
夜の散歩もイイね。
コンビニのコーヒーを片手に持ちながら、夜の道を並んで歩く。家までは、あと少し。
隣を歩くマユミの横顔をちらりと見て、なんとなく口を開く。
「マユミ、ずっとそばにいてほしい」
唐突に出た静かな告白。
マユミはすぐには何も言わず、ただ歩く。遠くでクルマのエンジン音が響く。街灯がぼんやり光る。冷たい風が、二人の間をすり抜ける。
「これからどうなるかはわからない。でも、ボクはマユミのために精一杯生きるよ」
そのとき、マユミが足を止めた。
ゆっくりと、ボクの方を向く。
真っ直ぐな瞳。まるで、何かを確かめるように。
そして、ひとこと。
「うん」

何度目の告白?
マユミは、ふうっとため息とも笑いともつかない息を吐くと、まるで初めて聞いたみたいな顔で首を傾げた。
「ねえ、これって何度目?」
……やっぱり聞かれた。
「たぶん、七回目?」
「七回目かぁ」
彼女は、うんうんと考えるふりをして、視線を夜空に向ける。
「でもさ、七回目っていうより、もう無限に聞いてる気がする」
「無限……」
「うん。言われすぎて、なんかもう日常の音みたいになってきたかも。目覚ましのアラームとか、電車の発車ベルとか、ああいう感じ」
「そんなシステム音みたいに……」
ボクはちょっとしょんぼりする。でも、言わないと落ち着かないから、きっとまた言ってしまう。
好きだから。
しつこい告白も悪くない
「でもさ」と、マユミが不意に立ち止まった。
「なんかね、そういうの、悪くないよ?」

いたずらっぽい笑みを浮かべながら、軽くボクの腕を小突いてくる。
「毎回ちゃんと『好き』って言ってくれるのって、安心するし、楽しい」
夜の静けさに紛れて、彼女の言葉がやけに鮮明に聞こえた。
「しつこいって思うこともあるけど……まあ、それも含めて楽しいかな」
そっか。
マユミはそういう人だ。ボクのどんな言葉も、しつこいとか、重いとか、そんな風に片付けることなく、全部ちゃんと受け止めてくれる。
無限に続く愛の言葉
「じゃあ、これからも言い続けるよ」
「え、無限に?」
「無限に」
マユミは「やっぱりなー」という顔をしながら、でも少しだけ嬉しそうに笑った。
「じゃあ、せめてバリエーションつけてよ。『好き』だけじゃなくて、『愛してる』とか、『マユミがいるだけで世界が輝く』とか」
「うん、それなら任せて。毎回、新しいセリフを考えるよ」
「わぁ、楽しみ」
言葉は変わっても、気持ちは変わらない。何度でも言い続ける。
たとえ、それが何回目の告白でも。
次の告白はすぐそこに
「じゃあ、次の告白は……明日の朝で!」
「早っ!」
夜の風が二人の間を吹き抜け、笑い声だけが静かな街に溶けていった。
それからしばらく歩いて、ボクの家の前まで来る。
鍵を取り出しながら言う。でも、ボクはちょっと迷って、それから思い切って口を開いた。
「……そろそろ遅いし、……今夜、うちに泊まってく?」
マユミがぴたりと動きを止める。そして、こちらをじっと見つめる。
「え? それって、もしかして特別な誘い?」
「特別……かもしれない」
「ふふっ」
マユミは少し考えるふりをしてから、いたずらっぽく笑った。
「そういうの、嫌いじゃないよ?」
そう言って、くるっと振り向いた。
「じゃあ、おじゃましちゃおっかな」
そのまま、ボクの手を軽く引く。
今夜の告白は、もう七回目だけど。
たぶん、これからもずっと、無限に続いていくんだろうな。
コメント
- …いつまでも恋心を☆真っ直ぐ生きるね:マユミサンが強いし… Hiroさんも優しくて良いオトコなんだわ… 応援しています。
- ゆりりん:そばにいられるだけで幸せ なんて、言われてみたぃもんです。