妻のベッドを買う
部屋が少しずつ片付いてきた頃、マユミがふと思い立ったように言った。
「ねぇ、ヒロ。ベッド、買いに行こうよ」

ヒロはリビングのソファに寝転びながら、顔を上げる。
「ベッド?」

「そう。ダブルベッド。あたしの部屋に置きたいの」
マユミの部屋――そう呼んでいるけれど、実際には二人で使う予定の寝室だ。今はまだ、ヒロの古いシングルベッドがあるだけで、マユミはそこに寝ている。ヒロはというと、リビングのソファで寝る日々。
「でも、ヒロのベッドもそのまま残しておきたいのよ」
「え、なんで?」
「だって、ヒロが締め切りかなんかで仕事で遅くなった時とか、そのまま寝れるでしょ? それに、あたしのルールだから」
マユミはそう言って、少し得意げに笑った。
「ルール?」
「そう。普段は一緒に寝るのがルール。でも、古いベッドも残すの。別々に寝るのは仕事の時だけだからね。ずっと先でも、お爺さんとお婆さんになっても一緒だからね、わかった?」

その言葉に、ヒロは思わず笑ってしまった。
「わかったよ。じゃあ、次の休みに見に行こうか」
──休日、家具店に向かった二人。店内に並ぶさまざまなベッドを前にして、マユミはすぐにお気に入りを見つけた。
「これがいい!」
ヒロはその横で頷く。
「いいんじゃないかなぁ。部屋にも合いそうだし」
「でしょ? あたし、このベッドで一緒に寝たいもの!」
楽しく選んだベッドは、数日後に届くことになった。
ベッドが納品される日、ヒロは仕事で帰りが遅かった。玄関を開けると、リビングからマユミの声がする。
「ヒロ、見て見て!」
寝室に入ると、新しいベッドがすでに設置されていた。それだけじゃない。ふわふわの枕に、マユミが選んだ可愛らしい寝具が整えられていた。
「ちゃんと準備しておいたわよ。今日からここで一緒に寝るの!」
「すごいなぁ、完璧じゃん」
ヒロが驚きながら言うと、マユミは満足げに頷いた。
「もちろん! だって、これからずっと二人で寝るんだから」
そして、マユミがそっと箱からパジャマを取り出した。
「……はい、これ」

ヒロが受け取ると、それはシンプルなデザインのペアのナイトウェアだった。
「二人で着ようと思って買っておいたの。ヒロがちゃんと寝る準備をしないといけないと思って」
「そんなの気にしてなかったけど……嬉しいなぁ」
ヒロが照れながら手に取ると、マユミは楽しそうに笑った。
「今日はちゃんと寝るよ。ソファじゃなくて、ここでね!」
新しいベッドに並んで横になり、ヒロは思う。これから、毎晩ここで一緒に眠るのか――それがなんだか幸せで、心がじんわりと温かくなる。
「ねぇ、ヒロ……これからも、ずっとこうしていこうね」
「うん。ずっと一緒だよ」

そうして、新しい生活が始まった。
このベッドで、これから先もずっと二人で眠る。
ずっと一緒に、お爺さんとお婆さんになっても。
![[オフィスメディカル] レディース ハイゲージ (ゴム編み) レギュラー丈カーディガン 5L ピーチピンク [オフィスメディカル] レディース ハイゲージ (ゴム編み) レギュラー丈カーディガン 5L ピーチピンク](https://m.media-amazon.com/images/I/41gcY5T89IL._SL500_.jpg)
