートでの温かなひととき』
休日の午後。

デパートのエレベーターの前で、マユミがふとボクの方をふり返った。
「ねぇ、ヒロ。今日は、服選び付き合ってね。……あ、マキのも一緒に」
その横でマキが嬉しそうに顔を上げる。

「えっ、ほんとに? お姉ちゃんだけじゃなくて、私のもいいの?」
ボクは笑ってうなずいた。
「うん。せっかくだし、マキも似合うの選んで。今日は二人の服、どっちもボクが買うよ」
「やったーっ!」

マキがパチンと手を鳴らして、マユミにぴったりくっついた。
「お姉ちゃん、今日は一緒にいっぱい着ようね」
「はいはい」
マユミはちょっと照れながらも、妹の腕をやさしく引いた。
洋服売り場に着くと、姉妹はすぐに目を輝かせた。
マユミは落ち着いた色のワンピースを手に取り、マキはそれより少し明るめの、可愛らしいワンピースを見つけていた。

「お姉ちゃん、これどう思う?」
「いいじゃない。こういうの、似合うと思うよ」
「えへへ、ヒロお兄ちゃんは?」
「うん。マキっぽくて可愛いと思う。たまには、カジュアルじゃなくてオシャレもいいね」
「うんっ。嬉しいなぁ……今日はちょっと、女の子って感じする〜」

マキのそんな無邪気な言葉に、マユミが吹き出す。
「いつも女の子でしょ、あんたは」
「そうだけどさー」
二人で笑い合う姿を、ボクは少し離れた場所から眺めていた。
試着室のカーテンが開くたびに、マユミは静かに、マキは嬉しそうにポーズをとる。

「これ、お姉ちゃんと似たデザインだよ」
「じゃあ、おそろいコーデだね」

「ねぇ、お兄ちゃん。これ二人で並んで着たらどう? 変じゃない?」
「ううん。すごく似合ってる。二人とも、なんか……可愛いよ」
そう言うと、マユミがふっと照れ笑いして、マキが「やったね」とガッツポーズ。
ほんの数年前までは、マキはまだ制服姿で、マユミにべったりだったのに。
今はもう、すっかり大人の顔になって、姉と一緒に服を選んでる。
その光景が、なんだかちょっと胸にくる。
ワンピースを買ったあと、3人でレストラン街へ向かう。
「ふたりとも、ほんと似合ってたよ」
「うん、お姉ちゃんが選んでくれたから間違いないよ」
「マキがちゃんと大人っぽいの選んだの、初めて見たかも」
「だって、今日は特別だもん。お兄ちゃんが“買っていいよ”って言ってくれたからね」
笑いながら、姉妹が腕を組んで歩いていく。

その後ろ姿を見て、ボクはまたちょっとだけ感慨深くなる。
(ふたりがこうして仲良くしてるの、なんかいいな……)
夕焼けがビルのすき間から差し込んできて、空も街も、すこしやさしく見えた。
レストラン街の灯りがにじみはじめた頃、「今日、ほんと楽しかったね」とマキが言った。
ボクはそれを聞いて、静かにうなずいた。
「うん。いい休日だったね、今日は」ボクはしみじみと思った、ボクにはこういう経験がない、仲の良い兄弟は憧れだった。
それは体験できないけど、見ることが出来て、ボクもこの年になって兄妹体験が出来たのだから幸せなことだと思った。
そうして、姉妹の笑い声を聞いて夕焼けが静かに落ちていく時間を、3人で大切に歩いていた。