マユミの写真と、ボクの記憶―日常写真日記―
マユミの写真が撮れる瞬間が訪れると、誰もいない時間を見計らって、ボクはデスクのパソコンの下に隠してあるRICOH GR Digitalをサッと取り出す。

RICOH GR Digitalは、電源オンがめちゃくちゃ早い。カメラを手に取ってすぐスイッチ押せば、構えたときにはもう液晶がついてて、すぐ撮れる。だから、シャッターチャンスを逃さない。カシャ、カシャ。静かに数枚だけ。
それが、いつの間にかボクの日課になっていた。
マユミと仲良くなった頃、思い切って「写真、撮ってもいい?」って聞いたんだ。
そしたら、即答じゃなかったけど、少しだけ間をおいてから「いいよ」って。
「一枚だけとか、そういうんじゃなくて。撮れるときは、たくさん撮ると思うけど、それでもいいの?」

「うん」
その一言が、信じられなかった。
ボクが撮って、ボクの個人のパソコンに保存しておくのわかってると思うけど、こんな綺麗な人が、嫌な顔ひとつせずに「いいよ」なんて言ってくれるなんて。
普通は嫌がる人がほとんどで撮らせてもらったことがない。
ましてや、写真を好きなだけ撮らせてって頼んだのなんて、人生で初めてだったし。
「いいよ!」と快く撮らせてくれる人に会ったのも、人生で初めてだよ。
どうして、マユミは許してくれたのかわからない。

ただ、マユミは最初からボクにはイヤな顔を全然しなかった。
ボクもあれだけ目も合わせられないくらい、顔が好みで、最初はガチガチに照れていたボクなのにどうしてだろうと今だに、思っている。
それからというもの、ボクはオフィスや出先、他のエリアに応援に行った時、廊下なんかでもチャンスがあれば撮った。

いつでもカメラのスイッチを入れられるよう、デスクの引き出しやスーツのポケットに忍ばせていた。まるで、いつでも戦えるように構えてる兵士みたいに。
前日に応援が決まっていれば、マユミに「来て」とお願いして、誰もいないそこで二人っきりで、モデルみたいにポーズとってもらったりして撮った。

接点らしい接点もない関係のふたりが、どうしてこんな秘密めいたことをやっていたのか。
誰もしらないのだけど、もし、第三者的な人からみたら、何やっているのと不思議がられてもおかしくない、2人のやり取りだ。
そのエリアは、他所の会社の人も来て作業したりするのだけど、他所の人がいても平気で撮っていた。マユミも平気で椅子に座ってポーズ取っていたっけな。

あの頃のボク、ちょっとおかしくなってたのかもしれない。ストーカーじゃんって笑い話してるけど本当に今そう思った。マユミもよく付き合ってくれたっけな。

でも、あの時のマユミを、撮らずにいられなかった。
今この瞬間のマユミが、もう二度と戻ってこない気がして。

初めて見た日の衝撃があまりに強くて――
そのインパクトのままの彼女を、どうしても手元に残しておきたかった。
まさか、あのマユミが、ずっとそばにいてくれるなんて思ってもいなかったし、あの頃のボクは、必死だった。
だから、写真のほとんどは、出会ったばかりの頃のものばかり。
でも、そういう写真ばかりじゃない。
ちゃんと、ふつうの日の、ふつうのマユミもいる。
ふと笑った瞬間とか、髪を直してるところとか、飲み物を選んでる背中とか。
そんな、なんでもない瞬間のマユミも、ボクにとってはちゃんと宝物で。
いつか、今のマユミも登場する。
たぶん、きっと、今よりもっと好きになってる頃のマユミが。
そんなわけで、マユミの写真集みたいな日記を、これから少しずつ綴っていこうと思う。
営業仕事の出先で上司と昼食のうどんをたべるという話
20年前の本物のマユミはGoogleドライブに保存。
最近、画像生成AIに向き合う時間が増えた。
日記に添える1枚の絵が、言葉の世界を広げてくれる気がするからだ。
プロンプトから直接描くと、物語に寄り添った絵になるけれど、現実の写真みたいな画像をつくろうとすると、なかなかうまくいかない。
違うものが出てきて何度もやり直し、気づけば1時間以上かかっていることもある。
下の写真はクラウドに保存している、あのマユミの写真。お見せできませんがこれを参考に顔の表情やポージングを作成してます。
あれをそのまま再現できたら…と願うけれど、プロンプトに写真の細部を落とし込むには、規制や著作権の壁がある。
結局は大雑把な表現しかできなくて、もどかしい。
でも、その1枚が描けたら、ボクの思い出を閉じ込めた、ちょっと自己満足なQuadroDiaryが完成するんだ。
たった1枚に込めたい気持ちはたくさんある。
だから今日も、疲れながらも楽しく、1枚の絵をつくっている。

