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【彼女の表情】新しい始まり、微笑ましい手のぬくもり:過去日記:069

恋人になった次の日

あの日から、何かが変わった。

とはいえ、会社では何も変わらない。

マユミは相変わらず仕事ができて、ボクはそれを横目で見ながら自分の仕事をこなす。上司や同僚も普段どおり声をかけてくるし、PCの画面は今日も数字とメールで埋まっている。

でも、変わったんだ。

例えば、マユミと目が合うとき。

これまでは「たまたま視線がぶつかった」だけだったのに、今は違う。ほんの一瞬、彼女の目が長くボクを捉えている気がする。それだけで、心臓が勝手に反応する。

ただ、会社では今までどおりを貫くと決めていた。

二人の関係を知られるわけにはいかない。

だからこそ、仕事中もできるだけ意識しないようにしている。……つもりだった。

でも実際は、マユミがデスクから立ち上がれば、ついチラッと見てしまうし、彼女が歩けば、周りに気づかれぬよう目だけで追いかけてしまう。

過去日記視線の先

付き合う前からずっとそうだった。

好きすぎて、目で追わずにはいられなかった。

自分でも、おかしいのかな、と思う。

もし周りに知られたら怖いし、そもそも歯止めがなかったら……下手したらストーカーになってたんじゃないかとも思う。そう考えると、逆に怖い。

恋愛って、怖いよな。

過去日記視線の先

片想いが狂気に変わることだってある。

世の中には、叶わない恋に走りすぎて壊れてしまう人もいる。

——でも、ボクは幸運だった。

好きな人が、自分を好きになってくれた。

都合がいいけど、奇跡みたいなことだ。

***

「ねえ、ヒロ。」

昼休み、食事を終えてオフィスに戻る途中、マユミが唐突に言った。

過去日記マユミの視線

「ん?」

「さっきから、私のことずっと目で追ってるでしょ?」

「……えっ?」

「前から思ってたけど、私が動くたびにチラチラ見てるよね。」

「そ、そんなこと……」

「嘘。バレバレ。」

 

マユミはクスクスと笑う。

「いや、別に意識してるわけじゃ……」

「へぇ?」

完全に“分かってる顔”だったので、ボクは観念した。

「……すみません。」

「ふふっ。でも、なんか可愛いね、ヒロって。」

不意打ちだった。

会社の廊下で、そんなふうに言われるなんて思っていなかったから、ボクは一瞬、言葉を失う。

「……ちょっと、からかいすぎじゃない?」

「えー? だって面白いんだもん。」

嬉しそうに笑うマユミを見ながら、ボクはなんだか悔しいような、でも悪い気はしないような、不思議な気分になる。

そして、不意に彼女が少しだけ声を落として言った。

「でも、誰かに見られるかもしれないから、気をつけてね。」

その言い方がやけに優しくて、ボクは一瞬、ドキッとする。

「……うん。」

「秘密のままにするんだから、ね?」

そう言って、マユミはにこっと笑った。

誰かに見られているかもね。

というか、もうマユミには完全に見抜かれてる。

過去日記視線の先

***

仕事終わり、マユミが言った。

「ねえ、少し寄り道しない?」

そんなに遅くならなければいいか。ボクは頷く。

会社を出て、少し静かな道を歩く。信号待ちで並んで立つと、マユミがぽつりと呟いた。

「ねえ、ヒロ。」

その声に、心臓が跳ねる。

「何?」

「これから、どうしようか。」

真正面からの問いに、思わず言葉を詰まらせた。

「どうしようって…」

少し考えて、正直に言う。

「これからもずっと一緒にいたいし、ちゃんとお互いを大事にしていきたい。」

当たり前みたいに言ったのに、少しだけ勇気を出した言葉だった。

マユミはじっと耳を傾けて、小さく笑った。

「うん、それが一番大事だよね。」

夜風がふわりと吹いて、彼女の髪を揺らした。

***

過去日記2人

ふとした瞬間、マユミがボクの手を取った。

柔らかくて、でもしっかりと握っている。

「ごめん、なんだか自然に手をつなぎたくなっちゃって。」

その言葉がやけに可愛くて、ボクは思わず微笑む。

「全然気にしないよ。」

むしろ、嬉しい。

会社では秘密にしている関係も、こうして二人きりなら隠す必要はない。

ボクはそっと、彼女の手を握り返した。

それだけで十分だった。

二人は、そのまま静かな道を歩いていった。

 

 




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