午後半休のご褒美時間
― 久しぶりの美容室で、心も髪もリフレッシュ。
美容室のガラス扉を押し出たとき、ふわりと春の風が髪に触れた。マユミは午後半休をもらい、久しぶりにひとりでカットとカラーへ。気持ちも髪も少し軽やかになったような気がして、そのまま自宅マンションへ帰る足をふと止めた。
「ちょっと、寄り道しようかな」
目の前には、いつもの公園。マンションのすぐ下にあるこの場所は、彼女にとって少し特別な場所だった。




ベンチに腰かけると、木々の隙間からやわらかな光がこぼれ落ちてきた。新しいヘアスタイルに触れるそよ風。耳をすませば、遠くで子どもの笑い声。鳩が足元を横切り、ベンチの影に潜り込んでいく。
「忙しない日常の中で、こういう時間って、意外と貴重ね」
そう心の中でつぶやくと、なんとなく優しくなれた気がした。ヒロがいつも気遣ってくれるあの優しさに、ちゃんと応えられているかな、とふと思う。
けれど、今日は自分自身に少しだけご褒美。日差しと風、そして新しい自分の髪色。すべてが「大丈夫、今日もいい日だよ」と語りかけてくれているようだった。



やがて、木漏れ日の中で少し目を閉じて、深呼吸。もうすぐ、マキが学校から帰ってくる。ヒロも夕方には仕事から戻る。
「よし、帰ろう」
ベンチを後にするマユミの髪が、光を受けてふんわりと揺れた。