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エレベーターの距離感:職場の彼女との秘密のサインと、少しずつ近づく未来:過去日記外伝3話

朝のエレベーター。

目が合って、すぐ逸らした。
でも、同じタイミングで乗り込んだ時点で、すでにそれは“偶然”とは呼ばない。

「……おはよう」

「おはようございます、ヒロさん」

ImageFX彼女!過去日記エレベーター

お互い、わざとらしいくらい“よそ行き”の声で挨拶する。
フロアが違う同僚が一緒にいる朝は、いつだってこんな感じ。

けれど、ドアが閉まり、その人が降りると、空気がやわらかくなる。

ImageFX彼女!過去日記エレベーター

「さっき、あたしの目、見た?」

「いや……見てないけど」

「ウソ。ちょっとだけ、ニヤってしてた」

「してないって」

「ふーん……でも、ニヤってしてた気がする。……うん、してた。絶対、してた」

そう言って、マユミはボクの肩に小さくおでこを寄せた。
エレベーターがまた誰かの階で止まる直前に、ふっと離れて、何食わぬ顔で横を向く。

ImageFX彼女!過去日記エレベーター

その一瞬の距離感が、たまらなく愛しい。

 

午後、休憩スペースでマユミが他の先輩に軽口を叩かれていた。

「マユミさんさ、最近ヒロさんにやけに優しいんじゃない?」

「えー?そう見える?たまたまだよぉ、たまたま〜」

マユミは笑いながらそう答えていたけれど、ボクは知ってる。

彼女の“ふざけた顔”の奥に、いつもちゃんと理由があるってこと。

そのあとすぐ、ボクのデスクに来て、そっと言った。

「さっきの聞いてたでしょ?ごめんね。……でも、あたし、ちょっと照れてただけだから」

「うん。わかってる」

「……だって、ほんとに優しいと思ってるからさ、ヒロのこと」

その声は小さくて、でもまっすぐで、うそじゃなかった。

帰り道。駅に向かって、ふたりで歩く。
マユミが突然、立ち止まった。

「ヒロ。あたしさ……あんまり器用じゃないの」

「知ってる」

「ちょっと……もう少し、待っててくれる?」

「うん。待つよ。どれくらいでも、ボクはマユミさん好きなのは変わらないから」

マユミは何も言わずに笑った。
その笑顔は、ふざけたフリをしていた昼のそれとは、まったく違っていた。

ボクは、歩きながらポケットに手を突っ込んだ。
冷たい缶コーヒー。彼女に渡すつもりで買ってたやつ。

でも、今日はまだ渡さない。

もう少しだけ、こうして歩いていたいから。

少しずつ、でも確かに。

ふたりの距離が近づいているのを、今、はっきりと感じている。

 




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