ボクの念願だったマユミと朝食
朝の光がカーテン越しに差し込んで、部屋の隅に積まれたダンボールを柔らかく照らす。

まだ片付けが終わっていないけれど、昨日より少しだけ「ふたりの空間」になった気がした。
「おはよう、よく眠れた?」
ボクがキッチンでグラスにオレンジジュースを入れながら声をかけると、マユミはくしゃくしゃの髪のまま、ぼんやりと現れた。

「…うーん、まぁまぁね」
「まぁまぁって?」
「なんか、あたし、いつも朝こんなの低血圧だから、ぼ〜っとしてる」
マユミはそう言いながら、伸びをする。
「でもね、こうして朝起きたら、すぐ目の前にヒロがいるのって…ちょっと変な感じもするけど、ひとりで暮らしている時より元気出そう、やっぱり、独りって寂しかったよね」
彼女がそう言った瞬間、ボクはなんだか無性に嬉しくなった。
「朝ごはん、食べる?」
「食べるもの、あるの?」
「昨日買っておいたよ。ベーコンエッグ作ったしし、トースト焼いた、それと野菜はベビーリーフ、あと100%オレンジジュース」
マユミはボクの作った朝食をテーブルにつきながら、なんとなく落ち着かない様子でナイフとフォークを手にする。

「…なんか、こういうのって新鮮ね。いつもはひとりで適当に済ませてたのに」
「ボクもだよ。ひとりの朝より、こうしてふたりで食べるほうがずっといいな」
マユミはふっと微笑んで、トーストを一口かじる。

「…うん、美味しい。あなた、意外と料理できるのね?」
「まぁ、朝は簡単なものだけな」
「これからは、交代で作ることにしましょうか」
「いや、朝はボクが作るよ。マユミは晩ごはんやってくれるかな?」
「わかったわ。あたしが晩を作るから…頑張るね」
「マユミが残業の時とボクがテレワークの時はボクが作っておくよ」
「ヒロ、ありがとう」
その瞬間、この新しい暮らしが本当に始まった気がした。毎日の小さなことをひとつずつ積み重ねて、少しずつ「ふたりの時間」になっていく。それがなんだか、とても嬉しかった。