「春、新しい家族のかたち」
春の光が差し込むダイニングテーブルの上には、引っ越し祝いのケーキが置かれている。

マキの新生活が始まる。ここ、ヒロとマユミ夫婦が暮らすマンションで。
ヒロは、マキが荷物を整理するのを眺めながら、不思議な気持ちになる。 義理の妹と同じ家で暮らすというのは初めてのことだが、戸惑いよりも安心感のほうが強い。
「マキは賢いし、マユミにも似てるし、きっと問題なくうまくやれるだろう。」 そう思うと、心の中が少し穏やかになった。
マユミがそっとマキの肩に手を回して。 「この家、もうマキの家だよ。遠慮しないでくつろいでね。」

マキはその言葉に、少し緊張した表情を緩め、優しく微笑む。
「ありがとう、お姉ちゃん。……なんだか、不思議な気持ち。」 「そうだね。でも、家族だもん。すぐに慣れるよ。」
ヒロは二人のやりとりを聞きながら、ふと、お母さんのことを思い出した。 お母さんは、これから少し遠くの家で一人暮らしになる。 きっと寂しさもあるだろう。
だからこそ、自分がもっと広い家に引っ越して、お母さんを呼び寄せることができたら――。
その想いを、ヒロはマユミにそっと打ち明けた。
「いつか、部屋数の多い家に引っ越してさ……お母さんをここに住ませられたらいいなって思ってるんだ。」 マユミは少し驚いたように目を丸くした後、静かに微笑んだ。
「それ、うれしい、素敵ね。お母さん、喜ぶと思う。」

「まだ先の話だけど……でも、いつか必ず。」
マキはその会話を聞きながら、お母さんのことを思い浮かべる。
優しくて、二人の姉妹を大切に育ててくれた人。 「お母さんも、一人暮らしには慣れるだろうけど、やっぱり家族がそばにいる方が安心だよね。」 そんなことを考えながら、マキは春風がそっとカーテンを揺らすのを眺めた。
新しい生活。新しい家族の形。
それは、少しずつ、温かいものへと変わっていく。