まだ、マユミと今みたいな関係になる前の話
過酷な日々
マユミが入社する前、ボクは会社に使い潰されていた。
労働時間は青天井、仕事量は天文学的数字。
徹夜、帰宅は2時過ぎ、出社は5時なんて時もあった。
結果、体を壊し、倒れた。精神的にもズタズタになった。
ただ、ボクの仕事の完成度は120点だった。けれど、自己管理を怠った結果、会社の評価は0点だった。
今でこそ「ブラック企業」という言葉があるが、当時はそんなものはなかった。
だから、会社は悪びれることなく言う。
「健康管理も仕事のうちだ」それはつまり、 お前が勝手に壊れただけだろ という意味だ。
心の隙間
それから2年ほど経ったある昼休み、ボクはデスクに突っ伏していた。
もう、燃料タンクは空っぽだった。
連日の業務過多、体調不良、終わりの見えないタスクの山。
「もう全部投げ出してしまいたい」
そんな考えが、ふっと頭をよぎる。

その時。
「◯◯さん、大丈夫?」
ふわりとした声が頭上から降ってきた。
顔を上げると、マユミが立っていた。
まだ、さん付けで呼ばれている頃で、いつものように少し首をかしげ、心配そうにボクを覗き込んでいる。
「まぁ……なんとか」
自分でも驚くほど力のない声が出た。マユミの眉が、かすかに寄る。
心遣い
——次の日、彼女は何も言わず、コンビニのペットボトルをストンとボクの前に置いた。
「ほら、これ飲んで元気出さないと。◯◯さん、頑張りすぎだよ」

喉の奥が熱くなった。
マユミの心遣いがカラカラに乾いた心に、じわっと染み込んでいく。
不思議な力
会社では、四つの部署を掛け持ちしていた。
普通なら、『そんなの無理!』と叫びたくなるような状況だった。
会社から業務命令だから仕方がない。
でも、不思議と「やれるかも」と思える。
何となくそう思えたから引き受けたが、その当時は、まだ、体力も余っていたし、断るのもいやだったからね。
いや、それだけじゃない。マユミがいたからかな。
彼女の存在が、ボクのエネルギーになっている。
誰もが尻込みするような難題でも、マユミが「ヒ
ロならいけると思うよ」と言うと、「よし、やってやるか!」とスイッチが入る。
彼女がいなかったら、ボクはきっと会社を飛ばされていた。
いや、飛ばされる前に、自分から辞めていたかもしれない。
断れない理由
マユミが好きなのか?
正直、自分でもよくわからない。
でも、彼女を見ていると不思議と元気が出る。気づけば、彼女の言葉を頼りにしている。
それに、マユミに『この仕事お願いね』と言われると、どれだけ忙しくても、なぜか『無理』とは言えない。
なぜか、断るとマユミと距離ができる気がする。
この仕事を投げ出したら、彼女もいなくなってしまうんじゃないか。
そんな気がするんだ。
だから、もう過去には戻らない。
あんな寂しい過去にはね。
だから、マユミから目をそらすわけにはいかない。
コメント
- じゅん:ひろくんに レスキューを出したくなる 人徳があるのさ 持ちつ持たれつだね
- ボク:じゅんさん、チワッス。 僕の人徳あるのか。 彼女の洞察力とやさしさかなって、ボクは思っていた。
- ぇみっコ:すごぃ 支ぇてくれる方がぃたら頑張れマスょね
- ボク:ぇみッコ、そうだよね。 この人の為に頑張らないとって思うもんね。 ミスできない。 迷惑かけるからね。
- ゆりりん:素敵な関係ですょね・・・ やっぱり憧れます そぅいぅの・・・
- ボク:ゆり、彼女からは毎日仕事しながら、癒されているし、ストレス貯まらないよ。 目の前にいるしね。