若いころに、ハングルの読み方を学んだことがあります。キム・ミンギの歌の歌詞を知りたかったからです。でも中途半端に学んだだけ。なので今回、サインシステムに英語・中国語・日本語が併記されている空港や地下鉄などはまだしも、ソウルの街に一歩出てみたら「わー、何もわからないー」という異国感に一気に包まれました。この感覚、すごく新鮮です。
いや、ハングルそのものは母音と子音の組み合わせがとてもシステマチックにできているので、ゆっくりゆっくり読めば、昔の記憶を頼りに音はなんとか取ることができます。でも近似の音で読めたところで意味は分かりません。やっぱり新鮮です。Google翻訳みたいなアプリでカメラを向ければ日本語にしてくれますが、かなり変換効率は悪いみたい。
書店に行ったら日本文学のコーナーがあって、村上春樹氏の作品がかなりの幅を取って並べられていました。「무라카미 하루키」む・ら・か・み・は・る・き。韓国語と日本語は互恵主義(?)といいますか、名前はお互いの言語の発音を採用するので、中国語の「Cūnshàng Chūnshù」ツンシャン・チュンシューみたいなことにはならず、音だけ分かる私にも読めました(もっとも中国語なら漢字表記だから、まず誰でも読めるでしょうけど)。

そのあと、東大門デザインプラザ近くの路地にあるお店で、「해장국(ヘジャングッ)」を食べました。肉がたっぷりついた牛骨が煮込まれていて、高菜みたいなくたくたの野菜がとてもおいしかったです。私は夕飯に食べましたが、韓国人の同僚にLINEしたら、「二日酔いの朝に食べたらずっと染みるのに」と返されました。そうなんだ……でも、もとより私はもう、二日酔いするほどはお酒を飲めない歳になってしまっていてですね。

ヘジャングッはその見た目とはまったく違って、すごくあっさり(しかもうれしいことに、ごく薄味)していました。二日酔いの朝に食べるくらいですもんね。大盛りに見えますけど、器の半分ほどは、でっかい骨(後ろの大きなコップ様の器に入れるみたい)。でも私はもうこれでお腹いっぱいでした。そう、歳を取ると食べ歩きという旅の一番の楽しみすらままならなくなります。旅はできるだけ若いうちにしておくに如くはないです。それはもう、借金をしてでも。