先日の東京新聞朝刊に「韓国トロット」についての記事が載っていました。

私はこの「トロット」について初めて知ったのですが、調べてみたら、もうずいぶん前から韓国の音楽シーンでは大きな流れになっていたようです。記事にもありますが、K‐popと同時並行的なかたちで、ここ何年ものあいだ人気が出ているんですね。
ふだん演歌はほとんど聞かない私ですが、この記事にも出てくる「釜山港へ帰れ」など往年の名曲は知っています。それで記事を参考に動画サイトで検索してみたら、「韓日歌王戦」のこちらの映像を見つけました。なるほど、これは聞いていてかなり「ぐっ」とくるものがあります。
あと、強面の「おあにいさん」が歌うこちらも、迫力があります。
「韓国トロット」については、その歴史を含め、こちらの記事に詳しく述べられていました。とても勉強になります。ありがとうございます。
かつての日本における音楽の消費のされ方は、まずはそれだけでじゅうぶんに大きな市場である日本国内向けの「邦楽」と、あとは「洋楽」という言葉からも想像できるように、主に欧米の方にばかり視点が向いていたという印象があります。
それが近年は「韓流」ないしK-popの流行でずいぶん風景が変わりました。さらにこの「韓国トロット」。最近の若い方々におけるレトロブーム、たとえば昭和の時代をかえって新鮮に感じる……みたいなのと軌を一にしているようで、この記事を読んでおもしろいなと思ったのでした。
でも、ひるがえって現在の日本で、同じ近隣の中国や台湾の音楽がこんな感じで人気になっているかというと、あんまりそういう印象はないですよね。でもかつては、“華流”とか“台風”と呼ばれたような(って、この言葉はあんまり定着しなかったけど)中国語系ポップス(C-pop)のブームが、この日本で巻き起こった時期があったのです。
またそれに相前後して、日本のポップスや韓国のポップスが香港や台湾の歌手に次々とカバーされたり、その逆も数は少ないながらあったり。なにかこう、東アジアの音楽シーン全体が活気づいていくような、そんな高揚感があったように記憶しています。私が台湾に住んでいたのは2000年代の前半頃でしたが、まだCD全盛の時代、お店に並ぶそうした楽曲のCDをずいぶん購入したものでした。
この東京新聞の記事を、留学生と日本語を読む練習の授業に使ってみたら、台湾の留学生から興味深い話を聞きました。それは台湾の音楽シーンが、2008年の台湾総統(大統領)選挙を境にずいぶん変わったという話です。
2008年の選挙では国民党の馬英九氏が民進党から政権を奪い返し、台湾の経済成長を促すため中国市場へ積極的に打って出るという政策を取り始めました。それにともなって台湾の歌手や芸能人が一挙に「中国進出」を模索するようになったというんですね。
しかしながら、中国市場で活躍しようとすれば、おのずからかの地の政府の意向にも沿わざるを得なくなります。最近も、五月天(メイデイ)や蔡依林(ジョリーン・ツァイ)など台湾の人気アーティストが「統一支持」発言、などというてニュースがネット上で騒がれていました。
そして台湾の音楽シーンは、特に中国大陸との関係にどちらかといえば冷ややかな視線を向けている人たちの間では、「あちら側」に行ってしまったアーティストにも冷ややかな視線を向けるようになり、その一方で台湾市場にとどまり続けようとするインディーズ的な歌手やバンドが人気になるという現象も起きている、とこの留学生は分析していました。
つまり、台湾の音楽シーンは、大陸に進出して商業的な大成功を目指すアーティストと、そうではない路線に踏みとどまろうとするアーティストに二分されてきた、さらには音楽ファンの方も同様の二分化・二極化がみられる、というのです。なるほど、ここでもまた「分断」が起こっているということですか。
私自身は華人(チャイニーズ)の人々の政治に対する考えに何らかの意見を持つものではありませんし、またその資格もありません。ただ留学生の話を聞いていて、ああなるほど、かつての台湾の音楽シーンは、ことに私が住んでいた頃のそれは、もうずいぶん様変わりしてしまったんだなあ……と、いまさらながらにある種の感慨にとらわれてしまったのでした。
追記
このテーマでネットを検索していたら、五年ほど前のこちらの記事を見つけました。もうずいぶん前から二極化、ないしは分断が現れていたんですね。
ちなみに私、台湾のインディーズ・バンドではこちらの旺福(ワンフー)が好きです。有名なので、もはやインディーズなんて言えないかもしれませんけど。