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【彼女のお願い】彼女の嘘と写真の秘密——オフィスで始まる恋のささやき:過去日記058

昨日、先週マユミに頼まれていた梅の花の写真を撮りに行った。
見渡す限りの白い花が、風に揺れて波のように広がる。思ったよりずっと綺麗で、つい夢中になって何百枚もシャッターを切った。

良いものだけを現像して、それをCDに焼いて、今朝、マユミに渡した。

「えっ、昨日行ってくれたの? うわー、助かった! 土日、雨っぽいからどうしようかと思ってたのよ!」

 

過去日記CD

マユミは満面の笑みでCDを受け取る。  

その瞬間、周りの景色が色を失った気がした。梅の花より、朝日より、彼女の笑顔のほうがまぶしい。

 

「昨日ね、ヒロを探しに公園まで行ったんだ」

唐突にそんなことを言い出すものだから、一瞬、頭がついていかない。

「……え?」

「ヒロを探しに行ったの」

探しに? ボクを?

「いやいや、昨日ボク、公園にいたけど……誰とも会わなかったよ?」

「えー、そうなの?」

マユミはわざとらしく首をかしげる

「おかしいなぁ。確かに見たんだけどなぁ」

「……見間違いでしょ」

「ふふ、どうだろうね?」

その顔が、いたずらを仕掛ける直前の顔に見えて、ボクは妙な緊張感を覚える。

 

そのとき、オフィスの奥から声が飛んできた。

「マユミさーん、資料もらっていいですか?」

「あ、ちょっと待って!」

マユミは振り返り、デスクの上を探し、資料を渡す。

その隙に、ボクはデスクの上に置かれたCDをちらりと見た。

(……そんなに気に入ってくれたのかな)

なんとなく嬉しくなって、もう一度マユミのほうを見ると、ちょうど彼女もボクを見ていた。

 

「ちょっと奥に来て」、マユミのあとに付いて倉庫の方へ行った。

倉庫ではなくて、その横のスペースで人はほとんど来ない空間だ。

「ねぇ、覚えてる?」

「何を?」

「去年の忘年会の帰り。終電ギリギリで走った日」

「あぁ、あれね」

会社の忘年会。終電を逃しかけて、マユミと二人で全力疾走した。

 

乗り込んだ電車の中で、マユミは息を切らしながら笑って、「ねぇ、バレたら困るの、わかってるよね?」と言ったのだ。

今、その言葉を、マユミはもう一度口にする。

過去日記CD

「ねぇ、バレたら困るの、わかってるよね?」

あのときと同じトーンで、同じ笑みを浮かべながら。

ボクは思わず息をのむ。

「そ、それは……もちろん」

「うん、わかってるならいい」

 

ボクたちは事務所に戻り、席に着いた。

マユミはにっこりと笑い、CDを抱えると、再びデスクの上を整理し始めた。

ボクは、彼女の横顔をぼんやりと見つめる。

それは、ほんの一瞬の出来事だったけれど。

――ボクの心臓は、ずっとバクバク鳴っていた。

コメント
  • ゆりりん ゆりりん :こんばんわ!!きちんと感謝の気持ちも言えて、さりげなく気を使えるマユミサン!素敵&さすが。ほんとは、探しに来てたかも・・・ですょ。
  • ボク:ゆり、マユミは去年ホタル祭りに、夕方、会社で来るよって言って、本当に真っ暗な夜の8時過ぎに来てくれたり、みんなに気を使う人みたい。気を使うのはボクだけにしてなんて、会社だから言えないしね。来てないとは思うけどねぇ、でも、もしかすると・・



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