心に刻まれた彼女との出会い
もう15年以上前の話、最初に彼女を見たあの瞬間を、ボクは今でも鮮明に覚えている。胸の奥で何かが跳ねる感じ。言葉で説明するのは難しいけれど、きっとそれは「ときめき」ってやつなんだろう。

その頃のボクには、遠くから見つめるだけで十分だった。話しかけるなんて、そんなの夢のまた夢。それで満足だと思ってたんだ。
朝、誰よりも早く出社するのが日課だった。デスクに座って、今日のタスクを確認し、アプリを立ち上げ、頭をデザインモードに切り替える。静まり返ったオフィスで、集中するのが心地よかった。
他の社員が出社してきても、そんな世界にいるボクはちょっとした無敵モードに入っている感じだった。
静寂の中で揺れる想い
「おはようございま~す!」
挨拶が飛び交い始めた中、ふと、少し離れたデスクから椅子を引く音がした。あの方向、マユミだ。でも、振り返らない。何食わぬ顔でデザインの仕上げ作業に集中するふりをする。
だって、目が合ったら緊張してしまうから。

「そんなの普通にすればいいだろ」って、他の人は笑うかもしれない。けど、ボクにはそれが普通じゃない。あんなに近くにいるのに、どうしても気になってしまう。その目を見た瞬間、心臓が裏返りそうになる。だからこそ、余計に意識してしまう。
マユミ。近すぎるんだ。
手の届かない存在としての葛藤
営業をしていた頃、いろんな人と話をしてきた。綺麗な女性とも商談をしたことは何度もあった。でも、彼女は違うんだ。あの自然な笑顔、軽やかな雰囲気、近くにいるのに遠い存在。それが逆に、ボクを翻弄する。
この心のざわめき、一体なんなんだろう。
「ただの憧れ」と割り切れば楽なのに。でも、こんなにも強く惹かれる人に出会ったのは、生まれて初めてだ。彼女がいるだけで、世界が少し色づいて見える気がする。
…それでも、高嶺の花だ。それだけ。ボクには手が届かない。
ボクがこんなことを考えているなんて、知られるわけにはいかない。仕事がやりづらくなったら困るから。でも、それなのに、どうしてこんなに心が踊るんだろう?
これが恋なんて、そんな結論、まだ早い気がする。ただひとつ確かなのは、マユミはボクの人生に不意打ちで現れたキラキラと眩しい存在だってこと。それだけで十分じゃないか。
日常の中で抑えきれない奥手な思い
──のはずだった。
けれど、半年も経つ頃には、いつの間にかマユミのことばかり考えていた。気づけば目で追ってしまう。モニター越しに、つい姿を探してしまう。
社食で見かけると、どこに座るんだろうと気になってしまう。デスクで仕事に集中している横顔に、ふと見とれてしまう。

……普通、これってキモくないか? ストーカーかよって話だよ。
自分でそう思いながらも、どうしても止められなかった。奥手な自分が恨めしくなるくらいには。話しかけるなんて、ボクにとっては一大イベント。
だからこそ、彼女と初めて言葉を交わしたあの瞬間は、今でも忘れられない。