朝の静かなサプライズ
朝、出社してすぐ、ボクは少し浮ついた気持ちで鞄を開けた。
昨日買ったデザインの本をマユミに渡そうと思っていたのだ。彼女が喜ぶ顔を想像していたのに、ふとデスクの下に視線を落とすと、見慣れない袋が目に入った。
「ん?」
静かにかがみ込み、それをそっと拾い上げる。紙袋の中には、封がされた小さな箱。

——え、何これ?
不意に後ろからマユミが近づいてきた。
「あとでね」
彼女は僕の耳元でそう囁くと、何事もなかったかのように去っていった。いや、むしろ彼女は朝からずっとそこにいたみたいに自然に振る舞っている。
これは、バレンタインの…?
机の上ではなく、デスクの下に置く。そういう気遣いをするのがマユミらしい。堂々と渡さないのは、二人だけの秘密を守るため——そう考えたら、心臓が少しうるさくなった。
会社の顔と、彼女の顔
昼休み、社内ではバレンタインの話題でちょっとした盛り上がりを見せていた。
「マユミさん、チョコありがとうございます!」

若手の燕くんが、マユミにお礼を言っている。どうやら彼を含め、数人の同僚が小さなチョコをもらったらしい。
「ほんの気持ちだから」
マユミはあっさりと笑う。みんなに同じように接するのが、彼女のやさしさであり、強さでもある。
だけど、ボクは知っている。デスクの下の袋には、小さなチョコじゃなくて、明らかに「特別」が入っていることを。
燕くんがマユミに気があるのは、まあ見てればわかる。けど、彼がどれだけ彼女に笑いかけても、彼女が僕に見せるあの表情は、彼には向けられない。
彼女の「特別」は、ボクだけのものだ。
そう思うと、密かに得意な気分になった。
携帯に込められた思い
午後、休憩室でマユミと二人になったタイミングで、彼女がスマホを取り出した。
「私、携帯二台持ちになるのよ」
そう言って見せてきたのは、会社から支給された業務用の携帯と、もう一台のピンク色のスマホ。
「贅沢だね」
ボクが冗談っぽく言うと、マユミは少し笑った。
「でも、こっちは大事な方だから」
そう言って、彼女はピンクの携帯電話を軽く指でなぞる。

それは、ボクが一年前、こっそり付き添って一緒に選んだものだった。その時のことを思い出す。迷って、悩んで、最後に「これがいい」と決めたピンク色。
「それに、ヒロと……ね、フフフ」
マユミが意味ありげに笑いながら、ボクの目を見つめる。
その横で、燕くんが少しムッとした顔で背を向ける。彼にはこの会話の意味は分からない。でも、それがいい。
二人だけが知っている、特別なこと。携帯も、チョコも。
夜、開けられた箱
帰宅して、ようやく袋を開ける。
キラキラと輝くチョコレートが10個。宝石みたいだ。
「……すごいな」
思わずつぶやく。ひとつ手に取ると、甘くて濃厚な香りが広がる。ゆっくり口に運ぶと、舌の上でなめらかにとろけた。
携帯を開くと、マユミからのメッセージ。
「こっそり食べてね」
……ずるい。そういうの、男は弱いんだって。
でも、それがまた、たまらなく嬉しい。
この甘さも、このドキドキも、全部、彼女の仕掛けたものだ。
今日もまた、彼女の優しさと、密かな特別に気づいた一日だった。
コメント
- トモ:ヒロさん…相変わらず ラブラブです ワタシなんかまだ用意もしてません っつうか、バレンタイン過ぎますね… 父親が、義理チョコにしては、かなり高級な生チョコ貰ってきたら、母63は、本命ではないかとしつこく探りまくって、食べていた。 ふんっ許してやるからあんたも食べてイイよ…って、ワケわかんないし〜 イイ年して何ヤキモチ焼いてんだろう。 ヒロも、あまり 美味しいチョコの持参は怪しまれますわよ…
- ボク:トモさんも、ラブラブカップルでいいですよ。 ボクも昔ははヤキモチ妬いていたけど、最近は寂しい感じですよ。もらってきたチョコレートもパクついてます。
- 桃:よかったね (*′∀艸) 一時ゎどうなることかと… 結果オーライ♪ Σd(゚∀゚d)ォゥィェ!!!
- ボク:ももちゃん、心配かけたね。 このまま、マユミと順調に行けばいいけどね。
- りんか:こんばんは。 マユミさんとの仲も復活ですね 私もチョコもらいたいな〜
- ボク:りんか、山あり谷ありだけどね。
- ピャルヽ(´・ω・`):なんかイイ雰囲気伝わるね うらやましい あたし今年は… 旦那にあげなかった… つーかあげる気も雰囲気も無かったし。
- ボク:如月ちゃん、こんな雰囲気が、ずっと続けば良いけどね。 どうして、まだ凝りが残ってるの。