今日のマユミ
全然、違う。
今朝のマユミは、昨日とはまるで別人だった。
いや、正確に言えば「別人みたいなふりをしているマユミ」だ。
朝から妙に絡んでくるし、昼休みには隣の席に座るだけじゃ飽き足らず、何度もくだらない質問を投げかけてきた。

「最近ハマってる曲ある?」とか、「この店のランチ、どうだった?」とか。別に答えにくい質問じゃないのに、ボクはやけに身構えてしまう。
マユミのそんな態度に不自然さを感じたのは、昨日のボクのメールのせいだと思う。
あの「ごめんなさい」を送るべきかどうか、送信ボタンを押すまでに30分以上悩んだ。いや、30分どころか一日中、あの文面が頭をぐるぐる回っていた。
マユミは気にしていないように見えたけど、ボクには分かる。あれは、マユミがボクを傷つけた自覚がある時にやる「明るく取り繕うモード」だった。
そしてボクは、そのモードに弱い。
夕方、彼女がオフィスの片隅から歩いてきて、「これ、帰りに食べて」と袋を手渡してきた時、思わず心臓が跳ねた。

袋の中には、オレンジ色のダイダイが三つ。庭に植えてあるやつなのかな?
いや、三つの果実なんて大したことじゃないのに、ボクにはそれが「昨日の埋め合わせ」のように見えてしまう。
「ねえ、これで機嫌直してよ」と言われているような気がして仕方ない。
でも、あれはボクの勝手な妄想だ。たぶん、マユミはそんなこと考えていない。いつものように、「楽しかったね〜」とか「気にしてないよ〜」とか、あっけらかんと笑っているに違いない。
だって、マユミはいつもそういう人だ。
O型の女はこうなのか?
ボクの妹もそうだった。
ケンカの次の日には、まるで何事もなかったかのように話しかけてきて、こちらがまだ怒りを引きずっているのを知ってか知らずか、笑顔を見せてきた。
ボクが意地になって無視を続けていると、妹は「めんどくさ」と呟いて部屋を出ていく。いつだってそうだった。
マユミも妹に似ている。似すぎていて、ボクは時々どうしていいか分からなくなる。

「若い燕」とひそひそ話をしているのを見ても、彼女は全然悪びれた様子がない。それどころか「これ、普通だから」と言わんばかりの顔でボクを見る。
ボクは心の中で勝手に嫉妬し、勝手に傷ついて、勝手に落ち込む。そしてその度に、「マユミはそんなこと考えていない」と自分に言い聞かせる。
だが今日のマユミの様子は、少し違っていた。いつも以上に明るい。でも、ボクは分かる。あの明るさの奥に、ほんの少しの罪悪感が隠れていることを。
結局、ボクはまた勝手に思い込んでいるのかもしれない。
でも、思い込むしかない。この曖昧な関係で、ボクはずっと揺れ動いている。彼女に向けたこの気持ちは、一体どこへ向かうのだろうか。
帰り道、ダイダイを袋ごと抱えながらそんなことを考えていたら、ふと気づいた。そういえば、あの果物をどうやって食べるのか、聞くのを忘れていた。
明日、マユミに聞こう。今日のことは、明日になればまた別の形になっている気がするから。
コメント
- トモ:ワタシ、O型なんでよくわかったりして… 自分では、傷つけたり、ひっかきまわしたりしてるつもりないんだ… ただ…愛されることが 当たり前って思っちゃって 自分が良ければイイかな的になったり… それが続くと、彼から たまにガツンとやられちゃうんだけどね 初めて、叱ることしてくれる彼… それが、嬉しかったりして たまに、ヒロさんぶりってしてみたらなんて
- …いつまでも恋心を☆真っ直ぐ生きるね:燕のこと 聞いてスッキリしてみる?