『変わらないスーパーと、変わらないふたり』
「今日、あのスーパー寄っていこうか」
そんな会話を、ボクたちはもう何度しただろう。
クルマで10分もかからない場所にある、大型スーパー。
結婚してから、ずっとボクとマユミの“定番”だった。
そのスーパーがオープンしたのは、もう15年前。でも、ボクたちはそのときにはもう結婚していて、当然のように一緒に買い物に出かけていた。
新婚の頃は、仕事が終わるのが遅くなることも多くて、晩ごはんを作る食材が足りない夜、「助かったね、24時間営業で」って笑いながら、夜の11時にふたりで買い出しに行ったりしてた。
照明にに照らされた深夜のスーパーは、ちょっとだけ映画のワンシーンみたいで――
「夜のデートみたいだね」なんて、マユミが冗談を言ったことを、今でもよく覚えてる。
お惣菜の他に、洗剤の詰め替えやトイレの消臭剤は3本まとめてカゴに入れる。
トイレットペーパー、スナック菓子はマキの分までしっかり確保。

アルコールはマユミに止められているから、代わりにノンアルコールの1缶をひとつ買わせてもらった。
日用品が安いのは変わらないから、結局あれもこれもとカゴが山盛りになる。
「これ、1人じゃ絶対無理だよね」
「うん、だから一緒に来るんでしょ」
なんて言い合いながら、クルマに戻る。
カートに荷物をまとめて、ゴロゴロと駐車場を歩く時間も、なんだかんだ楽しい。

買い物を終えると、マンションの駐車場から荷物を持って、軽い袋はマユミが持ってくれる。
「重たいのは任せたからねー」なんて言いながら、ボクの顔をちらっと見てくる。
そんな仕草が、今でもちょっとドキッとするのは、きっと内緒だ。
──
そして、現在。
スーパーはちょっと未来っぽくなった。
カートにはタブレットが付いていて、商品をピッとスキャンするだけで精算まで済む。
「ねえ、これって……どうやるんだっけ?」
「ヒロ、また忘れたの?」
マユミが笑いながらタブレットを操作する。
「もう、何回目よ。早く覚えてってば」
その“あきれ笑い”が、なんだか心地いい。
結婚して20年。
スーパーも便利になって、ボクたちも少し年を取った。
けれど、ふたりで並んで歩くこの時間は、なぜかあの頃と少しも変わっていない気がする。
レジに並ばなくてもよくなったけど、マユミの隣にはちゃんと並びたい。
そんな風に思えるスーパーでの買い物は、きっとこれからも、ずっとボクたちの“小さな週末”なのだと思う。