「ヒロとマユミ」──そして、小さな春がもうひとつ
キャラクタープロフィール
ヒロ(宏樹):
ヒロは、口下手で人付き合いが苦手、ちょっと不器用だけど、誰よりも優しい青年。
仕事の無理で体を壊して、もう無理はしないけど、って出来ないけど、誰かのためならがんばれる。一人っ子だから、ちょっと寂しがり屋なところもある。
だけどその分、人の優しさにもすぐ気づける、マユミのことが好き過ぎて、マユミのために無理してしまう、そんな人です。
ヒロの気持ち。
人付き合いが苦手なボクが、マユミと家族になれたこと。
それは、これまでの人生でいちばん不思議で、いちばん嬉しい出来事だった。
今まで、楽しいことなんて、ほとんどなかったから。
でも今は、ただ「家に帰る」というだけで、心がほっとする。
こんなにも安心できる場所ができるなんて、思ってもみなかった。
彼女に出会ったのは、ボクが身体を壊したあとだった。
好きで壊れたわけじゃない。
仕事で、無理をせざるを得なかった。気づいたときには、もう戻れなかった。
当時の会社は、無理をすることが当たり前という空気に包まれていて、それを疑う人なんて、誰もいなかった。
会社も、何もなかったような顔をしていた。当時の上司たちは、みんないなくなった。
でも、残ったボクには、何も変わらない日々が続いていた。
それでも、ここで働こうと決めた。自暴自棄で働いていた、あの頃。
──そんなとき、マユミが現れた。
マユミは、うちの会社ではちょっとした高嶺の花だった。明るくて、仕事もできて、誰よりもきれいで―― 女性社員の中でも、ひときわ光っていた存在だった。
きっと、ボクと同じように、マユミのことが気になっていた男性社員もいたと思う。
だからこそ、好きになってはいけないって、何度も思った。でも、止められなかった。
迷惑だってことも、無理があるってことも、ちゃんとわかってた。
それでも、好きになってしまった。
マユミが受け止めてくれたから、今のボクがいる。
もし、受け止めてくれなかったら…たぶん、素直にあきらめていたと思う。
だから、これはきっと、神様がくれたご褒美だ。ボクの力じゃない。
ただ、マユミには感謝しかないんだ。
本当に、ありがとう。

マユミ(真弓):
マユミは、風に揺れる木漏れ日のように、静かに誰かの心に寄り添える女の子。彼女の思いやりは、肌寒い午後に差し込む柔らかな陽だまりのように、さりげなく心を包み込む。
マユミの気持ち
……ヒロさんのこと、いつから気になってたんだろう。
最初は、ただの同じフロアの人だった。静かで、真面目で、どこか人と距離を取ってる感じ。でも、ある日ふと話したとき、分かってしまった。
この人の優しさは、誰かのためというより、自分が壊れないためのものなんだなって。
無理してるわけじゃないけど、どこか、無理してる。そういう空気って、不思議と伝わってくるもので。だからかな、最初から放っておけなかったのは。
仕事中のヒロさんって、本当に真っ直ぐで、ちょっと不器用なくらいで。でも、そんな姿を誰も特別視しないのが、なんだかもどかしかった。ちゃんと見てる人、いないんだなって思って。
「可哀想」って思ったわけじゃない。ただ、そっと隣にいたくなった。あたたかい午後の日差しみたいに、何も言わずに寄り添っていたくなっただけ。
ヒロさんの身体のこと、知ってる。でも、それで気持ちが変わったりなんてしなかった。むしろ、その弱さごと、全部大事にしたいって思った。
不思議だった。身体が弱い人って、普通は敬遠されることもあるのに、私はそうじゃなくて。気づいたらもう、好きになってた。言葉にできないまま、いつの間にか。
そばにいたいとか、笑っててほしいとか。そんな想いが、少しずつ私の中であたたかく膨らんでいった。
たぶん、好きって、そういうことなのかもしれない。

お母さん(愛子):
ふたりの日々は、小さなすれ違いと、静かな笑顔で編まれています。
その日常に、ふと現れるのは――マユミのお母さん。
言葉少なに娘を見つめるまなざしが、心に沁みる時間を運んできます。
──そして、次の朝。
玄関のドアが開いて、小さな足音がひとつ増えました。
「こんにちは」
マキ(真妃):
そう言って現れたのは、マユミの妹、マキ。
まだ少しだけ背伸びしたがりな、でも甘えたい年ごろの女の子。
今年から、大学生になる。
その響きが、マキを少しだけ大人に見せていた。




マキのまなざしが、また少し、ヒロとマユミの物語に揺らぎを与えていく――。
新しい季節が、そっと始まろうとしています。
「ヒロとマユミ」、新章へ。